第十八章 消えた七不思議 2.教師からの情報
~Side 優樹~
「……ねぇ優樹、勢いに飲まれてOKしちゃったけど、あれでよかったの? 何だか丸め込まれたような気がするんだけど……」
新聞部の部室を出た後に、複雑そうな表情で真凛が聞いてきたけど、
「副部長さんの本音は、ぼくたちを使う事による責任回避だろうね。ぼくたちに調べさせているんだから、質問もコメントもぼくたちの方に――っていうところかな」
「何それ、馬鹿にしてるわね。……優樹はそれでよかったの?」
「ぼくたちにも一応メリットのある話だからね。どっちみちこれからも怪異とかの調査は続けるんだし、そのための大義名分をくれたと考えると、悪い話じゃないよ?」
「それは……そう言えばそうね……」
「あと、副部長さんだけど……割と本気でこのネタに興味があったみたいな気がしなかった?」
「あ、それ。あたしも思った。……なのに優樹の話だと、責任回避に押し付けただけ――みたいに言ってたから、ちょっと混乱してたんだけど」
「多分だけど、両方とも本音なんじゃないかな。怪異に興味があるのも本当だけど、新聞部副部長という立場ではうかつに手を出すわけにはいかなくて、なのに外野から突っ込まれるのも不愉快だ――ってところだと思う」
「……そういうの、優樹はよく想像できるわよね?」
「ミステリ小説とかじゃ基本だよ?」
ああいう小説の登場人物って、本音を隠してるのがデフォルトだしね。
「で、これからどうするつもり? 優樹」
「地元の昔の話を調べるんなら、年長者に訊くのが一番じゃないかな」
「お祖父ちゃんに話を訊くの? でも、お祖父ちゃんが住んでた場所は、こことは結構離れてるわよ?」
話を訊きに行った時にも、ここの怪談は出なかったしね。まぁ、ぼくたちが通ってる学校だから、気をつかって話さなかったという可能性もあるわけだけど。
「ないない、あの勝三お祖父ちゃんに、そんなデリカシーはないわよ」
ひどい言いぐさだなぁ……。大人って、結構気をつかってるものなんだよ?
「まぁ、どのみち勝三さんにはもう一度話を訊きに行かなきゃだけど、もっと手近に訊くべき相手がいるじゃない」
「……学校内に?」
「うん。昔の村とかの話を訊くんなら、まず社会科の先生のところへ行くのが定番じゃないかな」
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~Side 楠教諭(社会科)~
噂の鳥楽・来住野コンビが何の用で来たのかと思えば……学校七不思議の調査とはねぇ……。新聞部に頼まれたそうだが……自由研究の妖怪調査が原因だろうな。理系気質の鳥楽と、歴女候補の来住野が、上手くタッグを組んだようだが……
この二人もなぁ……問題児っていうほどじゃないんだが、色々と周りから浮いてるからなぁ……。イジメとかの対象にはなってないのが幸いだが。
しかし……怪談の事を俺に訊かれてもなぁ……社会科の範疇を越えてるだろうが。
「悪いが、先生の家もそこまでの旧家ってわけじゃないからな。ただ……この学校に赴任してからこっち、いわゆる『学校の怪談』っていうのは、聞いた事が無いな。お前たちが話してくれた怪談も初耳だ」
「そうですか……」
……がっかりさせちまったようだな。
「ただな……これはこの学校の話じゃないし、しっかりと裏を取った話でもない、いわゆる噂話程度のもんなんだが……そもそも学校とか大きな公園とかは、最初から広い敷地が必要なわけだ。しかし行政側としても、学校とか公園とかを建てるために、そうそう立ち退きの勧告だの手続きだのはしてられん――って事でな」
「……何かあるんですか?」
「まぁ……さっきも言ったように噂話だ。……そういう広い敷地ってのは、最初からあまり人が住んでない……というか、利用されてなくて利権関係が無いとか少ないような場所を選んで建てられるって話だ。……で、だ。……そういう場所が何で利用されてないかっていうと……」
「……何かワケありの場所だっていう事ですか?」
「まぁ、ワケありっていうか……墓地だとか、戦災跡地だとか、そういう場所が選ばれ易いって聞いた事はある。……怪談が生まれる下地はあるんだって話だな」
七不思議の話とはちと違うが、少しは教師の威厳ってやつも守れたか?
……そう言えば……大学時代の先輩に、その手の話に詳しいのがいたな。都合の好い事に、ここの市役所に就職してたはずだ。
……アポイントを取って訪ねるように言っておくか。俺の名刺を渡しておいて、事前にこっちから一報入れておけば、そうそう冷淡な対応はしないだろう。




