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【異世界ミント無双】〜ミントテロで魔王倒します〜  作者: ぴとん
第四章 エンベコピー編
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第51話 ウサギの戦い方

 ウサギの獣人ピースは、ニコニコと無邪気に笑っていた。これから戦う人間とは思えないほどに。


 ヒイロはピースに命令する。


「殺さない程度にやってくれよ。相手はまだ子どもだから」


「はい!もちろんです」


 仲のよさそうな2人のやりとり。ヒイロはUNCHAINを発動させて、オオカミの口を出現させた。


 よだれの垂れた大口を背に、ヒイロは尋ねる。


「ピースのことを強化させてもらうけど、試合前のドーピングは禁止かな?」


 エルフは眉を顰めたが、ユウジは了承する。


「いいですよ、それなら僕も能力でランパのこと支援するので」


「オーケー、それならフェアだ」


 ガブリ、と狼の口に消えるピースの姿。肉食動物に狩られるウサギは、残酷な光景であった。スウと狼の姿が消えると、そこには体を覆う体毛の範囲が先ほどより増えたピースが立っていた。


「獣人の潜在能力を解放すると、獣化範囲が広がる。より獣の力を引き出せるようになるってわけだよ」


 ヒイロは、ピースの頭を撫でる。ピースは興奮状態なようで、赤い目をギラギラと光らせていた。


 それを尻目に、ユウジはランパの背中に手を当てる。


「ほいっと」


「かゆっ何したんですかユウジさん」


 ランパは背中に発生した痒みを伴う違和感に、モゾモゾと後ろに手を伸ばした。


「かいちゃダメだよ。今ランパの背中に一本ミントを生やしたんだ」


「!?なんでですか!?」


「お守りみたいな?」


「ええ……ううーん」


 ランパはかきたい気持ちを抑え、これから戦うのだから、とほおをたたいて気を引き締めた。



 

 エルフは、声を上げる。


「それでは、両戦士、向かい合って!」


 ピースとランパが向かい合う。2人並ぶと、身長差が歴然だった。大人と子供の戦いである。一見ランパに勝機はない。


 しかし、ランパは犬科の獣人である。ウサギなど本来、対等に戦う相手ですらない。勝負の行方はわからなかった。


「恨みのない相手と喧嘩するなんて、変な気分ですね」


 ランパが顔色を伺うように言うと、ピースは気さくに手を振った。


「そんな重く考えなくていいよ!こんなことー」


 エルフはピースをぎろりと睨む。当事者にとっては、今後が決まる大事な一戦なのである。


「では、どちらかが負けを認めるか、明らかに決着がついた時点で終了とする。いざ、はじめ!」


 エルフの号令とともに、ランパは構えた。両手を前に、鋭い爪を見せて威嚇している。


 ユウジはヒイロの隣で2人の戦いを観戦していた。


「うちのランパは強いですよ」


「はは、それは楽しみだね」


 ヒイロは全く心配していないようであった。木にもたれかかって、悠々と闘技場を眺めている。


「……ピースさんとヒイロさんはどんな御関係なんですか」


 ユウジは気になって尋ねる。こんな大事な戦いを任せられる相手とは、よほど深い絆があるに違いなかった。


 すると、ヒイロは照れ臭そうに語った。


「こっちの世界に来てから、初めてできた仲間だよ。彼女とは一緒に旅をしてきた」


「へえ……」


「獣人として転生した俺は、ピースと同じ奴隷商の元にいたんだ。そこではまあひどい扱いを受けていてね。一緒に抜け出してきたんだ」


 ヒイロは懐かしむような目をする。彼にもこれまでの旅の歴史があるのだと、ユウジは悟る。


「それがきっかけで、獣人の奴隷解放運動を始めたんですか。でもエルフたちを追い出すのはやりすぎだったと思いますよ」


 聞き耳を立てていたスバルが内心突っ込む。


(城を崩壊させたり、国の中枢で大火事を起こしてきた奴がやりすぎとか言うかあー?)


 ヒイロはうなづく。


「確かに悪いことをしたと思うよ。でもしょうがなかったんだ。独自の文化を持つエルフたちの国に、いくあてのなかった獣人たちを移住させたものの、食い違いは日常茶飯事だった」


「はぁ……」


「具体的には、みんなでお茶会を開いた時、エルフはパンケーキ派だったが、獣人はクレープ派だったとかね」


「え?」


 ユウジは聞き間違いかと思い、ヒイロを見る。真面目な顔をしていた。


 エルフの方を見るも、これもまた険しい顔をしていた。


「そんなことでですかぁ……?」


 ユウジはわずかに信じられなかったが、ヒイロは続けた。


「まあ他にも色々あったけど、1番険悪になったのはその件だったね。いつか大きな衝突が起きる。それを回避するために、彼らに場所を譲ってもらったんだ」


「………………」


 パンケーキとクレープの戦争。


 争いとはそんな些細なことで起こるのか、とユウジは少し呆れてしまった。



「奴隷を解放して回って、そのまま彼らを放置というわけにはいかない。獣人には、獣人のための国が必要だ。もしこの戦いで負けたら、獣人は難民になってしまう。そんなことは絶対にさせないよ」


 ユウジは、しっかりとした考えを聞き感心した。ヒイロはいつも緩い雰囲気を纏っていたが、こんなにも深い考えを持って生きていたのだと。


 例え火種が、パンケーキクレープなんてものであっても。


「でも、僕にも負けられない理由はあるんですよ」


「ほう?」


 ユウジは、昨夜の会話を思い出す。


『なんだよお前ら、金が欲しくねーのかよ』


『別にいらないわけではないですけど、スバルさんどうして急にそんなお金が欲しくなったんです』


『急にっていうか……私らの旅費、そろそろ底をつきそうだぞ?』


『えっあーまじですか』


『ああ』


『あー……そう、ですか……。あー……」


 

 ユウジは拳を握る。


「ここで食べる果物も美味しいですけど、次の国に着いたら……お肉を食べたいんです!」


「…………」


 ポリポリと頭をかくヒイロ。


「それは、頑張らないとだね」



「よーし、ランパちゃん行くよー!」


 ピースはウサギの獣人である。ランパはジャンプから始まる空中戦を予想していた。しかし、ピースは全くの正反対の方向へ、姿を消した。


「な!?」


 ランパはピースのとった行動に目を丸くする。


 空中の正反対。つまりは、地中。


 ピースは凄まじい速さで土を掘り返して穴を作ると、その中に飛び込んだのだ。


「じゃあねー」


 穴の中から聞こえるピースの声。穴の横には、掘り起こされた土がかたわらに積まれている。


 巻き上がった砂ぼこりが晴れるまで、ランパは呆然と立ち尽くす。そして、チラリとユウジを見る。


「え、これ……どうやって戦えば?」


 ユウジは腕を組んだ。


「モグラ叩き、かな」


「セコンドヘボいな」


 スバルがチャチャを入れた。鈴音は心配そうに両手をぎゅっと握っていた。


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