第二章 少しだけ変わったぼくたちの日常 1.或る夜の出来事
~Side 真凜~
マヨヒガから帰った夜の事、色々あり過ぎて少しぼうっとしてたのをお母さんに心配されたけど、長めにジョギングしてて疲れたんだとごまかした。馬鹿正直にカミングアウトなんかできないもの。〝魔法をもらったけど、使えないので凹んでます〟――だなんて。
「あ~あ、真凜無双伝説の始まりだって思ったんだけどなぁ」
……優樹ってば、人の事を残念そうな目で見てくれて……感動ってものが薄いのよ、あの子。人の決断にもうるさく文句をつけてくるし。分別臭いって言うか、年寄り臭いって言うか。……加齢臭の事じゃなくて。
「……でも……マヨヒガの時には、悩む間もなく決断してたわよね……」
自分の事だと面白第一なのかしら。注意しておかなくちゃ。それにしても……
「あ~あ……メッセージウィンドウが出るくらいなら、せめてステータス画面ぐらい見れるようにしといてほしいわよね」
万十山で色々試してみたんだけど、魔法はおろかステータス画面すら出なかった。スクロールはファンタジーっぽく消えたくせに……インチキだわ、こんなの。……せめてステータス画面が……
「閲覧とかできたら……え、えぇ――むぐっ――」
あたしは思わず口を押さえた。大声上げてお母さんとかに聞こえたら……何より部屋に入って来られて、目の前のウィンドウを見られたりしたらまずい。とってもまずい。何しろ……
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名前:来住野 真凜
種族:人間
性別:女
年齢:十一
魔 力:18/19
生命力:21/32
筋力値:21
防御値:10
敏捷値:13
器用値:10
知力値:13
能 力:【魔道・天】【魔道・地】【魔道・人】【空手】【合気道】
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……この数字って、高いのかしら低いのかしら。とりあえず、魔力があるのは確かみたいなんだけど。……あ……数字をじっと眺めてたら、ヘルプ画面がポップした。視線入力ってやつ?
……へぇ……う~ん……つまり、あたしの魔力値はそこそこ高いけど、まだ魔法を使うには足りてないってわけね。
……これはもう、トレーニングしかないわよね。魔力を増やして今度こそ、「来住野真凜無双伝説」の開幕よ! 問題は魔力の増やし方がわからない点なんだけど……へぇ……おおむねラノベのとおりってわけね。今夜からでもこれをやって……っと! いけない! メッセージウィンドウが開いたままじゃない。これってどうやったら消える……あ……消えた……
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「う~ん……ステータス画面を見るには、〝ステータス〟じゃなくて〝閲覧〟って言わなきゃ駄目なのかぁ……日本語じゃないと受け付けないって事なのかしら?」
まぁ、それはそれとして、他人のいるところで開くのは――なしよね。万一見られたら、シャレにならないし。……優樹のメッセージウィンドウは、あたしには見れなかったけど、あれがデフォルトの設定なのかどうかはわからないし。
ひょっとして、R15制限とかで、子供だと他人のステータスは見れない仕様なのかもしれないし……こんな事を考えるなんて、あたしも優樹に毒されてきたかな?
「まぁ、これは明日にでも優樹に相談……って……いっけない、ステータス画面の事を教えておかないと」
スマホのアドレスは交換したし……まだ寝てないわよね?