第二十一章 生月市「テケテケ」伝説 3.出動
~Side 真凛~
優樹が富沢君から「テケテケ」(仮称)のうわさ話を仕入れた翌日の土曜日、あたしは優樹と電話で話していた。
「それで優樹、富沢君から連絡はあったの?」
昨日新聞部の源先輩から仕入れた情報は、「テケテケ」に関するものばかりだった。問題の妖怪がそれとは違って、足のない幽霊とかラミアみたいなものだとしたら、また心構えが違ってくるし。まずはそれを確認するのが先決よね。
『うん、夕べ。時間が遅かったから真凛ちゃんには電話しなかったけど』
……心づかいっていうのはわかるんだけど、新情報のさわりくらいメールしてくれたって、よさそうなものよね。こういうところに気が回らないのが、優樹の欠点なのよね。
……まぁ、もしメールされてたら、あたしの方が我慢できずに優樹に電話してたと思うけど……。それを考えたら、充分以上に気を回したっていうのが正しいのかしら。
「……それで? どういうタイプだったの?」
『うん、それがね――』
優樹の話してくれた内容は、あたしたちの予想の斜め上を行っていた。
「……クモのように手足が長くてしわくちゃの顔をした、赤ん坊かお婆さん? ……何それ?」
『だから……そういうのがユラユラと地面を這っていた――っていうのが、茂ちんが聞き込んだ話なんだって』
「ユラユラと這っていた――って、何か言い方がおかしくない? ……いえ、それより、赤ちゃんかお婆さん――っていうのはどういう事よ? 赤ちゃんとお婆さんじゃ、まるで真反対じゃない」
『生まれたばかりの赤ん坊はしわくちゃだっていう話だけどね。ただこの場合は、見かけたのが夜で、それも一瞬だけだからはっきりしないけど、お婆さんとは思えないくらい小さかったんだって』
「……赤ん坊くらいなの?」
『サイズは今一つ確信がないみたいだよ? で、気味が悪かったけど翌日に確かめに行ったら、何もなかったんだって。それで、気のせいかと思って黙ってたんだけど、それも何だか嫌だから話した――っていう事らしいよ』
ふぅん……要するに、何だか正体のわからない怪異が現れたって事じゃない。これはやっぱり行くしかないわね!
『真凜ちゃん、〝君子危うきに近寄らず〟――って、知ってる?』
「〝虎穴に入らずんば虎児を得ず〟――よ! 大体、新たな怪異が生まれようとしているのなら、見過ごすわけにはいかないじゃない?」
『それはまぁ、わかるんだけど……』
――優樹ってば、相変わらず腰が重いわね。素材を取り込む時には、多少怪しくても躊躇しないくせに。あたしたちの境遇的に、怪異を避けて通るわけにはいかないんだから、いいかげん腹をくくりなさいよ。
大丈夫、テケテケだろうが何だろうが、あたしが魔法と物理で蹴散らしてあげるから!
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~Side 優樹~
はぁ……結局は真凛に押し切られて、現場に出る事になっちゃったよ。
確かに真凛の言う事が正論なのはわかるけどさぁ……あえて地雷原に特攻するようなまねをするのはいかがなものか――って思っちゃうんだよね。
まったく真凛ったら……チートスキルでもアイテムでもなく、何を差し置いても拠点を選んだヒキコモリに、何ムチャ振りしてんだろうね。
……ま、真凛一人を行かせるわけにはいかないから、ぼくも同行するしかないわけだけどさぁ……
「……で、真凛ちゃん。来たはいいけど、真っ昼間からどうやってそのテケテケを探し出すつもり?」
パッと見た感じじゃ、どこもおかしなところはないよね?
「もちろん♪ あたしが何の策もなく来たと思ってもらっちゃ困るわね」
おぉ……自信満々の発言だ。
「あたしだって着実に進歩してるんだから。今日は探知系の新スキル、【魔力探知】と【生命力探知】のお披露目よ」
「……そんな魔法、あったっけ? 【魔道・天】が解禁されでもしたの?」
【魔力操作】か何かの応用かな――と思ったんだけど、真凛の答は意外にも――〝豈図らんや〟って言うんだっけ、こういう時――違っていた。
「残念だけど違うわ。これは【魔道・人】。【診察】スキルの発展形よ!」
「診察スキル……」
……うん、ちょっと驚いたよね。言われてみれば納得できるんだけど。
「ただ……【生命力探知】の方はともかく、【魔力探知】は充分にテストできてないのよね。魔力の流れから、ちゃんと発動できてるのはわかるんだけど……」
「あぁ……こっちの世界じゃ魔力を持つ者って、ぼくと真凛ちゃんぐらいだものね……」
……あれ? ……待てよ? だったらもしかして、数少ない【魔力探知】のテストの機会っていうのは……
「うん。優樹の居所ならちゃんとわかるわよ♪」
「うわぁ……」
……これって、何か不公平じゃないかな。ぼくにもカウンタースキルの一つぐらい生えてこないかなぁ……ブロードバンドジャミングとか。
「……まぁともかく、『テケテケ』か何か妖怪が隠れてても、魔力で見つける事ができるっ――て話だよね? じゃ、やってみてよ」
「任せて!」
真凛は自信満々で探知スキルを発動させたけど……一応ぼくも辺りに【鑑定】を使っておこうかな。今までの経験だと、取り込めるものがあったり危険な場所があったりすると、パッシブで発動してくれるみたいだけど……さすがに妖怪はどうなのかわからないしね……




