第31話 パノプティコンinミストタウン①
交番らしき建物を見つけたスバルは、中にいた男に話しかける。
「なあ、あんた少し聞きたいことがあるんだが」
男は目をパチクリとさせた。話しかけられるとは思っていなかったという風だった。
「ん?忙しかったか?」
「いえ……ああ旅のお方ですか?ご用事でしたら、そちらのタッチパネルからお願いします」
男はただのこのタッチパネルを守る警備員だった。男は下を向いて、手元のルービックキューブに集中しはじめた。
スバルは理解した。どうやらこの街、ほとんどの公共施設は自動化しているらしい。
慣れないタッチパネルで、誤タッチを繰り返しながら、スバルは迷子の方への案内、を見つけ出す。
「これかぁー……?」
『ドチラヘ向イタイデスカ?コチラデ検索デキマス』
「えーと牢屋……出てこないな牢獄?監獄……出ない……刑務所……拷問施設……裁判所……えー出ねぇ!犯罪者といえばあとは……収容所!?もねえか!」
スバルは思いつく限りのワードを打ち込むも、検索はヒットしなかった。
あまりにも独り言がうるさいので、男も顔をあげる。
「お知り合いが犯罪を犯したのですか?」
「あん!?……そうだよ、なぁおっさん、犯罪犯したやつはどこに連れて行かれるんだ?」
すると男は困ったような顔をした。
「うーん噂では矯正施設と聞いています。ですがどこにあるのかは公表されていませんし、本当にあるのかどうかも……」
スバルは男の話し方に違和感を持つ。
「おい、おっさんどういうことだ?あんたはこの国で犯罪者がどうなるか、知らないってことか?」
男は頷く。
「えぇまあ……犯罪者は勝手に消えますから」
「消える?なに言ってんだ?」
「文字通り、消えるんです。悪いことをしたら気づけばそのひとは姿を消す。それがこの宝籠省の常識です」
ランパは、食料品店に入っていた。大型の施設で、看板には「スーパーマーケット」とあった。
彼女はこの土地の食文化に興味を持ったのだった。
「なにか甘いものでもあれば、と思ったのですが期待外れですね……」
棚に並んでいたのは、ボトルに入った緑色の飲み物、ビタミン錠剤、ショートブレッド……そういった、食欲のそそられないものばかりだった。
肉コーナーには、ひき肉があったが、店内から『培養肉、お買い得』という放送があったので購入を控えた。
「……この国にいるという四天王はタコの魔物クラーケンと聞いていたのですが、海が近くに無いのはどういうわけなのでしょう」
ランパは店内を歩き回るが、魚コーナーはまったくなかった。この国では海産物は縁が遠いようだった。
そのとき、突然店内が停電する。
「わぁ!?」
ランパは思わずしゃがみ込んだ。
暗闇は、しばらくのち、店内に明かりがもどることで晴れた。
『非常用バッテリーヲ使用シテイマス』
スピーカーがお知らせする。
ランパは、あたりを見渡すが、他の買い物客もなにが起きたのか、事態を把握しているものはいないようだった。
そのとき、奥から悲鳴があがる。
「きゃああああ!」
「動くな!」
ランパが悲鳴の方に駆けつけると、バールやトンカチなどを武装した集団が、客らを威嚇していた。ナイフを持った男などは、女の客を人質に取っていた。
「お前らは人質だ!俺たちは革命集団『サンズ』!」
なんと、ランパは、立て篭もり事件に巻き込まれたのだった。




