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ぼくたちのマヨヒガ  作者: 唖鳴蝉
第一部 五年生 一学期
32/118

第八章 ぼくらと白骨死体とその顛末 3.ばんば山での訓練自粛を考えた事

 ~Side 優樹~


 警察に報せた次の日、つまり昨日の夕方には、ローカルニュースでばんば山の白骨死体の事が流れた。下校中に()(りん)とその事を話してるんだけど、()(りん)の魔法は上手くいったみたいで、ぼくらのところへ訊き込みに来る刑事とかはいなかった。……十中八九、通報者が女子だとは思わなかったんじゃないかな? ぼくが聞いても、くたびれた小父さんの声にしか思えなかったし。凄いな、風魔法。

 【(へん)(じょう)】の術って言うみたいだけど。……本当に風魔法でいいのかな? 音は空気の振動だっていうし、空気の動きを取り扱う魔法が風魔法っていうのなら、別におかしくはないのかな?


 まぁ、その辺は()(りん)に任せよう。それより問題なのは、


「しばらくの間は近寄らない方が良いだろうね、ばんば山」

「……やっぱりそう思う?」

「事件性があるんなら、警察が網を張ってるかもしれないしね。堂々とニュースで流れてたのを見ると、犯罪性はないと思うけど……野次馬が来てるかもしれないし。……ぼくたちも野次馬のふりをして、様子見に行くっていう手もあるけどね」

「う~ん……」


 ()(りん)と話し合った結果、何週間かは近寄らない方が無難だろうという事になった。

 そうなると問題は……


「ばんば山以外の訓練場……っていう事になるよね」

「もしくは、トレーニングの内容や方法を変えるかよね」

()(りん)ちゃんはそれでいいの?」

「短期間とは言え、属性魔法はそれなりに育ったから。そこまで(せっ)()()まってはいないわよ」

「う~ん……木魔法なら、他の山とかでも訓練できるかな。(まん)(じゅう)(やま)とか」

「今のレベルならね。育ったところでたかが知れてると思うけど……」

「レベルが上がるとわかんないかぁ……」


 木だとわかりにくいけど、草だとはっきり育ち方が違ったもんね。木魔法をかけた方。


「あと、手を着けていないのは……」

「治癒魔法――だよね」


 けど……治癒魔法って、相手ありきの魔法だからなぁ。うかつに他人にかけるわけにはいかないし、かと言って、ぼくたち子供の身体に治癒魔法をかけるのは、どんな影響があるかわかんないし……動物実験とか、やった方がいいのかな?


「ケガしてる動物がいたならともかく、実験のために傷付けたりするのは嫌よ?」

「そんな事したら、動物だって怒りそうだしね。……もう少し考えてみないとダメか」


 あ……待てよ……?


()(りん)ちゃん、属性魔法の訓練は一通り終わったみたいな事を言ってたけど……実際にやってたのって、攻撃魔法だけ――だよね?」

「えぇ。そっちが優先だと思ったから。……何かまずかった?」

「そうじゃなくて……攻撃魔法以外の属性魔法はどうなの? ついこないだ、風魔法で声を変えたよね?」

「あぁ、【(へん)(じょう)】ね。……そう言えば、攻撃系の魔法以外は手を着けてなかったわね……」


 やっぱり()(りん)は隠れ脳筋枠……


「――何?」

「(……じゃなくて……)ううん、例えばだけど、身を守るためには攻撃もだけど、索敵とか隠蔽も重要だよね」

「そっちかぁ……」

「うん。治癒魔法もだけど、探知系とか隠蔽系の魔法はないのかって思って」


 遠足の時に風魔法で子供の声を聴き取ったのって、聴音機……パッシブソナーそのものだよね。()(りん)は【(じゅん)(ぷう)()】って言ってたけど。


「声を聴くのは風魔法だとしても、他にも何かできないかな? 火魔法で熱を感知するとか、土魔法で地中にあるものを探るとか」

「赤外線スコープと鉱石探査ね? ……できるかどうかはわからないけど……試してみる価値はありそうね」

「あとは……攻撃魔法の訓練をおろそかにもできないから、ばんば山以外の訓練地を探す必要もあるんだけどね」


 結局、ばんば山でやる以外の訓練法を考えるという事になったんだけど……

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