第八章 ぼくらと白骨死体とその顛末 1.ぼくらが白骨死体を見つけた時の事
新年最初の更新がこんな話になりましたが……まぁ、マヨヒガらしくていいとお考え下さい。
~Side 真凜~
ばんば山での魔法訓練も大分慣れてきたせいか、ただ採石場跡に来て魔法を撃って帰るだけ――っていうのが物足りなく思えてきた。それだけ気持ちに余裕が出てきたって事なんだろうけど。
そんなわけで、あたしは優樹にせがんで、ばんば山を案内してもらう事にした。……あんな事を言い出さなければ、こんなものを見つける羽目にならなかったのに――と、今になって後悔している。
「ね、ねぇ優樹……あそこに見えてる白っぽいものって……」
「骨、だね」
「や、やっぱり?」
魚とかフライドチキンの骨なら見た事あるけど、あんな大きな動物の骨って……それに、あの丸い骨って……
「頭蓋骨みたいだね――人間の」
「やっぱり!?」
あたしは足がすくんで動けないのに、優樹ってば――
「ちょっと! どこへ行くのよ!?」
「え? ……だって、人骨なのかどうか確かめなきゃ」
「あたしを置いてかないでよ!」
「……じゃあ、真凜ちゃんも来る?」
「嫌よ!」
あたしの態度に困った優樹が言い出したのは、
「……落ち着いてよ真凜ちゃん。白骨死体じゃなくてスケルトンだと思えば、どうって事ないだろ?」
おかしな話だけど……そう言われてちょっとだけ落ち着いた。確かに、スケルトンなんてファンタジーではザコあつかいだし……そこまで怖がる事はないわよね?
だけど結局、あたしは優樹がそれを観察している間、目をつむってその場に立っていた。
「お待たせ。やっぱり人の骨みたいだった」
――なのに優樹ったら、落ち着いて報告なんかしてくるんだもの。
「ど……どうするの?」
「う~ん……真凜ちゃん、探偵のまねとか、してみたい?」
「嫌!」
少女探偵ものっていうジャンルはあるけど、あれは読者という立場で楽しむものよ。自分が当事者になるなんて、ごめんだわ。それにあたしは安楽椅子探偵派なのよ。死体の鑑定なんかお断りよ。悪趣味なラノベのまねなんか、頼まれたって御免だわ。
「だったら――」
「だったら?」
まさか、素材として取り込む――なんて、言い出すんじゃないでしょうね?
「そこまで非常識な事は言わないよ。けど、このまま放って置くのも不人情だしさ。警察に届けるくらいはしてもいいかな――って、思ってるんだけど……」
「……だけど……何?」
「馬鹿正直に報告したら、ぼくらがばんば山に入ってた事までバレちゃうよ? 何であんなところにいたんだって訊かれたら、どう答えるつもり?」
「あ……」
確かにこれは問題よね。まさか、〝魔法の練習をしてました〟――なんて、答えるわけにもいかないし。
「そこは何とかごまかせたとしても、今後ばんば山への立ち入り禁止を言い渡されるとか、抜け道を封鎖されるとかされたら、面倒じゃない?」
……そっちはもっと困るわね……
「じゃあ、どうするの? 放って置く? それとも……あたしたちでお墓を作る?」
「……ぼくたちでお墓を作るというのは考えなかった」
「優樹は何を考えたのよ?」
「う~ん……真凜ちゃんの魔法で、電話の声をごまかせないかな――って、考えてた」
「魔法で声を?」
真凜の言う〝悪趣味なラノベ〟こと、「とある死霊術師の回顧録」シリーズも、宜しければご覧下さい(笑)。




