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ぼくたちのマヨヒガ  作者: 唖鳴蝉
第一部 五年生 一学期
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第八章 ぼくらと白骨死体とその顛末 2.ぼくら的に正しい通報の仕方

 ~Side 真凜~


 聞いた時には〝何を言い出すんだろう〟って思ったけど……上手くできるんなら、それが一番良さそうな気もしてきた。


「遠足の時は風魔法で下級生の泣き声を聴いてたよね? あれって音波に干渉して、特定の声を選別して強調したって事じゃない? だったらその逆で、自分の声に干渉して、周波数とかを変えられないかな?」

「……考えた事もないから、何とも言えないけど……やってみる!」


 風魔法をあれこれ工夫してみた結果、何とかできそうな気がしてきたのは、三十分ほど経ってからだった。


「……(ゆう)()に魔法をかければいいの?」

「もし偽装がバレて男の声だってわかった時、声変わり前だって事も自動的にわかるわけだから、()(りん)ちゃんにお願いしたいかな。()(りん)ちゃんも、慣れない魔法を他人にかけるより、自分にかけた方がやりやすいんじゃない?」

「う……それはそうだけど……」


 結局は(ゆう)()に言いくるめられて、警察にはあたしが通報する事になった。しぶしぶスマホを取り出したら、


「あ、スマホはダメだよ。考え過ぎかもしれないけど、発信者が特定される危険があるから」

「ダメって……だったらどうするのよ?」

「下に降りてけば公衆電話があるから、そこから電話して」

「公衆電話……」


 まだ生き残ってたんだ……公衆電話。


「あそこは人通りも少ないから、目撃される心配も少ないと思う。それと、電話をかける時は、これを使って」

「……何? これ。……ビニールの手袋?」


 (ゆう)()が持ち出したのは、使い捨ての薄いビニール手袋だった。

 犯罪者みたいな用意周到さに少し引いたけど、(ゆう)()が言うには、そういう目的で準備していたものではないらしい。万一の時のために用意していたとか言ってるけど……あたしには何となく見当が付いた。……家庭科でヨモギつみに出た時にもやらかしてたし……多分、動物のウンコをほぐして、(ふん)(ちゅう)っていうのを捕まえる時のためよね……

 たとえ新品だとしても、そんなモノを着けるというのは、正直言って気が進まないんだけど……


「……着けなきゃダメ?」


 仮に指紋を残しても、それがあたしのだってわからなければいいんじゃないの?


「指紋の鑑定はともかく、指の大きさで子供だってバレるかもしれないからね」


 ……その可能性があったかぁ……


「あと、警官っていう訊問のプロを相手に、まじめに受け答えなんかしちゃダメだよ? 言いたい事だけパーッと言って、すぐに切る事。いい?」

「いいけど……何で(ゆう)()がそんな事を知ってんのよ……?」


 この子……本当に何かやってるんじゃないでしょうね? 変にくわし過ぎるんだけど?


「これくらいの知識、小説を読めば出てるよ?」

「……あたしが読んでるラノベには、そんなシーン出てこないわよ」

「分野が違うのかな? ミステリとかだと時々出てくるよ。特にハードボイルド」


 ……これからはそっち系も読むべきかしら……

 それにしても……


(ゆう)()、本当に小説の知識だけ? 何だか妙に具体的なんだけど?」


 そう思って(ゆう)()を問いつめたら、実は前にも死体を発見した事があると白状した。


「家族でドングリ拾いに行った時にね。見つけたのはぼくだけど、警察の事情聴取は親が対応したんだよ」


 その時の手続きが、色々と面倒だったのをおぼえているそうだ。そのせいで、面倒を避ける手段を考えているうちに、こういう知識も身についたらしい。……シミュレーションってやつかしら?


「後になって、警察から感謝状と粗品が届いたけどね」


 ……それはちょっとだけあこがれる。

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[一言] 何だかしょっちゅう死体に出くわす少年探偵!? 体は子供、頭脳も子供!
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