表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくたちのマヨヒガ  作者: 唖鳴蝉
第二部 五年生 夏休み
58/125

第十七章 ぼくらが原っぱへ行った時の事 2.転職した案山子

 ~Side 優樹~


「――(ゆう)()ってば!?」


 ()(りん)が何か言ってるけど……ちょっと待って。今は手早く作業を進めないと……よし!


「……取り込んじゃったの? 案山子(かかし)


 そりゃあね。目の前にこんなウィンドウが出て来たんだもん。



《対象物の品質は以下の通りです。

 【案山子(かかし)】 品質:上 貢献度:大

 マヨヒガに取り込みますか? はい/いいえ》



 何たって〝貢献度:大〟だよ? 大! 見過ごせるわけがないよ!


 普段のぼくなら即行で取り込むところなんだけど、今回はちょっと、所有権とかも考えなきゃいけなかったしね。

 けど、元・田んぼから引き抜かれて、結構長い間放って置かれてるみたいだったし。取り込んじゃっても問題ないかなって思って。

 そうなると、次に気にするべきなのは人目だよね。誰か(もくげきしゃ)が来ないうちに素早く取り込む必要があったし。()(りん)への返答が遅れたのは、悪いと思ってるけど。


「……え? 『素材』でも『外部素材』でも『外構え』でもないの? お地蔵様やお(ふだ)と一緒なのかしら? でも……マヨヒガには田んぼもないのに、案山子(かかし)なんか取り込んでどうするのよ? ……いえ待って……案山子(かかし)があれば田んぼを作れるのかしら……?」


 うん、()(りん)も混乱してるね。けど……


「……案山子(かかし)って、元々は『久延毘古(くえびこ)』って神様の事だっていう話もあるのよね。歩けないけど天下の事を何でも知っている神様なんだって。……だったら、マヨヒガにお迎えしてもおかしくないのかしら……」


 お迎えした事自体は反対しないみたいだね。


 ことわざにも〝終わり良ければすべて良し〟って言うし、〝これにて一件落着〟――だよね。



・・・・・・・・



 そのまま道なりに進んで来たら、道路が不自然にカーブしている場所に出た。どう見てもただの原っぱだし、遠まわりする理由が見当たらないんだけど……


「……多分、ここね。〝道路を造る時に、(さい)(はる)を避けて通した〟――って、お祖父(じい)ちゃんが言ってたし」

(たた)りか何かあったのかな? 工事の人が事故死したとか」

「さぁ……けど、お祖父(じい)ちゃんがしつこく言ってたわね。〝原っぱの中に足を踏み入れるな、入っても浅いところまでにしろ〟――って」


 ……やっぱり、(たた)りか何かあるのかなぁ……。けど――


「素材として草を回収するなら、目に見える場所で採るわけにはいかないよ? 少しくらいは中に入らないと」


 思ってたより草丈が高いから、ちょっと分け入っただけで、ぼくたちの姿を隠してくれるだろうけど。


「素材としては使えそうなの?」

「うん、上等」



《対象物の品質は以下の通りです。

 【草】 品質:中 貢献度:中

 マヨヒガの素材として取り込みますか? はい/いいえ》



「だったらさっさと取り込みましょう。あたしは見張ってるわ」

「え~と……自転車もあるし、()(りん)ちゃんは外にいるんだよね?」

「そのつもりだけど?」


 ……うん……自転車が二台あって子供が一人しかいないのが、どう見えるか。……ぼくが草むらで用を足しに行った――って風に見えるよね。

 ……少し思うところはあるけど……まぁいいか。



 草むらに入って適当に草を取り込んでいく。上等の素材が採り放題なのに浮かれて、少し奥まで踏み込んじゃったけど……


(ゆう)()!」


 ……あれ?


()(りん)ちゃん、どうしたのさ? 見張りは?」

「はぁ? 何言ってるのよ、あなたが呼んだんじゃない」

「ぼく?」


 ……そんな憶えはないけど……


「……まぁいいわ。もう充分な量を確保できたでしょうし、そろそろ引き上げましょう」

「……そうだね」


 何となく嫌な予感がしたから、二人で引き上げようとしたんだけど……


「……(ゆう)()……出口はどっち……?」

「え? ()(りん)ちゃんが来た方でしょ?」

「……わからないのよ、それが……」

「え? 草の踏み跡とかは?」

「――ないのよ!」

「えぇっ!?」


 慌てて周りを見まわしたんだけど……一面の草の海で、どっちに何があるのかさえ見えなかった。……それどころか、ぼくが取り込んだために草がなくなっていたはずの場所も、どこにも見当たらなかった……


「……ゆ、(ゆう)()……」

「『(さい)(はる)』って……こういう意味かぁ……」


 確か「塞」っていう字には、道を(さえぎ)るとか断ち切るとかいう意味があった。……踏み込んだ者を迷わせて、目指す方向に進めなくするのか……


「……ど……どうする? どうしたらいいの?」

「落ち着いてよ()(りん)ちゃん。魔法で方向とかわからないの?」

「あ……そ、そうね。やってみる」


 ()(りん)は探知系の魔法を使ったみたいだけど、何かが邪魔をしてるらしくって、方向をつかむ事ができなかった。


「……ど、どうしよう……」

「……待って! ()(りん)ちゃん! あそこ!」

「え? あ、人がいる!」


 ――農家のおじさんらしい人影が、こっちに向かって手を振っていた。 


「……どうする?」

「……ここにいても仕方がないんだし……行ってみよう」

「そ、そうよね。……人間相手なら魔法も通じるだろうし……」


 内心で少しビクビクしながら、その人影が案内してくれる方向に進んだんだけど……


「――出れた!」


 無事に原っぱの外に出る事ができた。

 そして……道案内してくれたはずの人は、影も形もなかった。


「……ねぇ(ゆう)()……さっきの『人』だけど……」

「うん……服装が『案山子(かかし)』にそっくりだったよね。さっき取り込んだ」

「……やっぱりそうよね……」


 ……これって、そういう事なんだろうか?


 田んぼを見守っていた案山子(かかし)……案山子(かかし)様が、今度はぼくたちを見守ってくれるって事なのかな?

今回で夏休み篇は終了。次回からは第三部、二学期の話になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 54話で案山子様を迎えたと書いてましたがこの話の案山子だとすると時系列おかしくないですか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ