第62話 ゴーレム宝探しゲーム!
ウィッチ・ド・サンは、観光都市として有名になる前は、魔法に関する研究が盛んだった。
大学や研究施設があり、そこには多くの学問を志す者たちが集った。
街の顔では無くなったものの、いまでも魔法研究に励む者はいる。
かつて大学を主席で卒業し、現在は魔法局に務めている女、ソドムはそのひとりだった。
「鱗の隙間に、細かい傷がたくさんある。風のような見えない攻撃を受けたか、あるいは武器が消えてなくなるものだったか」
先日、飼育室を逃げ出して街で暴れたすえ、急に気絶した蛇のからだを、彼女は調べていた。
蛇の飼育に携わっていた局員から調査の協力をお願いされたのである。
「今日はありがとうございます。ソドムさんのこと正式にうちのチームにスカウトしたいですよ」
ソドムは首を振った。
「申し訳ないですけど、あなたたちの研究チームのキメラ開発には興味がありません」
「そうですか……でも気が変わったらいつでも歓迎ですので」
局員に挨拶をして、ソドムは街へ出かけた。今日は早上がりだった。
「相変わらずこの国は暑い」
ソドムは目を細める。祭りの屋台が出ていたので、飲み物を購入する。
「お姉さん美人だから安くしておくよ!」
気のいい店主に感謝して、ソドムは代金を払う。
「……ふぅ」
喉の渇きがおさまり、一息ついて賑やかな街並みに目をくれる。
「賑やかになったものね。人が増えると経済が回る。とてもいいことだわ」
ソドムは、フードを深く被ると、街に姿をくらました。
彼女の専門は、錬金術。
ソドムはこの街を丸ごと使った大きな実験を企んでいた。
「はーいそれでは良い子のみんな、準備はできたかなー?」
宝探しゲームの進行役のお姉さんが、参加者を盛り上げる。
「「「はーーーい!」」」
ランパは周りの子供達に混じり、元気いっぱいに手を上げた。
宝探しのルールは簡単だった。
迷路のようになった薔薇園に、100体のゴーレムが潜んでいる。
そのゴーレムの体内に、宝石が埋め込まれているので、それを一番多く回収した参加者が優勝というものである。
ランパはウキウキとゲームの開始を待っていた。
「絶対優勝します!」
優勝者には賞金と、副賞として猫形のゴーレムペットが進呈される。
ランパはその猫型ゴーレムに一目惚れしたので、なんとしてでも優勝しようとしていたのだ。
「ではいちについてー!」
参加者はみな子供たちばかりだった。
獣人のランパの機動力、索敵能力を持ってすれば、優勝など容易い。
ランパは意気揚々と、スタートラインについた。
「すたーと!」
お姉さんの声と同時に、ランパは薔薇園に足を踏み入れようとした。
が、その瞬間。
どおおおおーーーーん!!!
「!?」
目の前に巨大な氷の塊が降ってきた。その大きさはもはや氷山である。
言葉を失うゲームの参加者たち。
薔薇園の全敷地は、その氷の塊により、ペシャンコになっていた。
「あ、あっまさか……鈴音さん……?」
氷の使い手に心当たりのあるランパは、ザワザワとする参加者たちの中、ひと足先に我に帰る。
なぜこんなことをしたのか、辺りをキョロキョロと見渡すと、猫型ゴーレムの置かれた賞品台のところに、ユウジと鈴音がいた。
ユウジは賞品台にあった猫形ゴーレムの首根っこを持ち上げていた。
「鈴音さん!ユウジさん!」
ランパが声をかけると、それに気づいたユウジが、猫型ゴーレムを掴んだまま、手を振る。猫型は、パタパタと四つ足を動かしていた。
「ランパー!ごめんねー!ちょっと事情があって!」
「ゲーム始まる前でしたし、薔薇園内に人はいませんでしたよね!」
「あ、はい!怪我人とかは出てないと思いますけど……あのユウジさん!その猫ちゃんどうするつもりですか!?」
ランパの目はユウジの手元に釘付けであった。猫型はユウジの手から脱出しようと蠢いている。
「ああこれ?壊すんだよ」
「は?」
バチーーーん!!!
ユウジは、猫型ゴーレムを思いっきり地面に叩きつけて粉々にした。
そして、コロリと体内から出てきた魔石を、ユウジは踏みつけてこれも壊す。
「…………は?」
ランパは怒りや悲しみやあらゆる感情が入り混じった表情を浮かべて、ワナワナと震えた。
「あれ?どうしたのランパ」
無神経に尋ねてくるユウジに、ランパは鋭い爪を向ける。
「生きてこの街から出られると思わないでください!」
「ええ!?」
殺気を放ったランパが、人混みをかき分けながら、ユウジたちに向かってくる。
「殺す!!!」
「あっこれほんとに殺されるやつだ」
命の危機を感じたユウジは鈴音を連れて、ランパに追いつかれる前に、急いでその場から立ち去った。




