第24話 雪女、故郷に帰る。
このたび、魔王より派遣されたのは、種族名:雪女と呼ばれる、人型の魔物であった。
銀白の髪に、透き通るような白い肌。さらにそこへ真っ白な和服を着た雪女は、もし雪山ですれ違っても、誰も気づくことはできない。
彼女の個体としての名前は、鈴音と言った。もともと、この国の生まれである。
生まれながら魔力の高かった彼女は、あるとき魔王関係者と名乗る魔物にスカウトされ、大陸へ渡った。
異国では、さまざまな体験をした。故郷では考えられないような、ハレンチな服装、ハイカラな髪飾り、扇状的な舞。
すべてが刺激的だった。
鈴音は、銀髪を明るい茶髪に染め、艶やかな化粧を覚え、ブレザーと、下着がギリギリ見えるか見えないかレベルのミニスカートを履いた。
魔王のもとにたどり着いたころには、すっかり彼女はギャルになっていた。
このたび、鈴音は実力を認められ、四天王の空席に座ることを許された。管轄支配地域は、鈴音の故郷だった。
雪女は人間の姿も持っていたので、地元の人たちとの交流もあった。鈴音の顔を覚えられている者もいる。
そうなったとき、鈴音は気恥ずかしかった。
あんなモノトーンな国で、こんなオシャレをしていては、イジられるに決まっている、と。
だが、すっかりいまの姿が気に入っていた彼女は、髪だけを元の銀髪にし、服装だけは女子高生の制服のようなミニスカを履いて、入国した。
笑うなら笑えばいい。
これが異国から持ち帰った、kawaiiなのだから!
港に着き、船から降りると、さっそく鈴音は地元のひとに声をかけられた。
「ああ!鈴音ちゃんかい!?大きくなったねぇ!あらぁめんこいかっこして!みんなに見せてきな!」
「あ、えっと八百屋のおばちゃん久しぶり」
「おう!雪女のとこの!おぅすっかり美人さんになって。いい服じゃないか似合ってるぞ。化粧も綺麗だうちのにも見習わせたいね!ガハハハ!」
「漁師のおっちゃん…おひさ」
鈴音は、予想外に、街の人に温かく迎え入れられた。
実家に帰ると、さすがに母には驚かれた。
「そんな格好して。でもそれがいま流行ってるの?」
「流行ってるっていうかぁ……かわいいでしょ?」
「……それがあなたのお気に入りならばなにも言うことはありませんよ。たしかにかわいい、と思います。しかし、どうしましょうね」
「?どうしたの?」
「先祖代々、雪女の頭領を継ぐものには、この蝶の柄があしらわれた白い着物を送ることになっていましてね。これもお似合いだと思うんだけど、着ない?」
「……!?なにそれ!着させて!」
しばらくのち、着付けをしてもらい鏡の前に立った鈴音は、自らの持つ元来の美しさにひさびさに向き合った。
華奢な鈴音には少し大きめの着物。胸の締め付けも苦しく、動きづらい。
しかし。
「……モノトーンも悪くないね」
これを機に、ひさびさに地元について知っていこうと考えた鈴音であった。




