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ぼくたちのマヨヒガ  作者: 唖鳴蝉
第一部 五年生 一学期
5/118

第一章 ぼくたちが迷い家に出会った日 5.迷い家(その3)

 ~Side 優樹~ 


《マヨヒガを選んだ場合、保有者の魔力に合わせて新たに建築する必要があるため、竣工までに時間がかかります。また、初期状態では現在の(まよ)()より、容積や設備の面で劣ります。更に、現在の(まよ)()にあるものを持ち帰る事はできません。それでもマヨヒガを選びますか? はい/いいえ》



 ぼくはためらう事なく「はい」を押した。当然だよね?


「……ちょっと(ゆう)()……今のアクションって、ひょっとして……」

「うん。マヨヒガを選べるみたいだったから、選んじゃった」

「はぁ!? 何なのよそれ!?」


 呆れたように叫ぶ()(りん)に、ぼくはウィンドウの説明文について話してやった。


「……ここの『(まよ)()』より性能は劣るのよね?」

「だけど説明文には〝初期状態〟って書いてあったし。わざわざ〝初期状態〟って書くからには、今後バージョンアップとか強化が可能って事だろうし」

「……それもそうね。……けど、バージョンアップにどれだけ時間がかかるか、わからないわよ?」

「う……それを言われると……けど、その場合でもマヨヒガが増えるのは確かなんだよね? それはそれで面白いじゃない?」


 どうせ棚ボタのあぶく(ぜに)みたいなもんだし、生涯かけて楽しめる盆栽みたいなもんだと思えば……


「……(ゆう)()ってば、他人の事はうるさく注意するくせに、自分の事だとノリと勢いで決めちゃうのよね」

「我が身を省みず、他人の安全と幸せに気を配ってるんだよ?」



・・・・・・・・



 その後で(まよ)()を出ると、またすごい霧が立ちこめて……霧が晴れたと思ったら、ぼくは元の散歩道にいた。ちなみに()(りん)も一緒だった。


「……夢……じゃ、ないわよね……?」

()(りん)ちゃん、まだ巻物持ってるじゃない。どうすんのさ、それ?」

「え、え~と……どうしよっか……」

「……この山の上の方なら人も来ないし。そこで試してみたら? ラノベのスキルスクロールみたいに、光って消えちゃうのかどうか」

「そ、そうね……」



・・・・・・・・



 結論から言うと、()(りん)がもらったのは本当に魔法のスキルスクロールだったみたいだ。……少なくとも、それっぽいと言うか。

 広げるとぼんやり光を放って、その光が()(りん)に吸い込まれるように消えた。


「……でさ、魔法、使えるようになったわけ?」

「え、えぇと……よくわかんないけど……」


 ()(りん)はあれこれ試してたみたいだけど、魔法を使う事はできなかった。ラノベでは定番のステータスも、見る事ができなかったみたいだしね。すっかりしょげてる。


「まぁ……そもそも魔力とかって、今まで意識した事なかったしね。それがわかるようになるまで、魔法は使えないとかじゃないの?」

「……何か、だまされたような気がする……」

「正しい処置だと思うよ? 魔法の使い方もおぼつかない子供が、いきなり大魔法を使おうなんてしたら……」

「……大惨事、間違い無しね……」

「だろ? やっぱり地道な練習から始めるべきなんだよ」

「あ~あ……チートで無双な人生はなしかぁ」

「〝千里の道も一歩から〟――って言うしね」



 ――こんな風にして、ぼくたちとマヨヒガの冒険が幕を開けた。

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