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ぼくたちのマヨヒガ  作者: 唖鳴蝉
第一部 五年生 一学期
22/118

第五章 ぼくたちの遠足 3.ぼくたちが迷子を見つけた時の事

 ~Side 優樹~


 そろそろ帰りの時間だというのに、先生たちが変に落ち着かない。……何かあったのかな?


(「何でも四年のチビが一人、戻って来ないんだってよ」)


 事情を耳打ちしてくれたのは、ぼくと同じ班のメンバーにしてクラス一の事情通、富沢の(しげ)ちんだった。


(「どうするつもりなんだろうね? このまま全員で探しに出るのかな?」)

(「知らね。けど、全員で探すってのはないんじゃないか? 二次ソーナンするやつがきっと出るぜ」)

(「だね。……何人かの先生が残って、ぼくらだけ学校に帰るのかな?」)

(「それだと人手が足りないんじゃないか? 先生だって、そんなに余分はないだろ?」)

(「(しげ)ちんの言い方だと、先生たちが何かの材料みたいに聞こえるね」)


 ヒソヒソ声でそんな事を話していると、学年主任の楠先生が前に出て来て話し出した。


「え~……知ってる者もいるかと思うが、四年の生徒が一人帰って来ない。探すのに先生たちだけでは少し手が足りないから、みんなにも少し協力してほしい。それで……南仏山史跡公園(こ こ)の地理に詳しい者がいたら手を挙げてくれ」


 先生がそう言うと、何人かの子が手を挙げたけど……その中に()(りん)がいた。チラリとこっちに目をくれたので、仕方ないとあきらめてぼくも手を挙げた。ここには何度か虫とりに来てるしね。

 結局、手を挙げたぼくたちと六年生の有志、それに何人かの先生が残って、行方不明の子を探す事になった。先生の一人は迷子係の事務所に詰めるみたいだ。

 基本的に先生一人と生徒たちがグループになって探すみたいだけど……


「あぁ、先生方の手が足りないから、鳥遊(たかなし)()(すみ)()は二人で組んで探してくれるか。お前たちなら、ま、大丈夫だろ」


 ()(りん)武勇伝(やらかし)は、先生たちの間にも広まってるみたいだ。


「……ちょっと(ゆう)()、何であたしのせいにするのよ?」

「だって、ぼくには思い当たる節がないんだもん」


 ……去年の遠足の時にハチにさされた生徒がいたんで、持っていたポイズンリムーバーで毒を吸い出して、アナフィラキシーの危険性が無視できないから病院へ連れて行くよう進言したけど……それくらいなら単に雑知識(トリビア)をひけらかしただけだよね?


「それはともかくさ、()(りん)ちゃんが探すのに立候補したのは、何か理由あっての事だよね?」


 どうも()(りん)は歴女っぽいから、史跡目当てにここに通いつめてた可能性もあるけど、それだけが理由じゃないだろう。


「ふ、ふ~ん。……わかる?」


 ――わからいでか。


「最近使えるようになった風魔法の中にね、遠くの物音を聴くっていうのがあるのよね」

「あぁ……こないだも言ってたよね。……それで迷子の居場所を探ろうって?」

「うん。泣き声みたいなのが聞こえてて、こっちの方だと思うんだけど……」

「でも()(りん)ちゃん、こっちへ行くと公園は終わっちゃうよ? 確か、乗馬クラブの牧場みたいなのがあったと思うけど……」

「うん……でも、泣き声はこっちからしてるし……」


 他に手がかりもない事だし、そのまま歩いて行ったんだけど……


「……いたわね。あの木の上」

「木の下に馬が集まってるせいかな。降りられなくなって泣いてるみたいだね」


 牧場に忍び込んで木に登ったのはいいけど、集まって来た馬が怖くて木から下りられない……って感じだった。

 仕方ないから()(りん)が飼育員らしい男の人を呼びに走って、迷子の子は無事に助け降ろされた。

 男の人に謝ってから先生たちのところへ連れて行って事情を説明したんだけど、ぼくたちの株は少し上がったみたいだった。


本日を以て連日投稿は終了となります。次回からは月に一度くらいの更新とする予定です。今後も優樹と真凜の活躍にお付き合い下さい。

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