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ぼくたちのマヨヒガ  作者: 唖鳴蝉
第一部 五年生 一学期
34/118

幕  間 プール開きを前にしたぼくたちの相談

幕間劇なので、少し時間軸が前後しています。

「ねぇ(ゆう)()、明日はプール開きよね?」


 すっかり恒例となったばんば山での魔法訓練の後で()(りん)がそんな事を聞いてきたのは、六月最後の日曜日の事だった。


 女の子からプールの話を持ちかけられたりっていうと、ラノベなんかでは甘酸っぱい展開が定番なんだろうけど……現実にはそんな事はない。この時も()(りん)が何を考えているのか、ぼくにはちゃんとわかっていた。


「……プールで水魔法の練習をするつもり? ()(りん)ちゃん」


 彼女の答えは予想どおり、


「だって、あんなに大量の水があるのよ? 水魔法使いとしては見過ごせないじゃない?」


 ――と、いうものだった。

 まぁ、()(りん)の言う事もわかるんだけどね。川で水の流れをせき止める訓練はしているけど、流水でなく大量に貯まった水というのは、また勝手が違うだろうし。

 ……だからと言って、賛成できるかどうかはまた別の話だ。


「泳ぐ時に水魔法でズルをしよう――っていうんじゃないよね?」

「当たり前でしょ。あたしちゃんと泳げるもの」


 ……ぼくも一応は泳げるけど……水魔法で楽ができるんなら、そっちの方が良いような気もする。……まぁ、授業で使うのはアンフェアだとも思うけど。


「――だったら、やるとしたら自由行動の時間になるよね。他の生徒もいるわけだから、やれそうなのは……プールの水の動きを水魔法で把握あるいはコントロールできるかどうか、それを確かめるぐらいじゃない?」

「……そう……なるかしら」


 他の生徒だっているわけだから、授業中のプールで魔法の練習なんか、できるわけがないよね。それくらいなら、別にプールでやる必要もないんじゃない?


「万一の事を考えると、それだって賛成できないんだけどね」

「万一の事……って、何よ?」

「魔法を使っている事に気付かれないか――って事だよ」

「はぁ? どうして気付かれるのよ? ……他に魔法を使える者がいるって事?」


 その可能性もないわけじゃないけどね。


「魔法を使えなくても、勘の良い子が混じってるかもしれないじゃない? それでなくても、何かおかしいと思われたら、先々面倒な事になるかもしれないし」

「う~ん……その可能性もある……かなぁ……」


 ()(りん)は半信半疑ってとこだけど、


()(りん)ちゃんが疑われないように振る舞えるんなら、ぼくも反対はしないけどさ。普通にはしゃいだ状態で、魔法を使ったりできる?」

「う……難しいかも……」

「だったら、やめておいた方が良いと思う。安全第一だよ、()(りん)ちゃん」


 そう言うと、()(りん)はしぶしぶながら納得してくれたみたいだった。けど、ここはもう一押ししておくべきだろう。


「大量の水を操る場面って、ラノベでもあんまり出てこなかったじゃない? こっちでも、大量の水がある場所で戦端を開く事って、そうそうないんじゃないかな?」


 水魔法使いとしては興味があるんだろうけど、急いで確認したり身に着けたりすべき魔法ではないんじゃないかな。


「夏休みに海とか池とかに行った時にでも、試す機会はあるんじゃない?」


 それか、顔見知りがいないプールとかね。

明日もこの時刻に更新します。

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