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ぼくたちのマヨヒガ  作者: 唖鳴蝉
第一部 五年生 一学期
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第十章 ぼくたちの自由研究計画 2.優樹の提案

 ~Side 優樹~


 ()(りん)が夏休みの自由研究の事で悩んでたから、アサガオを使った治癒魔法の検証を提案してみたんだけど……これって、実は一つ二つ問題があるんだよね。


 問題の一つは、魔法の効果でアサガオの成長が良くなり過ぎた場合にどう誤魔化すかって事なんだけど……肥料をやり過ぎたとか言って誤魔化すしかないと思う。どうせ比較のために複数のアサガオを育てるわけだから、魔法をかけたアサガオの事を肥料を与えたアサガオだって言い張れば……多分何とかなると思う。ネットで調べた知識だと、肥料を与え過ぎたアサガオは開花が遅れるって書いてあった。

 実は、これが二つ目の問題とも関わってくるんだけど……


「日にちが足りない?」

「うん。調べたところだと、アサガオが芽を出して花を咲かせるまでには、大体四十日くらいかかるみたいなんだよね。けど、夏休みは二十四日に始まって、八月の二十日に終わるから……」

「あぁ……大体三十日しかないから、順調にいっても花が咲くかどうか、微妙なわけね」


 ぼくが提案した実験の一つは、治癒魔法――【手当】だっけ?――をかけられたアサガオがちゃんと花を付けるかどうか……専門用語だと、花芽の分化が正常に進むかどうかを確かめる事なのに、それが夏休み中に終わらない可能性があるんだ。毎日魔法をかけ続けるのは難しいかもしれないから、つぼみができ始めたところで魔法をかける事を提案したんだけど……


「別に構わなくない? 夏休みが終わったからと言って、アサガオを引っこ抜くわけじゃないんだし」

「まぁ、それはそうなんだけど……そうすると()(りん)ちゃんの自由研究が未完成って事になって、少し見劣りがするかなって」

「あ……それがあるわけね」

「逆に言えば、未完成を理由に提出しないですむわけだから、実験結果によっては都合がいいとも言えるんだけど」


 面倒な結果になった場合、レポートを誤魔化すのに苦労しそうな気もするしね。


「? 魔法をかけた方については、何も書かなければいいんじゃないの?」


 それも一つの、しかも一番簡単な方法だけどさぁ……


「そうすると()(りん)ちゃんの自由研究は、単純なアサガオの観察日記って事になっちゃうよ? それこそ一年生と同じ程度の」

「……それはちょっと嫌かも……」

「だろ? 実験区と対照区の比較……表向きで言えば、例えば肥料を与えた分と与えなかった分の成長を較べるって事にしておけば、これは立派な実験結果になるんだけど」

「治癒魔法を肥料扱いするわけね?」

「成長を良くするっていうのなら、似たようなもんじゃない? ――で、万一成長が促進されたら、充分以上の濃度で与えた事にして、成長促進の効果がなかったら濃度が薄かった事にすればいいし」

「……逆に、成長が抑えられたらどうするのよ?」

「その場合は、何もしなかった方を肥料を与えた事にして、成長が阻害された方は、栄養分をまったく与えなかった――って言い張ればいいかなって」

「……完全に先生をだまくらかすわけね……?」

「うん。だから、それが嫌なら開花に間に合わなかったっていう理由で提出しないという選択肢もあるんだけど……そうすると……」

「あたしの自由研究がなくなっちゃうわけかぁ……」

「逆に、今から早めに(たね)をまいておけば、ギリギリで開花に間に合うかもしれないけど……それでも花が咲き始める頃にしかならないんだよね」


 ()(りん)はしばらく考えてたけど、


「まず、学校への提出については後で考えるとして……治癒魔法の検証という点からみると、アサガオの観察っていうのは丁度好い口実よね? だったら、ここでやらないという手はないと思う」

「提出の事は後で考えるわけ?」

「えぇ。どういう結果になるかわからない以上、ここで議論してもどうにもならないし。もしも成長が良過ぎるって結果になった場合は、そのまま提出できるわけよね?」

「誤魔化す必要はあるけどね」

「で、万一まずい結果になっても、未完成という口実で提出を避けられるか、何もしなかった方だけを提出すれば、最低限の課題はクリアーできる。……問題はないと思うわ」


 ()(りん)がそれでいいならいいけどさぁ……あ、そうだ。


「だったら()(りん)ちゃん、調べる内容をもう一つ追加しておく? 追加って言っても簡単だから、大した手間はかからないよ?」

「……何?」

「うん。アサガオのつるが右巻きか左巻きかを調べるだけ」


 そういう事を書いた本があったんだよね。


「ついでに、他のあちこちで見つけたものについても、右か左かを記録しておいてさ、()(りん)ちゃんは栄養状態とかが巻き方に影響するかどうかを調べた――ってしておけば、別に問題はないと思う」

「……よさそうね……」

「それに、夏休み中に他に面白そうなネタにぶつかるかもしれないしね。そういう場合のまとめ方については、ぼくが教えられると思う」


 ぼくは大体そういう風にして、その年その年に見つけたネタを提出してるしね。

今回の更新はこれで終わりです。と同時に、今回で第一部が終了し、来月からは第二部・夏休み篇が始まります。或る意味で第二部からが本番みたいなものなので、(少しだけ)ご期待下さい。

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