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第100話 MINT IS NOT TRUTH

 ユウジが魔王を引退させてから、はや5年。


 世界は現在。


 滅亡の危機を迎えていた。


 原因は、ユウジが最果ての土地に建国した妖精帝國ミントの侵攻によるものである。


 ミント災害は、世界の誰もが恐れる自然災害として知られていた。



 そしていまや、ユウジは巷では、「魔王」と呼ばれている。


 かつて世界を救った勇者が、魔王呼ばわりなど皮肉なものである。


 自業自得な面もあるのだが。




 私、カナエは、世界中の有志と共に武器の手入れをしていた。


「姉御!弾は充分です!」


 仕入の数があっていたことを確認した新入りが報告してくれるが、私は吐き捨てる。


「この戦いに充分なんてものはないのよ」


「シッ失礼しました」


 冷たくあたってしまい、申し訳なかったけど、こちらの戦況は厳しい。私も気が立ってしまったのだ。許してほしい。


 共同戦線を敷く、サンワロックのリズマリー王女によると、ミントの侵攻はあと3時間でこの前線基地に到着するという。


 サンワロックには、スバルさんの鍛えた『炎渦竜騎士団』なる、炎を操る凄腕剣術集団がいる。


 彼らは援軍としてこちらにむかってきてくれているが、それまで私たちは堪える必要がある。ここが勝負どきなのだ。


 気を引き締めて、戦いの準備をする。





 ある日、珍しいことに、女神さまがお告げを授けに夢の中に現れた。


 もう何年振りだろうという女神さまの姿は、どこかやつれているように見えた。


「どうしたんですか?具合が悪そうですが」


「ええ、実は現在起きている事態が、深刻でして」


「なにかあったんですか……?」


 しばらくの沈黙ののち、女神さまは、重々しく口を開いた。

 

「ユウジさんのミント能力が覚醒して……彼の意識はメンテーに乗っ取られました」


「乗っ取られ……!?」


 私は口を覆った。最悪の事態だった。


 異世界転生者たちは、その身にチート能力の元となる魔物を飼っている。


 魔物と友好関係を築けば、彼らは大きな力となってくれる。


 ただし、もしその魔物が宿主に反旗を翻せば……。


 魔物にその体を乗っ取られてしまう事例もあるという。


「まさか、ユウジくんがそんな……あそこまで強大な力を使えるなら、もう魔物と仲良くなっていたと思っていたのに」


「ユウジの中にいたメンテーはつい最近までずっと表に出ることなく眠っていました。力を貸しながらも、虎視眈々と準備をしていたのです」


「準備を……?」


「ミントを司るニンフ、メンテーは特殊な存在です。彼女は、ミントの植生地ならばどこにでも意識をつなげることができます。つまり、ミントの繁殖範囲を広げることこそが、彼女の力を大きくすることに繋がるのです」


 カナエは唾を飲み込む。


 ユウジはこれまで、ミント能力を濫用し、世界中のあらゆるところにミントを生やして回っていた。


 その行為は、メンテーの勢力を広げていることになっていたのだ。


 この状態で、メンテーがユウジを裏切ったとすると。


 メンテーは世界征服が可能である存在になってしまったと言っても過言ではない。


「メンテーの目的はなんです……?」


「神々への復讐でしょうね。彼女がミントになったのは、神からの罰ですから。世界を乗っ取ることで神と戦おうとしているのでしょう」


「そんな……」


「いま、あなたを含めて力のある者たちに呼びかけています。ミントの侵攻を止めてくれと。もし世界がミントに飲み込まれれば、あなたたちは、この世界は終わりです」



「……………」



 ユウジが建国した国は、現在メンテーの本拠地となっているらしい。


 私たちは、メンテーを倒さなければいかなくなった。



 私は人材を集めた。


 宝籠省にて、かつて有名だった革命集団サンズの生き残り。


 ウィッチ・ド・サンにて、黄金の雨事件の引き金となった爆弾魔石の製作者たち。


 白か黒かは関係なく、とにかく戦えるひとたちに声をかけて、私はミント解放軍を組織した。


 現在、私の率いる解放軍は、妖精帝國ミントにテロ行為を仕掛けたり、ミントの侵攻が迫る国に力を貸すなどして、世界をミントの脅威から守ろっているのだ。



「来たぞ!ミントだ!!!」


 解放軍のメンバーが声を荒げる。


 地平線の向こうに、緑色の塊が迫ってきていた。


 近づいてくると、その緑の塊は人型をしていることがわかる。


 これは、ミントで複雑に構成された、自動人形である。


 ミントが生えたり枯れたりを繰り返すことで、自律して動く人型の兵隊なのだ。


「銃構え!発射!」


 私の掛け声で、軍のメンバーたちは銃を乱射する。


 爆発魔石を組み込んだ銃火器は、ミントに火をつけることができ、侵攻をしばらく食い止めることができる。


 ただし、ミントの繁殖力は燃え尽きるよりも早い。すぐさまミントは人型に再構成すると、ノシノシとこちらへ向かって歩いてくる。


「くっ……やはり火力が足りないか」


 私は唇を噛む。あまり使いたくなかったが、奥の手に頼るほかなかった。


 私は、鞘から草薙の剣を抜く。


「はぁ!」


 剣を振るうと、前方にいた何体ものミント兵たちは、一瞬で地面から吹き飛ばされて、消滅した。


 根を刈り取るこの剣は、ミントに特攻した性能なのだ。


 ただし、使用者にはリスクもある。


「はぁ……はあ……はぁ……」


 私は力が抜けて、その場にへたり込む。相当な魔力を必要とするのだ。


 ひとまず、視認できる範囲からは、ミントを消し去った。ただし、次の波がいつくるか油断はできない。


 援軍が到着して、盤石の布陣が敷けるまで、この防衛線は気が抜けなかった。


「隊長!またきました!」


「ポーションで回復してるから、それまで耐えて……!」


 私は息も絶え絶えに、回復効果のあるポーションをがぶ飲みしていた。


 物言わぬミント人形は、のっそりのっそりとまたこちらに歩み寄ってくる。



 私はただの豆腐屋の娘だった。それなのに、世界の守護者としてこうして戦う羽目になってしまった。


 ミントという植物はなんと迷惑な雑草なのだろう。



 






【異世界ミント無双】


〜ミントテロで魔王倒します〜






【異世界ミント無双】


〜民とテロで魔王倒します〜






 私をリーダーとする解放軍は今後10年にわたって戦うこととなる。草薙の剣があっても、力及ばず、その間に世界のほとんどはミントに覆われていった。


 事態を解決させたのは、勇者と呼ばれる存在が現れてからだった。


 

 成長して美しい女性となったランパとセガ。


 そして、鈴音の娘である花鈴と、スバルの娘であるレクサスという2人の少女。


 彼女たち4人は、新たな勇者として魔王ユウジ、もといメンテーを倒す旅に出たのだ。





 物語は終わることなく紡がれていく。




 それがハッピーエンドかバッドエンドなのかは、置いておいて。

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