第14話 服装の乱れは心の乱れ
翌日、ユウジたち一行は、王都のギルドを介して、王城を訪ねることとなった。
すんなりと話が通ったのは、スバルが王都ギルドの皆々と顔見知りで、王族とのコネクションも強いかったからである。
粗暴なところもあるが、なんだかんだ彼女は人望が熱い女性なのだった。
ランスパンフのギルド長、アッちゃんからの署名を見せるとしばらくのち、王の部屋に招かれた。
ランパは緊張していた。
「こ、こんな簡単に王様と会える人生があるんですね……」
腕の毛が逆立っている。緊張の表れが体に出やすいタイプらしい。
マイペースなユウジも、さすがに王の前ならばきちんとしようと、服のシワをのばして待っていた。
「あれ?そのシミいつのまについたんだ?昨日のシチューか?」
スバルはめざとく、ユウジの服の汚れを指摘する。
「え?あーうーんなんでしょうね……」
ユウジは一瞬で、昨夜シャツが汚れるようなことをしたことを思い出した。風呂の後、やはり興奮してしまったのだった。
獣人で鼻のいいランパに気づかれる前に、ユウジはミントの香りをシャツにまとい、ごまかす。
しばらくして、王が現れた。
威厳のある王であった。顔立ちは凛々しく、広い肩幅に豪奢なローブを羽織り、頭には宝石の散りばめられた王冠。
国王にふさわしい出立ちである。
王は、咳払いののち口を開く。
「事の顛末は聞かせてもらった。その前にスバル。久しぶりだな。元気にしていたか?」
「ええ、お父さま。……まだお父さまと呼ばせてくださるのかしら?」
スバルは顔を上げて、微笑む。
ポカンとするユウジとランパ。
「え……王族、だったんですか?」
「良家とは言ってたけど……王って……逆に鯖読みすぎですよ」
王は部下を下げさせる。部屋には王と3人しかいなくなった。
「ああ、勘当した娘だろうが、たまに顔を見せてくれればにこやかにもなろう」
王は部下たちの前とは一転して、柔和な笑顔を見せた。
スバルは王と愛人の子であったため、王位継承権はもとからなかった。そのため、出奔したときもあまり大ごとにはならず、王都では安いゴシップになる程度だったという。
王は堅苦しい冠を膝に置く。
「歳のせいか肩が凝ってきた。そろそろワシも引退だ」
「まだまだいけますわよお父さま」
「王位は妹のリズマリーに譲ろうと考えていてな……憲法を見直したが、女に王座を譲る事も問題はなかった」
「あら、あの子を?少々おてんばすぎはしませんか?」
「ふっふっふ!お前が言うかスバルよ!」
和やかな家族団欒であった。
このムードなら、トースターの街壊滅の件もどうにかなるだろう、とユウジは一安心した。
王は笑いながら冠を被り直すと、手元の紙を読み上げる。
「ふふふ……さて、スバルのご友人ユウジ殿!」
「はい!」
「このたびは娘とよくしてくれて礼を申し上げる!落ち着きのない娘だが、よくここまで付き合ってくれた!」
「み、身にあまるお言葉で恐縮です」
ユウジは漫画やゲームで覚えた、こういう場面で言いそうな語録を駆使してしのぐ。
王はうんうん、と頷きながら結論を言い渡した。
「ユウジ殿、貴殿はトースターの街を壊滅させた罪で懲役310年と処す!」
「……ええ」
ユウジは期待を裏切られて、げんなりした。




