第九章 ぼくらが河原に通うわけ 2.ぼくらがゴミ拾いをやったわけ
~Side 優樹~
いくつかの候補地を見てまわって、ここなら好いんじゃないかという場所を決めたのは、もうお昼を過ぎた頃だった。持って行ったパンとスポーツ飲料で済ませたけどね。
「けど……河原って、思っていたよりゴミがあるのね」
――それはぼくも思った。何かこう、もっと自然あふれるって感じのイメージだったんだけど……市街地近郊の河原だと、こんなものなのかもしれないなぁ……
けど……
「空き缶とかガラスとかは、ぼくにとっては資源だからね」
「回収するつもり?」
「当然。貢献度は低いけど、〝塵も積もれば山となる〟――って言うしね。見過ごすわけにはいかないよ」
「流木とかも結構あるわね」
「あっちは去年の大雨のなごりじゃないかな」
流木とか枯れ草とかが、岩の間に引っかかってる。流木もそうだけど、枯れ草もマヨヒガの資材になるみたいだ。タタミのイ草の代わりとかなのかな? ……いや……それよりも、ワラの代わりに刻んで壁土の材料――っていう方がありそうだな。どっちも去年の分だけあって品質は低いけど……これって……今年流れて来る分を回収すれば、もっと良い資材が手に入るって事だよね。
「優樹――ほら見て、自転車があるわよ」
真凜が指さした方を見ると、古い自転車が岩の間に引っかかっていた。もう錆びだらけでベコベコに凹んでるし、どう見てもゴミでしかないけれど、それでも金属資源には違いない。品質は低いけど、大きい分だけ貢献度もそれなりだし。
「真凜ちゃん、だれも見ていない? 突堤の上とか、橋の上とか?」
「え? ……岸にはこっちを見てる人はいないみたいだけど……橋はここから遠いし、大丈夫だと思うけど……」
「OK、そのまま見張ってて」
真凜に見張らせておいて、隙を見て自転車を取り込む。大丈夫、これはゴミだから。泥棒とか遺失物横領とかにはならないし。……ならないよね?
タイヤは取り込めずに残っちゃうけど、これは仕方がないよね?
「あたしてっきり、河原の石を取り込むのかと思ってたわ」
「どうせ取り込むんなら、こういうチマチマしたのじゃなくて、大きな石を取り込みたいじゃない? けど、あまりハデにやるとバレるかなっていうのが……」
少しだけなら石も回収するつもりだけど、そもそも民家の建材としては、石はそれほど使わないみたいだし……あんまり大量に取り込む必要もなさそうなんだよね。石垣とかに使わない限りは――だけど。
まぁ、取り込みの射程を伸ばす訓練とかもしたいし、あまり大きくないのをいくつかは取り込むつもりだけど。
「ねぇ……流木はともかくとして、水の中に沈んでる石なら、取り込んじゃってもわかんないんじゃない?」
……真凛も段々毒されてきたなぁ……
「……名案だけど……あまりハデにやるのはまずいと思うんだ」
「あら? バレなければ大丈夫じゃないの?」
正直、そういう気がしないでもないけど……まだ甘いよね、真凛は。
「水中の石だと魚のすみかになってる事が考えられるから、それを取ったりすると釣り師さんに気付かれて、通報されちゃうよ?」
河原とかで石を取るのが禁止されてるのも、生き物の生息環境に影響するのが問題みたいだしね。
……けど、本来川の構成要素でない流木とか枯れ草とかは、拾って行ってもお咎めなしみたいだから、こっちはせっせと回収していくけどね。
「……ねぇ優樹、思ったんだけど……必要ないゴミをいくつか持ち帰って、清掃活動をアピールするっていうのはどう? 遠足の時にやったみたいに」
「……河原に来る理由付けの事だよね? 得点かせぎとかじゃなくって?」
「当然よ。どう思う?」
う~ん……悪くはないと思うけど……
「……やっぱりいくつか問題があるかな。最大の問題は、それだと同じ場所に留まる理由が付かないって事じゃないかな」
「あぁ……訓練にはここが最適だけど、ゴミ拾いっていうなら、他の場所に移動しないと不自然なのね……」
「うん、そう。先生とか大人たちのウケは良さそうだけど、やっぱり目立つんじゃないかな? ……あと、始めちゃうと途中で止めにくくならない?」
「あぁ……ばんば山に戻りにくくなるかもしれないわけね」
捨てるには惜しい口実のような気もするけどね。
これにて今月の更新は終わりです。




