第六章 ぼくたちの校外学習 3.大規模工事現場にて~社会科見学~
~Side 真凛~
昨晩見つけた何とかいう虫の事で、教頭先生と宗内先生が地元の役場かどこかに説明に行って、引率の先生が二人も減る事になった。そのせいで先生たちも大忙しみたいだけど……あたしまでその元凶みたいに扱われるのは心外だわ。まぁ、ほめられもしたんだけど……
で、今日は社会科見学という事で、近くの大規模工事現場を見せてもらってる。例年なら地元の産業会館で特産品の説明とかなんだけど、今年はたまたま大がかりな造成工事か何かが行なわれてるからって、学校側が工事してる会社に頼み込んだらしいのよね。まぁ、こんなに大きな工事の現場なんてめったに見られるものじゃないしね。こっちの方が生徒の受けもいいみたいだし。
優樹は出発前に先生から、決して勝手な行動はしないように――って、念入りに注意されてたけど……あぁ……列を外れたりはしてないけど、歩みが遅くなってるわね。また何か見つけたのかしら?
「鳥遊君、少し遅れてますよ~。急いでね」
「あ、は~い」
……虫とかじゃないわね。珍しい虫とかだったら、あんな素直に先生の言う事をきくはずがないわ。
……とすると……マヨヒガの素材関係かしら? 伐り倒した木とか土砂しかなかったような気がするんだけど……それくらいなら地元でも回収してるわよね?
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~Side 優樹~
ここしばらくの訓練のかいあって、十メートルくらいの距離なら、手を触れる事なく素材を一瞬で取り込む事ができるようになった。そのスキルを使って、気付かれない程度に倒木や石なんかを回収していく。
案内役の人の説明だと、伐り倒した木なんかはそのまま捨てられるみたいな事を言ってたし、ゴミならぼくがもらっちゃってもいいよね♪
一つ気になってたのは、まだ枯れてなさそうな木を庭木として取り込めるのかどうかなんだけど……何度か試してみた感じだと、「外部素材」としての取り込みはできないみたいだ。普通の「素材」としてなら回収できるんだけどね。
これってやっぱり、樹木は建材としてしか使われないって事なんだろうか。
――それがマヨヒガの仕様なのか、ぼくのレベルが低いからかなのかは、今の時点ではわからないけど。
まぁどっちにしても、マヨヒガを建てるための木材は、いくらあっても困る事はないから助かるけどね。
マヨヒガ自体は基本的にぼくの魔力で造るみたいなんだけど……核って言うか、見本みたいなものがあった方が早くできるみたいなんだよね。だから、木造家屋の材料としての木材は、いくらあっても歓迎なわけだ。先々で増築とか改築とかのグレードアップもできるみたいだし、取り込める時に取り込んでおきたいよね。
遠藤先生に注意されたし、真凛がジト目でこっちを見てるのにも気付いたから、怪しまれない程度に歩調を上げて歩いてたんだけど……その説明文が現れた時には、危うく足を踏み外すとこだったよ。
《対象物の品質は以下の通りです。
【石地蔵】 品質:上 貢献度:中
マヨヒガに取り込みますか? はい/いいえ》
もちろん即行で「はい」を押したよ。当然だよね?
お地蔵様まで取り込めるのには驚いたけど……ある……と言うか、いた方がいいに決まってるよね?
これにて第六章は終幕となりますが、今月は続けて第七章まで公開します。




