第16話 プロフェッショナル
8月から毎日3回投稿となります。
10時、17時、21時に投稿されますので是非お読みください。
スバルは刀の発注をした。王都一と呼び声高い職人に直接頼みに行った。
「なんだい、スバルちゃんか大きくなったな」
職人は作業から目を離さずに、承った。
「ああ、お願いするぜ。報酬は弾んどく。ここに金貨置いとくから」
「ふっ金持ちの道楽かと思っていたが、ずいぶん名を上げたそうじゃないか。持ち主に見合うものを作らないとな」
職人はニヒルに笑った。
スバルは、胸を張って工房から出ていった。
【プロフェッショナル、職人の流儀。】
職人の朝は早い。午後13時。ゆっくりと起き上がる。
ー おはようございます。これから本日の仕事ですか?
「いや今日は休暇の予定なんだ」
職人はそう言うと、寝巻きから私服に着替えて、街へ出た。残念ながら年季の入った作業着はお目にかかれなかった。
ー どちらへ向かわれるんですか?
「……………」
職人は答えない。街の人の流れに身を任せているように見える。
職人はやがて、ひとつの店の前で立ち止まる。麺料理店である。
カランコロン。鐘と共に入店する。
「やあガンちゃん!また来たね!いつものでいい?」
店員の中年女性が快活に出迎える。職人は慣れた動作で席に座る。
「ああ、あと灰皿もくれ」
職人は塩スープの麺料理を啜り始めた。
ー いつもこれを頼むんですか?
「ええ、そうねぇ。休みの日はだいたいここち来て、これ食べるわよ。ほんっとに好きなんだからうちの店!」
「うるせぇよ静かに食わせろ」
職人は無愛想だった。
ー ガンちゃんとは?
「頑固者だからガンちゃん!私が勝手によんでるのっ」
〜〜〜〜〜
昼時すぎ、客足が落ち着き、中年女性は空いてる席にすわった。
「この店も長くてね、常連さんで持ってるようなもんなのよ」
「…………」
「息子は継がないって言ってるし、からだ壊したときが、やめどきかねぇ」
「……長く続けろよ」
はにかむ中年女性。
ふたりの間には長年の付き合いからくる信頼関係があった。
職人は店を出た。
ー 次はどちらへ?
「……なんで答えなきゃいけねんだよ好きにさせろ」
職人の足取りは、表面上の機嫌とは裏腹に軽かった。
「大人400G」
番頭さんに銅貨を渡すと鍵と交換された。
入ったのは王都に昔からある銭湯。
職人は汗を流して、湯上がりに牛乳を飲んだ。
「……このいっぱいに限るな」
ー 銭湯が好き?
「好きだよ。べつに……うん」
ー このあとはどうするの?
「酒飲んでねるよ。休みなんだから」
ー 剣は作らない?
「いやだから休みっつってんだろうが」
ー 相場より多く、金貨出したのに?
「…………」
ー ねえ?
「結局、金に物言わせる気かよ…わーたよ!作る作る!だからもう着いてくんな!明日の朝渡す!」
ー ありがとうございます
「ずっと引っ付いてきて怖かったんだよ!!!さっさとどっか行けや!」
「うん、いい暇つぶしになったぜ。私は露店で美味しいもの買って宿に帰る!じゃあ頼むからなー!」
そう言って、一日密着したスバルは、職人の元から去っていった。
〜〜〜〜〜〜
翌朝、職人が目を覚ますと、スバルは枕元で微笑んだ。
「工房にあったアレだろ?いい出来だな、さすが王都一の職人」
肩を震わす職人。
「さっさと長刀持って出てけー!」
教訓。他人の休日を邪魔するのは良くない。




