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ぼくたちのマヨヒガ  作者: 唖鳴蝉
第一部 五年生 一学期
21/118

第五章 ぼくたちの遠足 2.ぼくたちがゴミ拾いを始めた理由

 ~Side 優樹~


 今日は五月の全校遠足。新一年生を歓迎するのと、生徒が新しいクラスになじむようにとの学校側のハイリョで、毎年この時期に行なわれてる。……とは言っても、全学年の全生徒が同じ場所へ集中すると大変だからか、高学年と低学年で別々の場所へ行くんだけど。

 ぼくたち高学年組が行くのは南仏(なんぶつ)(やま)史跡公園。名前は「南無阿弥陀仏」がなまったんだとか言われてるけど……ここって神社を中心とした公園なんだよね。神社に「南無阿弥陀仏」の(ろく)()(みょう)(ごう)って……おかしくないかな?

 ここは昔の武家屋敷だかお城だかの跡地らしい。結構な広さがある上に、周りはちょっとした林に取り囲まれてるから、ぼくも何度も遊びに来てる。てか、このあたりの子供だと、知らない方が少ないんじゃないかな。


 勝手知ったる場所とは言え、油断すると何が起こるかわからないから、ぼくもいつもの野外行動キットは持って来てる。……まぁ、カッコつけて言うほど大したもんじゃないんだけどね。ハチとかに刺された時の毒抜きのためのポイズンリムーバーに、トゲ抜き用の毛抜きとピンセット、毛虫の毒針を取り除くためのガムテープ、消毒液に救急用バンソウコウ、傷口を洗うためのペットボトルの水くらいだ。あ、外国製の十徳ナイフは、こっそり持って来てるけど。

 学校側も救急箱ぐらいは準備してるだろうけど、一刻を争って手当てする必要があるかもしれないからね。用心は必要だよ、うん。


 生活班ごとに分かれてるから()(りん)とは別行動になるけど、そう毎度々々何かが起きたりはしないだろうし……別に不都合とかはないよね。


 神社の敷地に入ると、あちこちに三叉の(ほこ)が打ち捨てられている……と言っても本物じゃなくて、ご神器か何かのレプリカなんだけどね。お守りだか土産(みやげ)ものだかで売ってるんだ。安いのは金色の厚紙で、少し高いのはアルミでできている。小さい子供たちが欲しがるんだけど、飽きたらそこらに捨ててくみたいなんだ。


 それでもアルミには違いないんだし、ひょっとして資源になるんじゃないかと思って【鑑定】してみたら……



《対象物の品質は以下の通りです。

 【護符】 品質:下 貢献度:微小

 マヨヒガの素材として取り込みますか? はい/いいえ》



 ……え……?


 ……待って待って……「護符」ってなってるけど……ただの量産品の土産(みやげ)ものだよね? 何で貢献度が「極微小」じゃなくて「微小」なの?


 ……仮にも神社のお守りだから? 何かの補正が効いてるっていうの? 



 ********



 ~Side 真凛~


 全校遠足で南仏(なんぶつ)(やま)にやって来た。ここは戦国時代の(とりで)の跡に建てられた神社だとかで、あたしも何度か来た事がある。神社と言うよりも史跡公園として整備されていて、来訪者も参拝と言うより遊びに来た人たちの方が多いみたい。遊びのついでにお(まい)りしていくって感じかしら。


 そんな調子だから信心も薄く、一応はお守りのはずの(ほこ)のレプリカがあちこちに捨てられている。嘆かわしい事だと思ってたら……(ゆう)()が何を思ったか、すごい勢いでそのゴミ――って言うのもアレなんだけど、要するに捨てられてる(ほこ)のレプリカ――を拾い集め始めた。

 一見するとゴミ拾いに思えるんだけど……あの子はそんな(しゅ)(しょう)なタマじゃない。大方、マヨヒガの材料に使えるとか気付いたんじゃないかしら。

 でも、ま……ぱっと見では神社でゴミを拾ってる感心な子供よね。……あ……黙ってみてるのが決まり悪くなったのか、他の子たちもゴミを拾い出した。


「……ねぇ()(すみ)()さん、アレって、あたしたちも拾った方が良いかな?」


 同じ班の木津川さんが困ったように訊いてくるんだけど……このまま知らんぷりしてるのも、先生方からのウケが悪くなりそうだしね。


 ……迷惑のツケは後で払ってもらうわよ、(ゆう)()

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