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【異世界ミント無双】〜ミントテロで魔王倒します〜  作者: ぴとん
第五章 ウィッチ・ド・サン編
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第55話 バイキング楽しい

 飛行船の中には大広間があった。急遽手配された客室は4人では手狭だったので、ユウジたちは広間のソファで大半の時間を過ごした。


 本を読んだり、うたた寝をしたり、自由気ままに船に身を任せていた。


 夕食どきには、この大広間を通ってバイキング形式の食堂へ向かう客たちの姿を見た。


 船内客たちの服装は、貴族のようなドレスなどが多く、この船が富裕層向けの空の旅を提供していることが推測できた。


 食堂からいい匂いが流れてきて、腹をすかせたスバルとユウジは立ち上がる。


「金払ってるしあれ私らも食べていいよな」


「そうですね行きましょうか」


「招かれざる客なんですから、あまり食べすぎないようにしましょう」


 ランパは牽制するが、肉を食べたい欲求は彼女にも強くあった。


「お酒もあるかな……」


 鈴音もソファから起き上がる。何気に一番危険そうなのは鈴音だった。悪酔いして、富裕層の客に絡んだら、追い出される危険性がある。空に放り投げられたら、酔いも冷めるというもの。


 食欲に支配された4人が食堂に入ると、長テーブルに並んだたくさんお料理に、皆一瞬で目を奪われた。


 オレンジ色のソースがかかったステーキ、オイルで煌めく柔らかそうな白身魚。色とりどりのサラダに、多種多様な酒瓶が並ぶカウンター。


「あ、あああ……美味しそう……」


 ランパは自分の中の野生が解放されていくのを感じた。口元はいつの間にか、よだれでびしょびしょだった。


 鈴音はふらあ、ふらあとカウンターに引き寄せられていく。


 ユウジとスバルも取り皿を取って準備万端であった。


 異様な雰囲気の4人が入ってきたことに、乗客たちは気がつく。しかし、楽しい空のパーティーである。気にし過ぎると台無しになる。客たちはユウジらを完無視することにした。


「よし、完璧な皿ができた」


 ユウジは、揚げ物料理で一皿を埋めた。とにかく脂っこいものが食べたかったのだ。


「偏ってますねユウジさん。男の子っていう感じです」


 そう言うランパも肉、肉、肉だった。一応申し訳程度に皿の片隅にサラダを添えている。わずかに理性は残っていた。

 

「おいおい全品コンプリートしようぜ」


 スバルの皿は几帳面に肉、魚、野菜、などが盛り分けられていた。2週目3週目のことも考えている。


「すごいですよ!ここいいお酒がいっぱいです」


 鈴音は右手にはナッツやソーセージ、左手では指の間に上手に3つほどワイングラスをはめ込んで持っていた。

 

 バイキングには、性格が出る。


 彼らは大いに楽しんだ。


 

 食後、彼らは客室に戻った。


「食い過ぎた……」

 

 宣言通り全品コンプリートしたスバルはベッドに倒れ伏した。その横にランパも倒れ伏す。


「あんなに美味しすぎるとは予想外でした……」


 ランパは途中からデザートを食べ始めた。可愛い量ではなく、しっかりたくさん糖分を摂取した。


「……あれ、なんだっけ」


 鈴音は寝ているのか起きているのかわからない、意識朦朧な酩酊状態で、椅子に腰掛けていた。時折うわごとを漏らすが、会話は成立しない。


 ユウジは腹八分めでとどめていたので、1人だけ未だ立っていた。昼間にソファで寝ていたので、まだ眠くない。


「ちょっと食後の運動に行ってきます」

 

「あいよー先に寝てるかも」

 

 ユウジは船内を散歩することにした。



 船内の地図によると、なんとジムやシアタールームもあった。運動すると言って部屋を出てきたものの、ユウジはこの世界にきてから映像作品というものを見たことがまだなかったため、シアタールームに気持ちが傾く。


 シアタールームの前に来ると、カタカタと映写機が動く音がした。真っ暗な部屋から漏れ出るわずかな光に、心が高鳴る。


 ユウジが中に入ると、スクリーンには、知らない国の街並みが映し出されていた。映写機以外の音はなく、どうやら無声映画らしい。


 椅子は十個ほどおいていあったが、先客は1人だけであった。


「…………」


 ツインテールの女の子だった。メガネをかけており、映像がレンズに映り込んでいる。集中しているようで、ユウジには目もくれなかった。


 ユウジは、女の子から2席離れたところに座った。あまり面白いものとは思えない映像であったが、そのうち眠気が誘われるなら、ちょうどいい。


「…………」


 シアタールームで見知らぬ男女が無言で無声映画を見る。なんだか不思議な体験であった。しかも空の上である。


 カメラのアングルは突然パッと変わる。この切り替わり具合が、見事に眠気を誘う。もしかしたら、眠れない客のためにあるのかもしれない。ユウジも、次第に意識が途切れかけてきた。そろそろ客室に戻るべきか。


 ぼんやりとそんなふうに考えていたところ、突然目の前に、隣にいた女の子の顔が写り込んだ。


「…………っ?」


「あなたとは、縁がありそう」


 女の子は小声でそう言って、顔を離すとシアタールームから出ていった。


「……?何……」


 ユウジは謎のコンタクトをとられて、疑問が浮かんだが、すぐに夢の中に意識と共に沈んで…。



 

 気づけば朝で、飛行船は地上に着陸していた。ユウジは目を擦りながら、伸びをする。スクリーンには相変わらず知らない街並みが流れていた。

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