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ぼくたちのマヨヒガ  作者: 唖鳴蝉
第三部 五年生 二学期
71/125

第二十章 ぼくらが枯れ竹の林に行った時の事~竹姫様~ 3.竹姫の竹林

 ~Side 優樹~


 称明(しょうみょう)寺(じ)で棗(なつめ)さんから竹姫の話を聞いた翌日、ぼくと真(ま)凛(りん)は問題の竹林へやって来ていた。棗(なつめ)さんもそれを見越して、ぼくたちにこの話をしたんだろうな。人手不足だから、現地の写真だけでもありがたい――なんて言われたらねぇ。


 けど……


「聞きしに勝(まさ)る奇観だね」

「そうねぇ」


 竹林には何度も入った事があるし、枯れた竹だって見た事はある。


 けど――枯れた竹ばかりが林立している竹林というのは……


「……江戸時代か、ひょっとしたらそれ以前からこうなのよね?」

「棗(なつめ)さんの話だとね」


 そこまで古い竹となると、とっくに朽ちてボロボロになってるはずなのに、


「……適当な時期に新しい竹が、最初から枯れた状態で生えてくる――だったかしら?」

「地元ではそう言われてるみたいだね」


 どこまでも枯れた竹が立ち並んでいるばかりで、竹以外の植物は生えていない。


「開墾(かいこん)しようとした人もいたらしいけど、竹を伐るのはともかく、地面の方はそこら中に竹の根が張っていて、鍬(くわ)も鋤(すき)も入らなかったみたいだよ」

「お荷物扱いされるのも道理よねぇ……」

「けど、そこまで竹が育ってたからこそ、堤防として成り立ってたんじゃないかな」


 後になってそれに文句を付けるのも、ずいぶん身勝手な話だよね。


「……まぁ、それはいいわ。優(ゆう)樹(き)、ここの竹は素材として使えそう?」

「うん、バッチリ」


 屋(や)代(しろ)木(ぎ)の田舎で回収した竹よりも、品質はずっと上等なんだよね。大量にあるし、本当ならゴッソリ取り込んじゃいたいところなんだけど……


「後で調査が入るそうだから、あまり目立つようなまねもできないしね」


 適当な間隔を置いて、何本かずつ目立たないように取り込んでいく。そこそこの広さがあるから、そんな程度でも結構な本数が確保できている。


「……ねぇ優(ゆう)樹(き)……今更聞くのも何だけど、民家に竹ってそんなに使われてた?」


 あー……歴史好きを自認してるだけに気になったかぁ……まぁ、無理もないよね。ぼくだって「マヨヒガ」のスキルを使って、初めて知ったくらいだもん。


「結構使われてるよ? 屋根の垂(たる)木(き)とか土壁の木(こ)舞(まい)とか、天井や床に竹の簀(す)の子(こ)を使う事もあるみたいだし。あとは連(れん)子(じ)窓(まど)とか」

「あ……そっか、なるほど……」


 真(ま)凛(りん)てば少しくやしそうだけど、


「それより真(ま)凛(りん)ちゃん、周囲の警戒の方は大丈夫なんだよね? 真(ま)凛(りん)ちゃんが頼りなんだから、しっかりしてよ?」


 明らかに曰く付きの場所である以上、それ相応の警戒は必要だからね。

 ぼくもあらかじめ【立地鑑定】はかけてるけど、あれって警戒や索敵にはあんまり役に立たないからね。元々そのためのスキルじゃないし。


「大丈夫! 任せて!」


 返答は良いんだけど……本当に大丈夫だよね?



・・・・・・・・



 好いあんばいに竹材を回収していって、棗(なつめ)さんから頼まれてた写真も――ボロが出ないような場所を選んで――撮影し終えた頃、


「――! 優(ゆう)樹(き)……」

「うん……ぼくも気が付いたよ」


 真(ま)凛(りん)は警戒系のスキルで、ぼくは鑑定のスキルで……ほぼ同時にそれに気が付いた。



《対象物の品質は以下の通りです。

 【筍(たけのこ)】 品質:上 貢献度:中

 マヨヒガの外構えとして取り込みますか? はい/いいえ》



「……何だか、かぐや姫が入っていそうな竹よね」


 そこにあったのは小さな筍(たけのこ)。枯れた竹ばかりのこの竹林で、明らかに……〝異彩を放っている〟――って言うんだっけ、こういう時。


「……どう見ても普通のタケノコじゃないわよね」

「間違いなく普通じゃないよ?」


 タケノコにしては品質が高過ぎるし、何より、マヨヒガの外構えとして取り込める――っていうのが普通じゃないよね。


「あ……そうよね。取り込めるのは種子だけで、苗は取り込めなかったのよね」

「うん、そう」


 そして……こういうものを見せられた時、ぼくが採る行動も決まってるよね?


「……で、当たり前のように取り込むわけね」

「当然だよ♪」


 結局、ぼくらはその筍(たけのこ)と竹材を収穫として、竹姫様の竹林を後にした。



・・・・・・・・



 後になって聞いたところでは、調査の結果、竹姫の遺骨は見つからなかったけど、何らかの供儀(くぎ)がなされたらしい痕跡はあったそうだ。


 学者さんたちは残念がってたそうだけど……ぼくたちはこれで良いと思ってる。


 竹姫の竹は、マヨヒガがどうにかするんだろう。

これにて今回の更新は終幕となります。

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