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【異世界ミント無双】〜ミントテロで魔王倒します〜  作者: ぴとん
第五章 ウィッチ・ド・サン編
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第66話 ゴーレム大戦争

「大地礼賛し恵みを返還する…」


 ソドムは一枚、また一枚と魔本のページをめくっていく。

 

 呪文が終わりに近づくにつれて、虚無感が襲ってきた。


 自分勝手な意志決定で、この町の歴史の生き証人であるBLTを、俗物的な金塊に変えること。


 それは果たして、釣り合いが取れることなのだろうか。


 一時の利益になっても、いつかは金塊も底をつく。


 生命の樹を、物言わぬ鉱物へと変えるのは、自然への冒涜であるというのに、そこまでの行いをしたとしても、いつか栄華は終わりを告げる。


 自分がいまからすることは、長い目で見ればただの愚行、無駄なことなのではないか。


 こんなことをするより、これまで通り愚かな王に従い、ただの観光の目玉として守り、そして思い出の象徴として、BLTを見上げているくらいが、この国の人間には似合いなのではないか。


「その生命力を糧に、黄金へと姿を変えろ……」


 ソドムの詠唱は、それでも止まらなかった。




「どうですかぁ?これが私の最高傑作ゴーレム!その名も『砂城の(サンド・クラブ・ハウス)!!!」


 高らかに宣言するベコ。その背後には、国中のゴーレムを引き寄せて融合してできた、巨大な人型ゴーレムが聳え立っていた。


 頭部ははるか天上にあるため、見上げようとすると、太陽が眩しい。全長は計り知れないが100メートルもあるのかもしれなかった。


 あまりの存在感に、ゴーレムの足元に立つユウジと鈴音は、ただ圧倒されていた。


「いやあ、なんか、あまりにでかいもの見ると……なんも言えないね」


「うん、ここまで来ると命の危険とか感じないね」


 彼らの視界に入るのは、せいぜい、足から股間部分まで。ゴーレムというより、茶色い土の塔が聳え立ってるようだった。


 対照的に、テンションの高いベコ。


 大人しそうな第一印象からうって変わって、おそらくこの国の歴史上最大規模のゴーレムを作り出した偉業に、酔いしれていた。


「ふっふっふ!これで金賞は私のものですぅ!」


 BLTに匹敵するほどのゴーレムは、いまや国のどこにいたとて、目に入るほどの巨大さを誇っていた。


 爪を研いでいたランパも、剣をぎらつかせていたスバルも、町の騒ぎに気が付き、顔を上げる。


「なんだあれ…あれもゴーレムなのか?」


「誰が作ったんでしょう……イベント?」


 いまや街では、ゴーレム破壊テロよりも、突如現れた超巨大ゴーレムの正体について、皆が話していた。


 

 ユウジは、腕を組んで唸った。


「あの大きさになっちゃうと、ミントで瓦解させちゃうと、壊れる時に上から土の塊降ってきて、街に被害出ちゃうな」


「私が凍らせても、壊れたら上から氷の塊降ってきちゃうね……こんなちっちゃいのだったらいいのに」


 鈴音は手のひらに息を吹く。すると小さな雪だるまができた。


 雪だるまは、かわいらしく手のひらでくるくると回った。


「雪女ってそういうのもできるんだ……ん、そうだ」

 

 ユウジは鈴音に耳打ちする。鈴音は、しばらく考えたのち、頷いた。


「時間を貰えばできるかも」


「やった、よし、おーい!ベコさーん!実はこっちにもっともっとすごいゴーレムがあるんですけど!」


 ベコは、ピクんと眉を動かし、反応する。


「へぇー私の砂城の(サンド・クラブ・ハウス)よりすごいんですかぁ?」


「はい!お時間いただければ、ベコさんのゴーレムをも破壊できます!」


「……ふうん」


 ベコは、あからさまな挑発に口元を歪ませた。彼女はプライドの高い芸術家気質だった。同じ土俵で勝負されるのは、我慢ならなかった。


「いいですよぉ。見せてください」


「ありがとうございます」


 30分ほどもらい、ユウジは大量にミントを作り出した。鈴音はミントが生み出されるたびにそれを凍らせ、整形する。


 そしてできあがったのが、ミントを芯に作った、鈴音の氷製ゴーレムだった。


 全長は50メートルほどの人型。ベコの砂城の(サンド・クラブ・ハウス)の半分以下だったが、充分に巨大な氷の巨人ができあがった。


 ユウジは胸をはる。


「どうです!ベコさん!これが俺たちの合作!えーと…『砂に勝つ(サンド・カツ)です!」


「えー命名権欲しかったな」


 ぷぅ、とほおを膨らます鈴音。


 ベコは、ワナワナと肩を震わせていた。


「馬鹿にしてるのぉ……?この日差しの強い国で、氷で作ったゴーレムの紛い物なんて……相性最悪じゃないのぉ」


 ベコの指摘はもっともだった。


 氷のゴーレムは、大きく造るほど、太陽に近づき、熱で溶けやすくなる。これ以上の大きさを保つのは難しかった。芯にミントを使い、補強したのも、その脆弱性を物語っている。


「……大丈夫かな」


 鈴音が不安そうにしてると、ユウジは自信満々に頷いた。


「大丈夫。いま破壊できなくも、僕らのゴーレムのほうが優れてるって素直にベコさんに認めさせれば、話を聞いてもらえるよ」


「できるかな」


「任せて。ベコさん!どっちのゴーレムが優れてるか証明するために、戦わせませんか!?」


「ふーん?いいわよぉ。どうせ相手にならないしぃ」


 ユウジは、「砂に勝つ(サンド・カツ)」に命令する。


「いけ!土人形をぶっつぶせ!」


 氷の巨人は、砂の巨人に向かって体当たりをした。砂の巨人は微動だにしなかったが、その振動は地面を揺らす。


 それを見て、ベコは素朴な疑問を口にする。


「……あなたたちのゴーレムってぇ。どうして動くのぉ?魔石使ってないでしょぉ」


「ああそれは、氷の中でミントを繁殖させてるんですよ。ミントが増えたら、そこを鈴音さんに凍らせてもらい、まるで動いてるかのようにしてるんです」


 氷の巨人の操作は、ユウジのミントの繁殖力と、鈴音の細かな冷気操作ができる技だった。


 氷の巨人は、果敢に体当たりするが、砂の巨人は全く動かない。たまに表面の砂が削れるくらいだった。


 巨人ふたりの大戦争が展開され、街の人々は興味を持ちつつも、その巻き添えを喰らうことを恐れて、いまはみんな建物の中に避難していた。


 観光地とは思えないほどに、街の道はガラガラだった。


 そこへ、ユウジたちの元に、そもそもの元凶の爆破テロリスト(未遂)のふたり組の男がやってきた。


「おい、あんたらこりゃなんだ!なんでこんなことになってる!」


「いや、成り行きで」


「そんな成り行きがあるか!」


「でも見てくださいよ、ほら。この街いまガラガラですよ。あなたたちの願いも叶ったじゃないですか」


「………っそれはっ……そう、だが…」


 男たちは、顔を見合わせた。自分達はこの状況を望んでいたのだろうか、と。




 一方そのころ、スバルとランパは合流し、共に行動していた。


 騒ぎの元凶はどうせユウジたちだろうと当たりをつけていたのだ。


「なぁ、ランパ。お前もユウジにやられたんだろ」


「ええ、なにか事情はあるのかもしれませんが気が治りません」


「じゃあ、一発……やるか!」


「スバルさん……乗りましたよ」


 スバルとランパは、2人で高台へ行った。ここでは、ゴーレム祭りのフィナーレのために、花火を打ち上げる装置が置いてあった。


 スバルは装置を調べて、仕組みを理解する。


「どうです?使えそうですか?」


「おうよ、職人たち花火玉ここに置いたまま、ゴーレム大戦争見て避難したみたいだ。パクっちまおうぜ」


 ランパは、花火の打ち上げ台の方向を微調整した。スバルは、筒のなかに花火玉を詰め込む。


 その射出口は、ゴーレム大戦争の方向に向かっている。


「これで、あいつらの楽しそうなゴーレム遊びをめちゃくちゃにするって寸法よ」


「私たちも楽しみを壊されましたからね、やっちゃいましょうよ」


 花火玉を詰めて、遠くの目標に当てるために使う。まるで砲台だった。


 スバルはファイアボールを使い、花火の導火線に点火する。


 ジジジジジ……。


「きっしっしっし」「ふっふっふっふ」


 スバルとランパは楽しそうに笑っていた。



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