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ぼくたちのマヨヒガ  作者: 唖鳴蝉
第一部 五年生 一学期
19/118

幕  間 家庭科で野草摘みをした時の話

「い~ですか、皆さ~ん。ツクシはできるだけ根元から、ヨモギの方は先っぽの柔らかいところだけ摘むんですよ~。ヨモギは葉っぱの裏側が白いから、間違えないようにね~」

「「「「「は~い」」」」」


 先生の注意が終わると、あたしたちは班ごとに分かれて、ヨモギとツクシの採集を始めた。

 楽しかったゴールデンウィークも終わって、今日は家庭科の授業で野草摘みに来ている。学校のそばの土手で、そこに生えているツクシとヨモギを摘んで、下ごしらえまで済ませる――っていうのが今日の授業なんだけど……


「そこ、男子! ヨモギは先っぽの方だけ摘むって、先生、言ってたでしょ!?」


 男の子たちは遊び気分で、授業そっちのけでほかの事をやってるし。ヨモギを根っ子ごと引き抜いてるうちの男子なんて、まだまともな方だ。あっちではオオバコのすもうなんかやってるし……あれって中々切れないから、結構力がいるのよね。力み過ぎて、切れた時にひっくり返る事とかあるし……あぁ、ちょうど今、男子がひっくり返ったわね。女の子がやるならスミレの花がちょうどいいんだけど……ダメダメ、まじめにヨモギを集めなくっちゃ。


「わぁっ! 先生! ヘビや! ヘビが出た!」

「慌てんで離れなさい! マムシかもしれんから注意して!」


 あぁ……男の子ってば……何やってんだろ。そんな下まで行かなくても、ヨモギもツクシも道のそばでとれるわよ。板をひっくり返す必要なんかなかったじゃない。


 ……(ゆう)()の声がしないわね? この手の話なら、先陣切って騒ぎそうなものなのに。


 ……あぁ、いた。ヨモギにいるテントウムシを集めてる。……そう言えば、テントウムシって色んな模様がいるけど、全部同じ種類なんだって、言ってたっけ。……フルコンプでも目指してるのかしら?


「きゃあっ!」

「ちょっと、やめてよ!」


 あ、あっちでは男の子がヨモギを持って……違うわ。ヨモギについてるイモ虫だ。それを持って、女の子たちをおどしてる。……あ、先生に叱られてる。

 女の子たちも、あんな小さな虫でそこまで騒がなくていいのに。カイコなんて、大人の指くらいあるんだから。


「きゃあっ! ちょっと!」

「うわっ! きったねぇ!」

「やめなさいよ! 鳥遊(たかなし)君!」


 ――(ゆう)()? 一体何してるのよ?


「あ……また鳥遊(たかなし)君だ」

「……木津川さん、何か知ってるの?」

「去年も鳥遊(たかなし)君と同じクラスだったの。生き物の事とかくわしいんだけど……たまにああやって暴走するのよね」

「暴走……」


 何をやっているのかと近寄ると……(ゆう)()が先生に怒られているところだった。どうもイヌか何かのフンに付いていた虫――確か、(ふん)(ちゅう)っていうんだったかしら――を見つけて、捕まえようとしてたみたい。


「食べるものを採ってる時に、イヌの糞なんか触るんじゃありません!」


 ……うん、先生の言うとおりよね。


 いくら〝生き物との出会いは(いち)()(いち)()〟だなんて主張しても、今は一応家庭科の授業中なんだし、採集許可は下りないと思うわよ?


 「ぱっと見王子」の外見にだまされてた子も、一気に熱が冷めたでしょうね。



・・・・・・・・



 少し騒ぎにはなったけど、それなりの量のツクシとヨモギをとって、学校の家庭科室に戻った。

 ツクシもヨモギもよく洗って、ツクシはハカマっていう部分をとって、


「ツクシはこの後は()でてアク抜きしたら食べられま~す。時間が無いので、授業ではそこまでやりませんけど、欲しい人は持って帰って、おうちで作ってもらいなさ~い」


 あたしたちの班では、一応全員に均等に分けた。一人当たりの量は思ったより少なくなったけど、(しゅん)の野草と思えば、食べておくべきよね。


「ヨモギの方は、重曹を入れた水で二分から五分くらい()でま~す。その後で水にさらしてアクを抜いてから、細かく刻みま~す。包丁でやってもいいけど、時間も無いし危ないから、今回はフードプロセッサーを使いま~す」


 刻んだヨモギは冷凍しておけば、いつでも利用できるらしい。次の授業では、解凍したヨモギを使って草もちを作るんだって。今から楽しみよね。


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