表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【異世界ミント無双】〜ミントテロで魔王倒します〜  作者: ぴとん
第三章 宝籠省編
30/100

第30話 時計の部屋

 スバルたちは入国して早々、通路から生えるロボットアームに、ガスマスクを手渡された。


「なんだこれ?」


 来訪経験のある鈴音は説明する。


「この宝籠省は、蒸気の国の異名の通り、あらゆる設備が蒸気動力によって自動化されているのです。ただしその弊害で、国中モクモクしていて……熱気に弱い私にとってはあまり長く滞在したくない土地なのです」


 鈴音はガスマスクをつけて顔が隠れる。短い丈のミニスカ風和装に、ガスマスクは、なんともチグハグな見た目であった。


「なるほど、その大気から身を守るためのガスマスクというわけですか」 


 ランパも子供用の小さいガスマスクを装着する。頭に生えた獣人の耳が、ぴょこんと存在感を強調する。


「なんつーか息苦しい国だな。観光客にガスマスク強要するなんて」


 スバルもぶつくさ言いながら装着する。


 そして、いよいよ通路を抜け、国内に脚を踏み入れると、ぶわぁ!と熱気が襲ってきた。


「うおおおん!?あっつ!」


 スバルの金髪がぶわぁと巻き上がる。鈴音は予想していたので、顔を伏せて直撃を避けた。


 やがて煙が晴れて街並みがぼんやりと浮き上がる。ランパは感嘆の声を上げた。


「わぁ……これは……すごいですね!」


 煙の中に浮かぶのは、数々のビル群。増築が繰り返されたような、不恰好な建物が多く、外壁には蒸気機関の配管が張り巡らされている。


 そして特筆すべきは住人たちである。


 入国する際に、永住するには機械手術が必須と言われていた通り、道ゆく人々の体の節々には銀色の肌が見え隠れした。


 両腕が機械な、日傘をしたご婦人。


 脚にターボエンジンがついた、スケボーに乗るこども。


 顔面がすべて鉄に置き換わった燕尾服を着た演奏家。


 これまで旅してきた国とは、まったくの別文化に、ランパは胸が躍った。


「この方々の呼吸器官は、この蒸気の国でも生きていけるように、改造手術を行われています。さらにからだの一部を機械に置き換えて、蒸気の力を使ったりもしているですよ」


 鈴音は説明する。ランパは目を輝かせた。


「私も改造手術したいです!」


「おいおいやめとけランパ。タトゥーと改造手術は、大人になってからだ」


 スバルはランパを止める。


「私はもう大人ですよ!」


「はいはい」


 この国に滞在している間、なるべく鈴音は外に出なくて済むよう、用事がある時以外は基本的に宿で待っていることになった。


「それでは、あまり羽目を外しすぎないようにしてくださいね、魔王四天王クラーケンさんにお会いする時はお呼びください」


 鈴音は高層ホテルにチェックインをして、ふたりと別れた。


 スバルはランパに尋ねる。


「さて、どうするか。今回はさすがにユウジのこと助けに行くか?」


「うーん心配ない気もしますけど……まぁどこに捕まってるかくらいは調べておきましょうか」


 ふたりは手分けして街を探索することにしたのだった。




 一方その頃ユウジは、パイプ管や歯車が張り巡らされた地下通路を、ロボットたちとともに歩かされていた。


「あの、どこへ連れてかれるのでしょう」


 ユウジが話しかけるも、ロボットは反応しない。シュコーシュコーと、彼らの動力源である胸の蒸気機関を鳴らすだけであった。


 無機質なメタルボディの彼らには、プログラミングされた動きしか実行できないのだ。


「はいはいっと」


 ユウジは諦めたように天井を見上げる。


 カタカタカタカタ、とネズミがパイプの上を伝っていった。そのからだにすらも、歯車が埋め込まれており、ユウジは舌を巻いた。


 

 そうして、ユウジが連れ込まれたのは、大小さまざまな掛け時計が壁を埋め尽くす一室であった。


 部屋いっぱいの時計は、高い天井に至るまでの壁一面に設置されており、一番上の時計などは文字盤すら見えなかった。


「え……なんすかここ。これが牢屋……?」


 チクタクチクタク、無数の針が音を奏でる。その針が示す時間は時計によってバラバラであり、いま現在の時刻はどれを信じればいいのかわからなかった。


 ロボットは無言で部屋の隅っこにユウジを押し込むと、カシャカシャ足を上下させながら、部屋から出ていった。


 鉄製の頑丈な扉が、がじゃん、と音を立てる。鍵がかけられたようだった。


「………」


 独りになったユウジは、とりあえず鉄板の敷かれた床に、座り込む。周りからは絶えず針の音と、ごく稀に定刻をしめすゴーンゴーンという音がなり続ける。


 無数の時計が、無機質にこちらを見下ろしてくる。


「あーこれは……気が狂う」


 ユウジは理解した。


 この部屋は、囚人の気を狂わせる拷問部屋なのだと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ