第二十四章 ぼくらが廃村に招かれた話 4.転移者の影(その1)
~Side 真凛~
腹が立つほど冷静に優樹が返した答は、あたしの頭を冷やさせるのに充分なものだった。
――えぇ。それはもぅ、ぞっとするほど冷えたわよ。
「真凛ちゃん、ラノベとかの異世界転移ものって、知ってるよね?」
「……異世界から転移してきた誰かの持ち物だった……っていうの?」
「他に説明が思い付かないし、実際に『迷い家』があるくらいだから、異世界転移もありかなって」
――異世界からの転移。
「……大事じゃない……」
迷い家をきっかけに怪異の事を調べ始めたあたしたちとしては、とうてい無視できる話じゃない。くわしい事を知りたくなるのが人情なんだけど……
「いつ、どこで――っていうのが何もわからないんだよね」
「どこ――って……あぁ、そうか。ショートソードと素材はここに埋められていたけど、だからって、転移自体がここで起きたという証拠にはならないわよね」
「うん、転移と埋められるまでの間にタイムラグがあった可能性もあるからね」
転移が起きたのは当然埋められた時より前になるから、埋められた時代がわかりさえすれば、ある程度のしぼり込みは可能かも。だけど……
「……隠物と言うなら戦国時代だけど……戦国時代に刀を隠すっていうのが、何かこぅしっくりこないのよね。武器が不可欠な戦国時代なら、隠すより使うという選択肢を選びそうだし」
「あぁ、うん。確かにね」
「そうすると――次の機会は秀吉の刀狩りだけど……」
こっちはこっちで、別の意味でしっくりこないのよね。
世の中の大勢が定まって、刀がそこまで要らなくなったというなら、天下人たる秀吉の命に逆らってまで、刀を隠す必要があったのか。
ミスリルの剣はまだしも、それ以外の刀を埋めるまでして隠す……そこまで固執する理由が思い付かないのよね。
「武士を捨てて農民になった人たちは? 代々伝わる業物とかなら、隠す動機もあるんじゃない?」
「それはそうかもしれないけど……そういうのは少数派じゃないかしら? 第一、家伝来の業物が何本もあるというのも珍しくない?」
「だったら、自衛のために必要だったというのは? あの時代なら、そこまで治安は良くなかったはずだよ?」
「そうだけど……秀吉の刀狩りも、自衛や祭祀用の刀剣まで供出させたわけじゃなかったはずよ? それに、刀以外の槍とかは保有を認められてたっていうし」
「あ、そうなんだ」
それらを考えると、やっぱりGHQ説が一番しっくりくるのよね。けど……そうなると……
「可能性の幅が広がっちゃうね」
「そうなのよねぇ……」
調べるべき時代の幅が、〝戦国時代以前〟から〝終戦以前〟にまで、一気に広がるのよねぇ……
「……ねぇ真凛ちゃん、ぼく、ちょっと気になる事があるんだけど」
「何よ?」
これ以上ややこしい事を言い出すつもりじゃないでしょうね?
「うん。埋められたのが終戦後だったとすると、鞘がここまで腐るかな――って」
「あぁ……そういう事ね」
あたしもそこまでくわしくはないけど……
「埋められる前から、鞘が虫喰いだった可能性はあるわよ? 普段から目に付くところに出してたとも思えないし」
「でも大事なものなら、時々手入れぐらいはしてたんじゃないかな?」
「ミスリルのショートソードの方はそうかもしれないけど、その他大勢の日本刀の方はどうだったかわからないわよ?」
――それにもう一つ、
「一緒に埋められてたモノがモノだしね」
「あぁ……ミスリルはまだしも、ワームの魔石と歯があったよね……」
「えぇ。何か瘴気を発してて……というのはないかもしれないけど、周りから魔力みたいなものを吸い取ってて、そのせいで早く朽ちた――っていうのはありそうな気がするのよね。ラノベ的には」
「こことむこうの環境の違い――とかも考えなきゃなさそうだしね」
「あぁ……確かにそうよね」
埋蔵物の状態から埋められた時代を特定するのは、少なくともあたしたちには難しいみたい。優樹の【素材鑑定】に期待したいんだけど――




