第28話 お食事と関係性
「そういえば」
蒸された甲殻類の脚を貪りながら、スバルがしゃべる。
「実は私は剣士なんだよ」
「……そうですね?」
意図を読めない発言に、一同は困惑する。突然何を言い出したのだろうか、ユウジは彼女の次の言葉を待つ。
スバルは豪快に、脚を食いちぎる。
「んがぁ!……んでな?私は剣士だというのに、妙なことにこのひと月ほど、手入れの時以外、一切鞘から剣を抜いてないんだ」
スバルは、長刀をかかげる。
「あーそうかもしれないですね」
ユウジは思い返すが、初対面の時いきなり斬り掛かってきたときしか、彼女が剣を持っているところを見たことがない。
ハサミをかかげるスバル。
「いいところを見せたい!次に魔物が出たら私が戦うからな!」
「…………」
みな、お好きにどうぞとしか思わなかった。この中に好戦的な性格の人間はいない。自分が戦わなくて済むならそれはそれでよかったのだった。
ランパはミルク寒天のようなものをすくって口に含めた。笑顔が溢れる。
「これ気に入りました!」
「それはよかったです!いっぱい食べてくださいね〜」
鈴音はおすすめの店を褒められて喜ぶ。
「ランパちゃんは食べ盛りなんですから、たくさん食べてくださいね」
「はい!残すのも非常識なので!」
ランパは頬袋を膨らませていた。
「なんか……妹みたいでいいよな」
スバルが言うと鈴音も同意した。
ランパは皆からの視線を集めて照れたので、話を変えようとする。
「そういえば、ユウジさんと鈴音さんは付き合ってるんですか?」
「おっ、そうだそれ気になってたんだよお前ら仲良くなったよな私がカチコチな間に」
「えっ…んぐっ」
鈴音は喉を詰まらせて、コホコホと咳をする。
「あっ大丈夫ですか、水飲みます?」
水を注いであげるユウジ。
「あーほらイチャイチャしてるー!やっぱりだよほらぁ!」
スバルはいい笑顔で茶化した。
「ちょやめてくださいよスバルさん、そんなんじゃないですよ」
「そうですよ、私は魔王四天王がひとり、雪女鈴音ですよ?人間、滅ぼします!」
「ほんとですかねぇ」
ランパが怪しむようにジロジロ見る。
「ユウジさんのこと、どう思っているんですか?」
ビシッとランパがスプーンを向ける。
鈴音は、しばらくの無言ののち、唇を動かした。
「その……とってもいいひとだと思ってる、よ?」
鈴音はチラッとユウジのほうに目を向けた。思わずユウジもどきりとする。
スバルは、それを見て、ため息をつく。
「はぁー!わかってねぇな!ユウジはなぁ、倫理観が欠如したやべぇやつなんだ!優しさなんて持ってるわけがねえ!」
「ひどい言われようだ」
ランパはそれに続く。
「そうですよ。もし認められたいなら私たちにも優しくしてください?」
ユウジは参ったように頭をかいた。
ところでこの店の食事代は、店主がミントに興味を持って、たくさん買い取ってくれたので、なんとタダになった。
さらに、逆にお金を払ってくれて、宝籠省で使える通貨をも貰ってしまった。
ユウジは、うまくいきすぎな人生に、一周回って不安になってしまった。




