第四章 ゴールデンウィークのぼくたち 1.前半戦~田舎へ行った優樹の話~
~Side 優樹~
今年のゴールデンウィークは、四月の終わりの三連休と、五月の初めの四連休の二つに分かれている。その間に三日間の平日がはさまっているんで、あんまり大型連休って感じがしない。まぁ同級生の中には、学校を休んで十連休にするって言ってる子もいたけど……四月三十日が全校参観日でPTA総会があるから、難しいんじゃないかな。ぼくたちはおとなしく登校するつもりだ。
そんな連休の前半戦初日、ぼくはお母さんの田舎に遊びに行く。お父さんが休日出勤になったから、お母さんも家に残る事にして、田舎に行くのはぼく一人だ。
「大丈夫? 向こうへ着いたら連絡を入れるのよ?」
「大丈夫だよ。何度も行ってるんだし」
お母さんの田舎は割と近いしね。まぁ近いだけで、ちょっとした山の中にあるんだけど。
「檀家の皆さんにも、迷惑かけないのよ? いつかみたいに、一人で半日も歩き廻って……。檀家の人たちが総出で探し廻ってくれたんだから」
「あれは……ちゃんと散歩に行くって、お祖母ちゃんに言って出たんだってば」
「そ・れ・で・も――小学生が一人で八時間も山の中を彷徨き廻るなんて、誰が思いますか! お昼になっても戻って来ないから、大騒ぎになったのよ」
だって、お昼はカロリーバーを持ってたし……。帰ってみたら、ソウナンとかユウカイとかの騒ぎになってて、ぼくの方がビックリしたよ。ぼくは何にも悪くないのに叱られて、檀家の人たちに謝らせられて……〝理不尽〟――って言葉をおぼえたのも、この時だったような気がする。
まぁ、この時からケータイを持たせられたのは、ちょっとうれしかった。……最初はガラケーだったけどね。
あ、言い忘れてたけど、お祖父ちゃんはお寺のお坊さんなんだよね。〝山寺の和尚さん〟――ってやつ。……ネコを蹴毬代わりにとかはしないけど。
「と・に・か・く、お祖父ちゃんお祖母ちゃんに迷惑をかけないのよ? わかった?」
「は~い」
親はとにかくハイハイと言ってやれば安心する――って、シンイチ兄ちゃんが言ってたから、ぼくもそれにならう事にした。
「何か安心できないんだけど……まぁいいわ。行ってらっしゃい」
「行ってきま~す」
・・・・・・・・
連休の二日目、ぼくは近くの山道を散歩していた。お昼にはちゃんと帰って来いと、お祖母ちゃんに厳命されたけど。
まだ虫とりとかには少し早いけど、石をひっくり返せばゴミムシとかオサムシは見つかるし、二十センチくらいのムカデがいる事もある。毒があるからかみ付かれたら大変だけど、注意して頭の後ろを捕まえてやれば、かみ付く事もできないから大丈夫だ。……家に持って帰ったらしかられるけど。カッコいいのに。
草の上にいるゾウムシとかテントウムシとかを探してると、壊れた空き家に出た。〝廃屋〟――って言うんだっけ。
もうすっかり潰れちゃってる上に、上をつる草とかが覆ってて入る事もできないけど、ネズミとかヘビとかはねぐらにしてるみたいだ。
潜り込んでみたいのは山々なんだけど、中に何がいるかわからないから、ちょっと不安なんだよね。……少し前にはスズメバチの巣とかもあったし……
少し残念な思いで、ぼくがその廃屋をながめていたら……
《対象物の品質は以下の通りです。
【廃屋の建材】 品質:下 貢献度:小
マヨヒガの素材として取り込みますか? はい/いいえ》
「……え……?」