第二十章 ぼくらが枯れ竹の林に行った時の事~竹姫様~ 3.竹姫の竹林
~Side 優樹~
称明寺で棗さんから竹姫の話を聞いた翌日、ぼくと真凛は問題の竹林へやって来ていた。棗さんもそれを見越して、ぼくたちにこの話をしたんだろうな。人手不足だから、現地の写真だけでもありがたい――なんて言われたらねぇ。
けど……
「聞きしに勝る奇観だね」
「そうねぇ」
竹林には何度も入った事があるし、枯れた竹だって見た事はある。
けど――枯れた竹ばかりが林立している竹林というのは……
「……江戸時代か、ひょっとしたらそれ以前からこうなのよね?」
「棗さんの話だとね」
そこまで古い竹となると、とっくに朽ちてボロボロになってるはずなのに、
「……適当な時期に新しい竹が、最初から枯れた状態で生えてくる――だったかしら?」
「地元ではそう言われてるみたいだね」
どこまでも枯れた竹が立ち並んでいるばかりで、竹以外の植物は生えていない。
「開墾しようとした人もいたらしいけど、竹を伐るのはともかく、地面の方はそこら中に竹の根が張っていて、鍬も鋤も入らなかったみたいだよ」
「お荷物扱いされるのも道理よねぇ……」
「けど、そこまで竹が育ってたからこそ、堤防として成り立ってたんじゃないかな」
後になってそれに文句を付けるのも、ずいぶん身勝手な話だよね。
「……まぁ、それはいいわ。優樹、ここの竹は素材として使えそう?」
「うん、バッチリ」
屋代木の田舎で回収した竹よりも、品質はずっと上等なんだよね。大量にあるし、本当ならゴッソリ取り込んじゃいたいところなんだけど……
「後で調査が入るそうだから、あまり目立つようなまねもできないしね」
適当な間隔を置いて、何本かずつ目立たないように取り込んでいく。そこそこの広さがあるから、そんな程度でも結構な本数が確保できている。
「……ねぇ優樹……今更聞くのも何だけど、民家に竹ってそんなに使われてた?」
あー……歴史好きを自認してるだけに気になったかぁ……まぁ、無理もないよね。ぼくだって「マヨヒガ」のスキルを使って、初めて知ったくらいだもん。
「結構使われてるよ? 屋根の垂木とか土壁の木舞とか、天井や床に竹の簀の子を使う事もあるみたいだし。あとは連子窓とか」
「あ……そっか、なるほど……」
真凛てば少しくやしそうだけど、
「それより真凛ちゃん、周囲の警戒の方は大丈夫なんだよね? 真凛ちゃんが頼りなんだから、しっかりしてよ?」
明らかに曰く付きの場所である以上、それ相応の警戒は必要だからね。
ぼくもあらかじめ【立地鑑定】はかけてるけど、あれって警戒や索敵にはあんまり役に立たないからね。元々そのためのスキルじゃないし。
「大丈夫! 任せて!」
返答は良いんだけど……本当に大丈夫だよね?
・・・・・・・・
好いあんばいに竹材を回収していって、棗さんから頼まれてた写真も――ボロが出ないような場所を選んで――撮影し終えた頃、
「――! 優樹……」
「うん……ぼくも気が付いたよ」
真凛は警戒系のスキルで、ぼくは鑑定のスキルで……ほぼ同時にそれに気が付いた。
《対象物の品質は以下の通りです。
【筍】 品質:上 貢献度:中
マヨヒガの外構えとして取り込みますか? はい/いいえ》
「……何だか、かぐや姫が入っていそうな竹よね」
そこにあったのは小さな筍。枯れた竹ばかりのこの竹林で、明らかに……〝異彩を放っている〟――って言うんだっけ、こういう時。
「……どう見ても普通のタケノコじゃないわよね」
「間違いなく普通じゃないよ?」
タケノコにしては品質が高過ぎるし、何より、マヨヒガの外構えとして取り込める――っていうのが普通じゃないよね。
「あ……そうよね。取り込めるのは種子だけで、苗は取り込めなかったのよね」
「うん、そう」
そして……こういうものを見せられた時、ぼくが採る行動も決まってるよね?
「……で、当たり前のように取り込むわけね」
「当然だよ♪」
結局、ぼくらはその筍と竹材を収穫として、竹姫様の竹林を後にした。
・・・・・・・・
後になって聞いたところでは、調査の結果、竹姫の遺骨は見つからなかったけど、何らかの供儀がなされたらしい痕跡はあったそうだ。
学者さんたちは残念がってたそうだけど……ぼくたちはこれで良いと思ってる。
竹姫の竹は、マヨヒガがどうにかするんだろう。
これにて今回の更新は終幕となります。




