第59話 マッサージゴーレム
エルフ達からもらった宝が入っているところに、飴を詰め込んだので、袋はもうパンパンだった。
スバルは、苦悶の表情を浮かべながら重い荷物を運んでいた。
ランパは涼しい顔で飴をぺろぺろと舐めながら言った。
「戦利品たくさんでよかったですね」
「うぐ……重い。ユウジたちと早く合流して宿行こうぜ」
「広場で待ち合わせって言いましたが、そういえば具体的な時間を決めてませんでしたね。あそこの広場に面したカフェで待ってましょうか」
カフェのテラス席に座ったスバルは、どさっと袋を下ろした。
「肩が凝ったあ。マッサージしてもらいたい」
「紅茶セット二つで。お揉みしましょうか?」
「おう夜頼んでもいいか?……んっ!?なんだあれ!」
目を見開くスバル。ランパが振り向くと、広場の噴水の前に、人型のゴーレムが首に看板を下げて立っていた。
「ああ、ゴーレム祭りですもんね、あの看板何て書いているんですか」
ランパは視力はいいが、文字が読めなかった。
「マッサージ15分銅貨10枚だってよ!」
スバルは席を立ち、ゴーレムの元へ行く。泥の顔の口元に銅貨を10枚入れると、ゴーレムは動き出した。
「こっちこっち。席に座りながらやってくれ」
スバルはカフェの席にゴーレムを誘導する。そしてスバルが席に座った時、ゴーレムは彼女の肩を揉み始める。
土でできた手は程よく力強い握力で、肩を揉みほぐす。あまりの気持ち良さに、スバルは思わず声を上げた。
「ンおっ♡くっああっ♡」
「人前であえぎ声出さないでください」
ランパは辺りをキョロキョロと見渡す。マッサージゴーレム以外も、広場にはたくさんのゴーレムがいた。
ジャグラーをしているゴーレム、風船を売っているゴーレム。道を神輿を担いで練り歩いているゴーレム。
「ゴーレム祭りって面白いですね。あれが全部魔法で動いているなんて不思議です」
「ああそうだなっ♡魔法ってのは♡色んなことができるっ♡」
「……そういえばスバルさんも初級火魔法使えましたよね」
スバルは、火球を飛ばす魔法、ファイアボールを愛用しており、焚き火をするときによく使っている。
「ああっ♡このゴーレムと比べると簡単なのだけどなっ♡強い魔法はっ♡覚えるのが大変だからなっ♡」
「覚えるのがですか?魔法ってよくわかんないです」
「ああ♡初級魔法は魔力を集中させて呪文を頭の中で唱えることで♡簡単に発動できる♡でもっ♡中級以上の魔法は♡長ったらしい魔法を♡頭の中で唱えなきゃいけないっ♡覚えるのが♡むずいんだ♡」
「魔法は学問って聞いたことありますけど、そういうことですか……」
「もちろん発動に必要な一定以上の魔力量も必要だし♡魔法専門でやっていくのも♡大変なんだ♡」
「このゴーレムも、立派な魔術師さんが作ったんですかね」
「いやっ♡そうとも限らない♡実は魔法の発動にも裏技があって♡魔力がこもった魔石に♡術式を事前にこめておくと♡誰でもこういうゴーレムを作れたりする♡」
「えっそうなんですか」
「ああっ♡例えばランパも♡その辺で売ってる魔石にファイアボールの術式書き込めば♡すぐにでも使えるぞ♡」
「へええ。詳しいですねさすが龍殺しのA級冒険者」
「よせやい♡」
スバルは口から大量にヨダレを出していた。快感に支配されている様子に、ランパはゴーレムのテクを恐ろしくも感じた。
「A級なんて大したもんじゃない♡一つの国に10〜20人はいるっ♡」
「ご謙遜なさらずに……。充分すごいじゃないですか」
「S級はすごいぞっ♡世界に9人しかいない♡あれ♡1人死んで8人だったかな♡まあ私なんか遠く及ぼないんだ♡」
「S級ですかあ。会ったことないので想像つかないですね」
「あいつらは1人で国を滅ぼせる♡化け物達だ♡もし会っても逃げた方がいいぞ♡」
ゴーレムがぴたりと手を止めて、腕を下ろした。
「あっ15分経ちましたか」
ゴーレムは頭を下げると、トコトコと広場の方へ帰っていく。
スバルは痙攣したように、ビクンビクンと椅子の上で跳ねていた。
「……あのゴーレムほんとにただのマッサージの術式だったんですかね」
ランパは知り合いの痴態に目を伏せた。
それから1時間ほどしたのち、ユウジとスバルが広場に来て合流して宿に戻った。
鈴音は肩に土だるまを、ユウジは肩に土の棒を乗せていた。
「おっ棒か」
「ええ棒です」
余談だが、スバルは一発でユウジの作品タイトルを見抜いたのだった。




