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ぼくたちのマヨヒガ  作者: 唖鳴蝉
第一部 五年生 一学期
24/118

第六章 ぼくたちの校外学習 2.旅館にて~灯火採集~

 ~Side 真凛~


 旅館に着いて晩ご飯とお風呂を済ませた後は、就寝まで短い自由時間になった。とは言っても、旅館の外に出たりはもちろん禁止。要するに、部屋でおとなしくしていなさいって事なんだけど……


(「ちょっと(ゆう)()! 何、外に抜け出そうとしてんのよ!?」)

(「ま、()(りん)ちゃん……」)


 (ゆう)()ったら、こっそりと宿の外へ抜け出そうなんてしてた。まったくこの子ったら……少しくらいおとなしくできないのかしら? 昼間は昼間で、実習そっちのけでマメコバチの観察なんかやってたし。

 授業態度が悪いって、減点されるわよ? いえ、それよりも、家の人に通知されたりしたらどうするのよ? 監視が厳しくなって自由に外に出られないなんて事になったら、あたしだって色々と困るんだから。少しは()(ちょう)ってものをおぼえなさいよ!


(「い、いや……別に抜け出そうってわけじゃないよ? ただ……ほら、外の灯りとかに虫が集まってるし……ちょっとだけ見てこようかな――って……」)


 ……あきれた……この子の行動原理って、虫以外にないのかしら。


 どのみち、このまま見逃すわけにはいかないわね。先生たちに知れて騒ぎになる前に、力づくででも……って……抵抗するわね……

 早くしないと、見まわりの先生に見つかったら……


「こら! そこ! 何してるんだ!?」



 ********



 ~Side 優樹~


 押し問答してたぼくたちを見とがめたのは、新任の若い男の先生だった。確か理科の先生……ってか、昼間マメコバチの巣箱を熱心に観察してた先生だよね。宗内(むねうち)先生っていったっけ。

 早く部屋へ戻るようにと言ってるけど、ぼくたちを連行しようとはしないみたいだ。……こういう時って、見つけた先生が責任持って、部屋へ連れ帰るんじゃなかったかな?


 ……何か怪しいなと思ってたら……先生が後ろ手に隠し持ってるのって、(どく)(びん)じゃないか。採集した昆虫をすぐに殺すための道具だよ。ぼくの同類かぁ……〝同じ穴の(むじな)〟――って言うんだっけ? こういう時。


 ぼくを引っ張っていこうとする()(りん)に抵抗して、(おう)(じょう)(ぎわ)悪く〝採集の時間がなくなる〟とか言ってみると……


「……仕方が無い。臨時に僕の助手に任命するから、採……調査を手伝うように。ただし、勝手に動かず、僕の目の届く範囲にいる事。いいね!」

「はい!」

「……はい」


 ()(りん)は納得いかないって顔だけど、先生のお申し付けとあっては嫌とも言えず、採しゅ……調査を手伝うみたいだ。ぼくの同類(マ ニ ア)って思われるのが不本意なのかもしれないけど……ぼくらは仲間で運命共同体だからね♪


 やる気なさそうにその辺りを見ていた()(りん)だけど、何かを見つけたみたいで声を上げた。〝首の赤い黒い虫〟って言うから、気になって見に行ったんだけど……


「クビアカツヤカミキリ!」

「――何っ!?」

「え?」


 ()(りん)はわかってないみたいだけど……特定外来生物のクビアカツヤカミキリだ! この辺りに侵入してるって話は聞いてないけど……


「……確かにクビアカだ。この辺りでの報告は無かった筈なのに……いや、それ以前に、成虫が出るには少し時期が早いような気もするけど……」

「ここ何年か暖かい年が続きましたし、成長とか出現時期とかが早まったんじゃないですか?」

「……そういう可能性はあるか……ともあれ、これは一大事だ」

「ですよね」

「えーと……話が見えないんだけど……何かまずいわけ?」


 ()(りん)が置いてけぼりになってるみたいだから、ぼくの方から説明する事にする。このクビアカツヤカミキリは特定外来生物で、見つけ次第の捕殺が勧められている事、そしてバラ科の大害虫である事……


「だからね()(りん)ちゃん、昼間行った農園のリンゴなんかもバラ科だし、この虫が入ると枯れちゃうかもしれないんだよ?」

「大変じゃない!」


 ()(りん)にも事態の重要性が飲み込めたようだけど、虫を触るのは嫌そうにしてたから、教頭先生を呼びに行ってもらう事にした。さすがに放置するわけにはいかないからね。観光農園の人とか地元の担当部署とかにも、多分連絡をいれなきゃダメだろうし。


 ――あ、ぼくと宗内(むねうち)先生はその間、クビアカツヤカミキリを探しまわらなきゃならないし。他の虫と間違えないよう、注意して調べなきゃね♪ うん、理論武装完了。


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