第二十四章 ぼくらが廃村に招かれた話 8.廃村探検~祠~
~Side 優樹~
「……で、優樹。あたしたち、どこに向かってるの?」
「あ、うん。田んぼの跡。土を回収しておこうって思って」
「土?」
「うん。確か田んぼの土ってそこらの土とは違ってたと思うし、こういう時じゃないと取り込めないだろうから」
「田んぼの土……何に使うの?」
「田んぼだよ?」
マヨヒガに田んぼが付属してるかどうかはわからないけど、ぼくたちが出くわした方の「迷い家」は広い範囲をカバーしてそうだったし、いずれ田んぼぐらい作れるんじゃないかな。案山子さんだっているんだし。マヨヒガの方で用意してくれるかもしれないけど、あっても別に邪魔にはならないよね?
真凜も納得したからそのまま水田の跡地に行って、田んぼの土と、ついでにそこに生えてる草も――不自然でない程度に――取り込んだ。結構丈の高い草が茂ってたしね。
そうやって順調に取り込んでいたところで、【素材鑑定】が反応した。
「……真凜ちゃん……あそこ……」
「今度は何よ? あそこ? ……あ……何かあるわね」
生い茂った草にほとんど覆い隠されていたけど、田んぼの脇の小高い場所にあったのは――
「……祠?」
「――の外側だけだね。中身は持って行かれたみたい」
中にあったのが仏像か神像かはわからないけど、引っ越す時に持ち去られたんだろうね。祠だけ置いてかれたのは、古いからかな?
けど――ぼくとしては断じて見過ごすわけにはいかない。だって……
《対象物の品質は以下の通りです。
【祠】 品質:中 貢献度:大
マヨヒガの素材として取り込みますか? はい/いいえ》
何たって貢献度が「大」だよ!? 「大」! 放って置くわけにはいかないよ!!
「え……? これってそんなに貴重な素材なの?」
「う~ん……材質的にどうって言うより、神様だか仏様だかを長年納めていた事と……あと、はっきりと建物の姿を残している事が重要みたい」
「……どういう事? うぅん、神様を納めていた――っていうのはわかるんだけど……建物の姿?」
「あ、うん。どうもね、建築のお手本になるようなもの……建物と言うよりは、建物が持ってる記憶のようなものが欲しいみたいなんだよね」
「あ……だから〝素材〟なのね」
「そういう事」
そりゃ、廃屋とかを丸ごと取り込んだ方が良いのはわかるけど、騒ぎになりそうだしね。……電柱を取り込んでる時点で今更だけど。
「……でも、こんな小さな祠だと、実際の建物とはかなり違うんじゃない? それでもいいの?」
「あ、うん。必要なのは設計とか構造情報とかじゃなくて、建物としての記憶――自覚って言うべきなのかな?――みたいだからね」
「へぇ……だったら犬小屋とかでもいいの?」
「……真凜ちゃん……大っきな犬小屋に住みたい?」
「遠慮するわ……」
こんな感じでぼくたちは廃村をまわって、使えそうなものをサクサク取り込んでいった。……後で騒ぎにならない程度に――だけどね。
「……ねぇ優樹」
「何?」
「家の裏手に、時々お墓っぽいのがあったわよね?」
「あ、うん。あれって本当にお墓みたいだよ? まとまった墓地じゃなくて、家の敷地内とか近くとかに、その家としてのお墓があったみたい」
確か、今和次郎の「日本の民家」にも、そういう事例が載ってたよね。
「残ってるのは墓石だけで、お骨とかはちゃんと持って行ったみたいだけどね」
「そうなんだ……それで、墓石は取り込んだりしないの?」
あぁ、真凜が気にしてるのはそっちかぁ。
「あ、うん。何か……このままここに残っていたい……そんな感じだったから」
「……そうね。その方が良いかもね」
うん。いくらマヨヒガのためだからって、何でもかんでも欲張って取り込むのはいけないよね。
これにて本章は終幕となります。




