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ぼくたちのマヨヒガ  作者: 唖鳴蝉
第一部 五年生 一学期
28/118

第七章 ぼくたちの報告会~証人喚問とかじゃなくて~ 3.取り込んだ素材(その2)

 ~Side 真凛~


「民家と言えば〝(わら)()き〟とか〝檜皮(ひわだ)()き〟とかが定番だけど、さすがに『檜皮(ひわだ)』……ヒノキの樹皮は手に入らなかったよ。(わら)の方は見本として少しだけ手に入ったし、山にスギ林があったからスギの樹皮は少しだけ手に入ったけど。……本当は杉皮も秋に取った方が、虫が付かなくて良いらしいんだけどね」

「……よく知ってるわね、そんな事」

「本で読んだし、ネットでも調べたからね」


 へぇ、一応は勉強してるのね。感心々々。


「あ、あと……ホームセンターでコルクボードを見たら、それも使えそうだったから、取り込んだんだっけ。……もちろん、お金払ってからだけど」

「……コルクボード……?」

「うん。コルクガシっていう木の樹皮なんだよ。日本だと、アベマキの樹皮が似てるかな」

「……何に使うのよ? そんなもの」

「わからないけど……素材として使えるっていうから、一応取り込んでおいた」

(ゆう)()……あなた結構お金使ってるんじゃないの? 大丈夫?」

「見本程度にしか買ってないから大丈夫だよ。(しょう)()(がみ)は和紙の便せんで代用したり、布はハンカチで間に合わせたりね」

(しょう)()(がみ)はともかく……布なんかも素材になるんだ……」

(たたみ)(へり)とかじゃないかな? あ、さすがに(たたみ)は無理だったけど、廃屋のところにボロボロに腐った(ふる)(だたみ)があったから、一応取り込んでおいたよ。……夏になったらイ草のゴザとか買えるかもしれないけど……」

「……その時は半分出すわ」

「ありがと……」


 さすがに(ゆう)()ばかりに買わせるのはまずいわよね。あたしたちのマヨヒガなんだし、共同出資にしておかないと。……布ならあたしの古着でもいいのかしら? 小さくなった道着とか。


「あとは……金属かな。鉄以外の銅とか(しん)(ちゅう)とか」

「……そんなもの、どこで手に入れたの?」

「簡単だったよ? 十円玉と五円玉」

「あ……それがあったわね……一円玉は?」

「材質がアルミのせいなのか、取り込み対象にはならなかったんだよね」

「アルミサッシは期待できないかぁ……待って! 南仏(なんぶつ)(やま)神社のお守りはどうなの? あれもアルミっぽかったわよね?」

「うん。けど、あれは同じ素材でも『護符』扱いになってたし、ただの素材とはまた違うんじゃないかな」

「……という事は……やっぱりアルミサッシは無理かぁ……」

「あと、茶碗(ちゃわん)とか植木鉢、ガラスびんなんかも取り込めた」

「……素材として取り込んだのよね?」

「うん。……正直、何に使われるのかわからないんだけど……ガラスは窓ガラスなのかもしれないけどね」

「まぁ……取り込めるものは取り込んでおく――で、いいんじゃない?」


 ……とは言え、あたしも民家の造りとか民具とかくらいは、調べておいた方が良さそうよね。どこにどんな素材が使われてるのか――とか。


田舎(いなか)に行った時にその辺は見てきたつもりだけど……肝心のマヨヒガがどういう形式になるのか、まだわかんないからね。……ぼくたちが出会った『(まよ)()』みたいに大きくはないだろうし……」

「あぁ……確かにそうかもね」

「ひょっとして、取り込んだ素材によってマヨヒガの形式が左右されるのかとも思ったんだけど……」

「……どういう事?」

「うん。例えば、囲炉裏(いろり)には灰が付きものだよね? だから、灰を取り込んだら囲炉裏(いろり)のある東日本型の民家になるのかな――って思ったり」


 あぁ……西日本の(かまど)に対して、東日本は囲炉裏(いろり)だって言われてるわね。……けど(ゆう)()、そんなとこまで勉強してたんだ。


「まぁ、アルミが取り込めなかった事でアルミサッシを期待できないってわかったし、素材がマヨヒガの形式を決めるって仮説は没になったわけだけど」

「あぁ……それもそうか……」

「素材に関してはこれくらいかな?」

「『外部素材』に関してはどうなの?」

「まだよくわかんないんだよね。肥料の他に園芸用の『培養土』とか『赤玉土』、砂とかもそれに当たるみたいだけど……他には該当しそうなのがなくって……」

「あら? ガーデンテーブルとかガーデンパラソルとかサンシェードとかは? ハンモックだとかウッドデッキだってそうじゃない?」


 あたしがそう指摘すると、(ゆう)()はポカンとしてた。ホームセンターのガーデニングコーナーに行きながら、そこまで気がまわらなかったのかしら。


「え、えぇと……でも()(りん)ちゃん、マヨヒガは多分和風の民家だし……ハンモックとかは違和感があるんじゃないかな」


 うーん……それはあるかも……だったら、


「物干し竿に物干し台、井戸の手押しポンプとか滑車なんかはどうかしら?」

「……手押しポンプはともかく……物干し竿?」

「あら、物干しは重要じゃない?」

「そうかもしれないけど……ホームセンターに売ってるのって、金属のポールにビニールコーティングしたやつだよね? マヨヒガの基準に合わないんじゃないかな」

「あぁ……それはあるかもしれないわね」


 けど……そうすると取り込めるのは基本的に自然物で、加工されたものはダメなのかしら?


「それはどうかな? 廃屋とか廃車は実際に取り込めたわけだし。さっき言った物干し竿も、中の金属部分だけなら取り込めるかもしれないよ? ……まぁ、物干し竿としてって言うなら、竹が使えるかもしれないけど」


 う~ん……

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