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ぼくたちのマヨヒガ  作者: 唖鳴蝉
第三部 五年生 二学期
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第二十二章 ぼくらが化石を掘りに行った話 3.採集会当日

 ~Side 優樹~


 翌朝、博物館で簡単な説明を受けた後に、博物館の人たちの案内で、ぼくたちは化石層の露頭という場所にやって来た。ここでグループごと三々五々に散らばって、石を割ったり土砂をふるったりして運試しをするわけだ。

 この手の催しだと、発掘現場から石だけを会場まで運んで来て、それを参加者に割らせるというのが多いみたいだけど……それでは味気無いだろうという事で、今回は参加者を化石層のある現場まで拘引……引率して採集に当たらせているみたい。まぁ、引率する親御さんたちは大変だろうけど、ぼくらもこっちの方が面白いよね。


 ぼくと()(りん)は二人で少し離れた場所に移動してる。他のグループと近い場所にいても、採集ポイントの取り合いみたいになっちゃうしね。

 叔父さん? 職員の人たちと一緒に、休憩テントでまったりとくつろいでるよ。まぁ、ぼくたちにとってもそっちの方が都合が好いんだけどね。


「あーもぅ……貝とか葉っぱとか、小物ばっかりじゃないのよ! もっと大物は出てこないの!?」


 ……ついさっきまでは、その貝とか葉っぱに歓声を上げてたくせに……人間の欲望って限りがないなぁ……


「……って言うか(ゆう)()、さっきから当たり――大当たりじゃなくて小当たりだけど――の石ばっかりばっかりよこしてるけど……もしかして……?」


 ――あ、やっと気が付いたみたいだね。


「うん、【素材鑑定】の効果なのか、何となくだけど化石を含んでるかどうかわかるんだよね。()(りん)ちゃんの土魔法は?」


 確か()(りん)の土魔法に、鉱石探査系のスキルがあったはずだけど?


「……ダメね。化石は鉱物ではないって事なんでしょうね。化石探しは(ゆう)()頼りって事になりそう」

「……ぼくだって、おぼろげにしかわからないんだけどなぁ……まぁ、慣れたらもう少しはっきりわかるのかもしれないけど……」


 どうも化石って何の役に立つのか、【素材鑑定】も判断しかねてるようなところがあるんだよね。……あれ? これって……?


()(りん)ちゃん、サメの歯が出てきたよ」

「サメの歯! 『天狗の爪』ね!?」


 結構きれいな化石が出てきたもんだから、()(りん)はおおはしゃぎだ。さっきまでの不機嫌はどこへ行ったやら。けど……


「……どうかしたの? (ゆう)()

「あ、うん。貝とか葉っぱとは違って、サメの歯はちゃんと品質とか鑑定できたんだけど……」

「――けど、何よ?」

「うん。夕べ博物館に展示してあった化石を見せてもらったじゃない。そこに展示してあったサメの歯に較べると、品質が低いみたいなんだよね」

「……大きさは同じくらいだったわよね?」

「うん、形も同じようにちゃんとしてるし」


 ただ……あっちの化石は確か、地元の有志の人から寄贈されたもんだって書いてあったよね。「天狗の爪」として秘蔵されてたんだって。


「……人に大事にされてたかどうか……例えば信仰とか想いの深さが、品質や貢献値に影響してる……って事?」

「うん。そうじゃないかなって」

「……重要な情報じゃない」


 うん。これがわかっただけでも、参加したかいがあったよね。貝とか葉っぱの化石もただの石よりは価値があるみたいだし、適当に取り込んじゃおう。どうせ全部を提出したら、多過ぎるって怪しまれそうだし。


 そんな感じに化石を掘り出してたら――


「……()(りん)ちゃん……お望みの〝大物〟ってやつみたいだよ」


 地面の下に、大型の動物の骨がいくつか固まってる場所があった。ただ……


「地下にある――って……土魔法で掘り出せって言うの?」

「一つや二つならそれもありかと考えたんだけど……ちょっと数が多いんだよね。横領するのはまずいんじゃないかって」

「だったらどうするの? 場所を教えて掘り出させる?」

「それがベストだとは思うけど……問題は、どうやって化石があるのを知ったのか、それを説明するのが難しそうなんだよね」


 スキルの事は大っぴらにできないからね。どうしたものかと考えていたら、


「……(ゆう)()、化石が埋まってるのって、どの辺り?」

「うん? この下一メートル足らず……七十センチくらいかな。どうして?」

「ちょっと土魔法で探ってみようと思って。鉱石じゃないから探知はできないだろうけど、地中の構造とかなら土魔法でもわかるから」


 あぁ……異物とか不連続面を感知するのか。レーダーみたいな感じかな。


「……あった、これね。……ねぇ(ゆう)()、それっぽい石だけど、もっと浅い部分にもあるみたいよ?」

「――マジ?」

「えぇ、何か……化石が集まってる部分って、水平じゃなくて斜めに伸びてるみたい。地層がゆがんでるのかしらね」


 ……褶曲(しゅうきょく)とか断層とかいうやつかな? けど、だったらやりようはあるよね。地表近くに伸びている部分の石を、()(りん)の土魔法で少し風化させて、偶然出てきたように見せかければ……


「……あった。……これ、結構珍しいやつじゃないかな」



《対象物の品質は以下の通りです。

 【化石 不思議獣[ぱれおぱらどきしあ]の歯】 品質:中 貢献度:小

 マヨヒガに取り込みますか? はい/いいえ》



 取り込み画面では不思議獣ってなってるけど……パレオパラドキシアって確か、〝太古の不思議な獣〟っていう意味だったよね。……カッコいいし……ちょっと惜しくなってきたかな。


「あら、だったらそれはマヨヒガに取り込んで、他の化石を渡したら?」


 ……そうだね。化石は他にもあるみたいだし、何も全部渡す必要はないよね。



・・・・・・・・



 結局、良さそうな化石をこっそり取り込んだ後で、残りを博物館の人のところに持って行った。……何もわかってないふりをしてね。

 ちょっとした騒ぎになっちゃったけど、宗内先生を通して、ぼくたちが目立たないようにお願いしておいた。ナマケモノの騒ぎがあったばかりだから、職員の人も納得してくれたみたい。……ちょっとおかしな目で見られたけど。


 騒ぎが大きくならないうちにと早めに引き上げたんだけど、明日は敬老の日だし、こっちの銘菓みたいなのを、お祖父ちゃんお祖母ちゃんに送る事にした。()()(はる)()(しろ)()の両方ね。叔父さんは実家を出て一人暮らしだから、持って行ってもらうわけにもいかないし。

 ()(りん)もぼくを見習って、同じようにしたみたい。要領が良いって呆れられたけど……要領が良いのって、本来は呆れるような事じゃないよね?


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