第29話 にゅうこく!
蒸気の国「宝籠省」。ここはもともととある大国の一部だったのだが、事情により、近年独立した。
その独立の理由というのが、他国では聞いたこともない、特殊なものであった。
「き……機械手術許可?」
『ハイ、同意シテモラワナケレバ、宝籠省ニ永住スルコトハデキマセン』
「永住?やっべ操作ミスったか」
スバルは『最初から』のボタンを押した。
ユウジたちは、宝籠省の入り口にたどり着いた。
目の前に聳えるのは、高い高いコンクリートの壁。遠くからでも国の中は伺えなかった。
入国窓口となる、壁の一角にある扉には、ひとつのモニターが設置されており、無人の音声案内によって入国許可がとられるとのことだった。
「観光デスネ。ソレデハ、冒険者証ナド、身分ヲ証明デキルモノハオモチデスカ?」
「あーそれはあるけどよぉ……」
スバルとランパは冒険者証を取り出し、モニターのカメラに映す。すると、ピーポーンと電子音が鳴った。
『A級冒険者 龍殺しのスバル 、C級冒険者 覇王の牙ランパ サン デスネ』
「なんですか龍殺しとか覇王とか」
ユウジは謎の異名に首を傾げる。スバルは、照れながら白状する。
「冒険者登録証って、自分で異名とか設定できるんだよ」
「龍殺したことあるんですか?」
「ないけど……かっこいいだろ?」
龍を殺したことがない龍殺し、スバル。誇大広告がすぎた。
「じゃあ……ランパの覇王の牙は?」
ランパは慌てて手を振る。
「ちょっと待ってください!私はスバルさんみたいに大見栄きったわけじゃないですよ!よく使われてるワードがあったのでそこから選んだだけです!」
「やーい覇王の牙〜」
「いやあなたは嘘つき龍殺しでしょう!」
スバルとランパが戯れている間に、鈴音も入国手続きをすます。
あとはユウジだけだったが、彼の冒険証には問題があった。
犯罪を犯した人間には、冒険証にその旨が書き込まれてしまうのだ。
これは国を跨いだ犯罪者には困った機能である。
恐る恐る、ユウジはモニターに冒険証を映す。すると、しばらくのち、ブザーが鳴った。
『ビー!犯罪者!犯罪者!タダチニ拘束シマス』
「案の定か……」
落胆するユウジ。非常扉が開き、中から警備員服を着たロボットが3人出てくる。
ロボットたちはユウジを羽交い締めにして、扉の中に引き摺り込む。
「あれ入れてはくれるんだ」
「中の牢とかに閉じ込められるんじゃないですか?じゃあまた後で会いましょう」
ランパはまったく心配せずにユウジに手を振った。
鈴音は慌てる。
「えっ?えっみなさんどうして慌てないんですか!?」
「なんとかなるだろユウジなら」
スバルも気にせず、正規の入国口の扉をくぐる。ランパもそのあとに続いていく。
「じゃあ鈴音さんまたあとで」
「えぇ……?」
ユウジは鈴音に手を振って扉の向こうに消えていった。
鈴音はしばらく呆然としたのち、困惑したままスバルたちのあとを追っていった。




