第十一章 ぼくたちのキャンプリゾート 2.思いがけない出会い(その2)
~Side 真凜~
驚いたあたしが何か言う前に、あの子が素早く先制したけど……〝来住野さん〟ねぇ……。いつもは名前呼びなのに、改まってそう呼ばれると変な感じよね。
けど、あたしたちがしょっちゅういっしょに行動してるって事は知られない方が良いだろうし、ここは優樹の策に乗っておいた方が良いわよね。
「うん、鳥遊君も?」
……我ながら空々しいわよね。
「真凜、お友だち?」
「うん、同じクラスの鳥遊君」
そう紹介すると、お母さんとお父さんは優樹のご両親に向かって軽く頭を下げて、型どおりのあいさつを始めた。
「まぁ、それはそれは……真凜の母でございます」
「父親です。鳥遊さんもキャンプですか?」
当然、優樹のご両親も、同じようにあいさつと自己紹介を始めた。
「えぇ。うちは家内ともども、大学のワンゲル部にいたもので。……ご挨拶が遅れました、優樹の父親です」
「優樹の母でございます。今後ともよろしくお付き合い下さいませ」
それからは、何か話が長くなりそうだったから、その隙にあたしはさりげなく優樹に近付いて、
(「優樹、あなたもここだったの?」)
(「うん。家から近い割に自然がいっぱいだから。前にも何回か来てるんだよ、ここ。真凜ちゃんは?」)
(「あたしは初めてね。親は来た事があるのかもしれないけど」)
(「……あの様子だと、いっしょに行動する流れになりそうだね」)
(「そうね。けど、ある意味で好都合じゃない?」)
(「ま、ね」)
――そう、先々の事を考えると、色々と好都合には違いないわよね。
********
~NoーSide~
「真凛ちゃん! ナイスアシスト!」
「ふっふ~ん♪ どうって事ないわよ、これぐらい」
魔法で水を操り、優樹が狙っていた小魚を見事に網の中に追い込んだ真凛。そんな彼女に対して優樹が歓喜混じりの感謝の言葉を述べる。
ここを訪れる度に狙っていたが、警戒心が強い上に素捷く、捕らえる事ができなかったのである。そんな小魚を遂に捕らえたという事で、優樹のテンションは爆上がりしており、そのアシストを務めた真凛への感謝も同じく爆上がりしていた。
そして、そんな様子の二人を遠くから、好もしく見つめる四対八個の眼があった。
「まぁ……もうすっかり打ち解けた様子だこと」
「本当に、微笑ましいですわね」
ハハハ、ウフフと品良く微笑む親たちであったが、その心情心底は一致していた。
((あの跳ねっ返りの娘にボーイフレンドが……))
((あの虫オタクの息子にガールフレンドが……))
我が子が良い子である事は微塵も疑っていないものの、少しばかり周囲から浮いているのも事実。イジメの対象にはなっていないようだが、今のままでは異性の友人などできるのか――と、密かに心配していた親たちにとって、この日の出会い――註.親たち視点――は千載一遇の好機としか思えなかった。
結果として、四名二組のそれぞれが、この縁を逃してはならじと意気込む事になっていた。
尤も、そんな親たちの思惑は思惑として、子供二人の方はと言えば、〝これで自分たちが顔を合わせる口実ができた〟――などと内心で北叟笑んでいたりするのだが。
ともあれ、この日の出会いは優樹と真凛の二人にとっても、奇貨となすべきものとなった。
明日もこの時間に更新の予定です。




