第21話 船酔いにもミント
8月から毎日3回投稿となります。
10時、17時、21時に投稿されますので是非お読みください。
船は揺れに揺れた。5日間にわたる航路は陸で生きる一行には厳しかった。
ユウジは大罪人なので、バレないように最初樽の中に荷物として押し込められた。
しかし、出航1時間でギブアップ、樽から飛び出し、ユウジは盛大に海上に吐いた。
「ウゲェー!無理だ…」
胃の奥から酸性が飛び出して、一気にダウン。大の字に寝転んだ。
「おいおい情けねぇぜウゲェーオロロロ」
スバルは吐きながらユウジを笑った。
「まったくひとの船で吐くなんて非常識ですよオロロロロ」
ランパも小さな体躯が船から落ちないように気をつけながら吐いた。
グラングランと揺れる船内はまるで悪夢のようだった。
船員に心配された3人は、なるべく酔わない位置に片づけられた。
「死にたいです…」
「同意だぜ…」
「右に同じくです」
波の音ひとつひとつがダメージになる感覚。殺してくれるなら受け入れる覚悟ができるほどに、3人は気持ち悪くなっていた。
このとき、ユウジはそういえば、と思い出す。車酔いの時はミントガムやハッカ飴を口に入れていた。
船酔いにも効果があるかもしれない。
ユウジはミントを生み出し、口に入れた。
清涼感で、すこし心なしか楽になった気がした。
スバルとランパにもミントを分け与え、ふたりにも、多少の和らぎが訪れる。
「持つべきものは……ミント系能力者だな」
「ユウジさんがいてくれてよかったといま心から思っています」
いつになく感謝され、ユウジは恥ずかしくなった。
海上の海鳥がニャーニャーと鳴いていた。
実のところ船員たちは、ユウジが先日の王城破壊事件の犯人だとわかっていた。
手配書とまるっきり同じ顔立ち、背格好、服装だったからである。
あまりに変装していないので、逆にびっくりしていた。
しかし、船長は面倒ごとに巻き込まれたくないと、捕縛を拒否し、事なきをえたのである。
5日間は長かった。船長の好意で、カレーのようなスパイシーな飯を出してもらえた時、ユウジはあまりの幸福感に泣いた。
些細なことでも幸せになる体験だった。
到着した港町は、木造の家屋が並ぶ集落だった。
着物を着た漁師たちが闊歩しており、和風らしい文化に、ユウジは懐かしさを覚えた。
街の中もまるで江戸時代のような趣であり、映画村のセットに現実の人が暮らしているような、多少馴染みがある風景だからこその違和感があった。
見る者全てが新しいランパは柄にもなく浮き足立っていた。
「これが外国ですか!島国だけあって独特の文化が栄えていますね……!」
スバルはキョロキョロとあたりを見渡した。
「みんな髪の色がユウジみたいに黒だな。金や茶はいねぇや。そういう人種の国なんだな。浮いちまうぜ」
一同は宿屋に泊まることにした。この国の通貨は、船上で両替してくれたので、勘定には困らなそうだった。
宿屋の女将がユウジに尋ねる。
「あんたら海の向こうのひと?久々だよ金髪のお客さんは」
「あまり外国からの人は止まらないんですか?」
「最近はめっきりだねぇ。お上の方針が変わったとかで交易が減ったとかで」
独自の文化圏が形成されていたがしかし、長い間鎖国された江戸時代的背景というわけではなかったらしい。
たしかに、この茶色一色な和風家屋な宿にもところどころカラフルなガラス瓶が飾られていたりもした。
「お上……というと、この地をおさめている王ですか?」
ランパが尋ねると、女将は頷いた。
「この集落からしばらく歩いて山上に、城が立っていてねぇ。そこにお殿様がいるんですよ、おじょうちゃん」
「やっぱ旅の私たちじゃ会えないか?」
「どうかねぇ。問答無用でお侍さんに斬り殺されることはないだろうから、ひとまず行ってみてはどうかぇ?」
こうして、ユウジたちは明日、山の上の城に向かうこととなった。




