第七章 ぼくたちの報告会~証人喚問とかじゃなくて~ 2.取り込んだ素材(その1)
~Side 真凛~
「そもそも、マヨヒガに取り込める素材ってどういうものなの? ……いえ待って、今までにどんな素材を取り込んだの?」
話を聞いてて気になったので、この際だから優樹に確認しておく事にした。「マヨヒガ」って、一体何でできてるのよ?
「基本的にはぼくの魔力みたいだよ? けど……何て言うのかな……核って言うか、見本みたいなものがあった方が早くできるみたいなんだよね」
「あぁ……素材として取り込むっていうのは、そういう事?」
「みたいだよ。表示項目に『品質』とか『貢献度』とかがあるんだから、質とか量とかも関係するんだろうけど。……ただ……この場合の『品質』って……普通にいう意味での〝品質〟とは違う気がするんだよね。古ぼけたお地蔵様が〝品質:上〟になってるくらいだし……」
……その件は初耳なんだけど……確かに優樹の言う事もわかるわね。
「霊格とか、そういうものも関係してるんじゃないか――って事よね?」
「うん。じゃないと、南仏山神社のお守りの事も説明が付かないし」
あぁ……その件もあったわね。……でも待って……
「あのお守り、品質が低かったのはともかくとして、ただの『素材』じゃなかったの? 別に『外部素材』だとか言ってなかったわよね?」
「うん。多分だけど……量産品の上に、誰の想いとか願いとかも込められずに捨てられてたからじゃないかな。けど、一応は神社のお守りだから、そこそこの品質はあったとか」
「マヨヒガの素材としての〝品質〟っていうのは、世俗的な意味とは違ってるってわけね?」
「あくまでぼくの想像だよ? けど、そんなに的外れじゃないと思う」
……もしもそうだとしたら……
「ただの石とか木とかよりも、建物に使われてる木材とか石材とかの方が良いって事?」
「……どうなんだろ? 廃屋の時は特に品質が高いとかは思わなかったけど……あれはボロボロだったから……」
「ちゃんとしてる家とかを取り込むわけにはいかないのよね?」
「真凛ちゃん、多分……じゃなくて、間違いなくそれって犯罪になるから。あの時の廃屋だって、完全に潰れてたから取り込んだけど、後で調べたら結構グレーゾーンっぽかったし」
「そうよねぇ……。仮に許可をもらえたとしても、大っぴらにやるわけにはいかないものねぇ……」
「どこかに潰れたお寺とか神社とかがあれば、たとえ木片でも効果があるかもしれないけどね。あとは……建築現場でかんなくずを拾うとか?」
「かんなくず……」
「怒られも疑われもせずに取り込めるのって、それくらいじゃないかな。あ、製材所でおがくずとかをもらってもいいかも」
「……一気に話がみみっちくなったわね……」
それよりも……
「ねぇ優樹、今まであなたが取り込んだ〝素材〟って、どういうのがあるの?」
これは聞いておいた方が良いわよね。
「う~ん……色々あるけど、石とか木とか以外だと……あぁ、真凛ちゃんがくれた貝殻があったね」
「あぁ……おみそ汁の具の残りね……」
夕ご飯にアサリのおみそ汁が出たから、その殻をもらったのよね。花壇にまくのに欲しがってた子がいるから――と、お母さんを誤魔化して。
「あれって、役に立ったの?」
「うん。素材はいくらあってもいいから。……実はあの後ホームセンターに行って、そこで売ってた漆喰を鑑定してみたんだけど……何か品質が低かったんだよね。それこそ、下手したら真凛ちゃんがくれた貝殻より低そうな感じだった」
「……工業生産品だと低いのかしら……?」
「添加物とかも入ってるのかもね。それで、消石灰の方を買ったんだ」
「……重くなかった?」
「そんなに大きな袋では買わなかったし、人目のないところですぐに取り込んだから、別に大した事はなかったよ」
……便利なスキルよね……
「あと、ホームセンターでは、五寸釘とかすがいも買っておいた。……さびた釘とか使って、万一マヨヒガが崩れたりしたら嫌だから」
「そうね……ぜひともお願いするわ……」
――何ならあたしのお小遣い使ってもいいから。
「他に取り込んだ素材は……あぁ、竹があったっけ」
「竹?」
「うん。ゴールデンウィークに田舎に行った時にね、管理が行き届いてなくて荒れたままの竹林があったから、そこで回収してきた。あ、面白かったのは、青竹も枯れ竹も、素材としての品質に差がなかった事かな。さすがにボロボロに腐ってる竹はダメだけど」
「へぇ……」
「後々面倒になったら嫌だから、枯れたのだけを回収してきたけどね」
……そういうところは抜かりがないのよね、この子。