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【異世界ミント無双】〜ミントテロで魔王倒します〜  作者: ぴとん
第五章 ウィッチ・ド・サン編
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第64話 ゴーレム品評会!

 ユウジが通算786体目、鈴音が1023体目のゴーレムを破壊したころ、ひと息つこうと、2人はクレープ屋に立ち寄っていた。


「んークリームたっぷりでおいしい」


「鈴音さん甘いのも好きなんだ」


「うん!お酒以外もイケるよ!」


 町中は、次々とゴーレムが壊される噂に持ちっきりだった。前を通った小さな女の子は、自分のゴーレムを用心深く握りしめていた。

 

「不謹慎なことを言うようだけど、いまちょっと楽しいんだ。こんなに暴れまわれたのはひさしぶりで」


 鈴音はいたずらっ子に、ペロリと舌を出した。


「鈴音さんは魔王さんのとこにいた頃はヤンチャだったの?」


「うん、恥ずかしながら……」


 しばらく逡巡したのち、鈴音は昔のことを話す。


「魔王様の元で私は少し派手に、好き勝手してた。喧嘩はするし、お酒飲んで騒ぐし、あとは髪も染めてたし」


「明るい髪色も似合いそうだね」


「えへへ。せっかくスカウトされたのに、魔王軍の問題児として厄介者扱いされてて……でも私、強かったから」


 パクリとクレープ生地をかぶりつく。甘さが口に広がる。


「いつの間にか魔王様の側近まで上り詰めちゃったんだ」


「すごかったんですね」


「……ごめんね、ユウジくん。爪弾きものの私を魔王様は信頼してくれたから、いざ魔王様の元に辿り着いたら、私はユウジくんの味方にならないかも知れない。もし私がユウジくんたちと敵対したら、どうする?」


 うつむく鈴音。食べかけのクレープを持つ手が、僅かに震えている。

 

 しかしユウジは、間髪入れずに答えた。


「そんなの決まってるよ、鈴音さん側に寝返るよ僕」


 ユウジはモグモグと、クレープを食べ進めて、指についたクリームをなめとった。


「え、ね、寝返るって、そんな」


「僕は別に理想なんて持ってないし、クラーケンと戦った時は仲間が傷つけられたからだし、ヒイロさんと敵対した時はスバルさんが持ってきた面倒ごとだけど、エルフの肩を持った方が良さそうな流れだなって感じだったからだけだし。えーと、つまりなんていうか」


 ユウジは、照れ隠しに立ち上がった。


「僕はずっと鈴音さんの味方だよ」


「………ほんと、もう、なんか。はぁ……はむっ」


 鈴音は、急いで口にクレープを詰め込んだ。頬袋がハムスターのように膨らむ。


「さ、ラストスパート行こうか」


「……もぐもぐ。ごくん。ええ」


 ユウジと鈴音は、最後のゴーレム大量設置エリア「ゴーレム品評会会場」に足を踏み入れた。



 ゴーレム品評会では、ゴーレム作りに自信のある魔法使いたちが集い、その作品の出来の良さを審査してもらう。


 出品されたゴーレムは、芸術的センスを感じる造形をしたもの、精巧な動作をするものなど様々だった。


 ゴーレム作品らは、崩れかけてボロボロな古城の下にある広場に展示されていた。観光客や審査員たちが、作品を眺めながら歩いている。


「たくさんあるから、僕は左から壊していくよ」


「うんわかった!じゃあ私は右から……」


 ユウジと鈴音は手分けして端からゴーレムを破壊しようと話し合っていた。


 その時、ぬっと大きな影がふたりを包んだ。


「こんにちはぁ。昨日ぶりですねぇ」


「あっベコさんこんにちは」


 見上げると、大きな背丈のベコが、頭の麦わら帽子を抑えながら笑っていた。


「品評会きてくれたんですねぇ。実はわたしも出品してるんですよぉ」


 ベコは古城のほうを指差す。しかし、その先にゴーレムは見当たらなかった。


「えっと……どれですか?」


 鈴音は目を凝らすが、わからない。ベコはうふふと笑った。


「いい反応してくれてありがとうございますぅ」


「は、はぁ……」


 鈴音はちらりとユウジを見た。ここで足止めを食らってしまうのは避けたい。だが、知り合ったばかりのひとの自信満々のゴーレムを破壊するのは心が痛むことだった。


 ユウジはアイコンタクトをとる。鈴音がベコと話している間に、会場中のゴーレムにミントを飛ばすことにしたのだ。


 ミントを飛ばす時に音は出ない。だから誰にも気づかれないまま、実行できる。


「もともとゴーレム祭りはぁ、この品評会のみのこじんまりした祭りだったんですよぉ。私は毎回参加してて前回は金賞を逃したのでぇ。今年こそはと2年かけて大作を作ったんですぅ」


「へ、へえすごいですね」


 鈴音は胸が痛んだ。2年間の努力の結晶を、テロ阻止のために壊さなければいけないとは。手を下してくれるユウジに感謝した。


「よしっと」

 

 ユウジは鈴音のほうを見て頷く。準備は整ったようだった。


「金賞絶対取れますよ!では私たちはこれで……」


 ぶわあああ!


 鈴音がベコに背を向けた瞬間、あたりに飾られていた数十体に及ぶゴーレムに、一斉にミントが茂った。


 緑色の服に包まれたゴーレムは、ボトボトとその形を崩して倒れていく。


「………え?」


 ベコさんはキョトンとして、あたりを見渡した。


 突然壊れた自信作のゴーレムを前に、悲鳴をあげる出品者たち。


 観光客たちもどよめいていた。


「まさかここのゴーレムも壊されたのか!」「いったい何者の仕業なんだ!」

「俺知ってるぜ!若い着物を着た女の子とヒョロっちい男のコンビが犯人らしい!」

「ああん!なんかそいつらさっき見たぞ!」


 周囲の反応に、ユウジと鈴音は駆け出した。あれだけ暴れていたのだ。噂が回っているのも仕方がない。


 だが、逃げようとする2人の肩を、大きな手のひらで掴んで、足を止めさせた者がいた。


「どこへ行くんですかぁ?」


 ベコはニコニコと笑っていた。しかしその目の奥はまったく笑っていなかった。


「ち、ちからつよっ……」


「ひいいい!」


 ユウジと鈴音は、ベコに恐怖を抱いた。頭上から容赦のない詰問が降ってくる。


「あなたたちがやったんですかぁ?ダメですよぉぉ?みんなが命をかけて作ったものを壊すなんてぇぇぇ」


「すっすみませ…」


 ベコは大きく息を吸い込んで叫んだ。


「私のゴーレムぅ!この2人を反省させてあげてくださぁぁぁい」


 ゴゴゴゴゴ。地面が揺れる。


 地ならしと共に、ベコのゴーレムが立ち上がった。


 ユウジは冷や汗を垂らす。


「夢……?」

 

 なんと、広場に面していた古城が、ガタガタと形を変えて人型になり、20メートルを超える巨大なゴーレムとなったのだった。


 ベコは目を光らせて言った。


「踏み潰しちゃってぇ」


 古城巨人ゴーレムが足を大きく持ち上げる。ユウジと鈴音は肩を掴まれていて逃げられない。


「うわあああ!」


 ふたりは絶体絶命のピンチに揃って悲鳴をあげた。

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