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ぼくたちのマヨヒガ  作者: 唖鳴蝉
第一部 五年生 一学期
14/118

第三章 現実という名の落とし穴 3.日曜日の訓練地(その2)

 ~Side 真凛~


「……はぁ……」


 思う存分【火炎弾】を打ち込んでやったら、少しは気分がスッとした。……何か、遠くから(ゆう)()が残念そうな目で見てるけど。


「う~ん……今のあたしの最大火力をぶつけてみたんだけど……崖を崩す事もできないわけか……」


 まぁ、本当に壊れたら困るわけだけど。


「落ち着いた? ()(りん)ちゃん」


 (ゆう)()が近寄って声をかけてきたけど……キッチリ射程外にいるのがムカつくわね……


「撃ったりしないから、こっちへ来なさいってば」


 ……まったく……そんなにあたしが信用できないのかしら。


「そういうわけじゃないけど……見るからにストレスがたまってたみたいだし……」

「……今は大丈夫だから、安心なさい」

「うん。……で、どんな感じ?」


 そうね……


「最大火力は見てのとおり。まだまだ充分とは言えないわね。ラノベだと、連発してどうにかオークに通用する――って感じ?」

「わかるような、わかんないような……威力以外の部分は?」

「射程距離は(ゆう)()もわかったでしょう? ピストルの有効射程と同じくらいじゃないかしら。命中精度は……【火炎弾】だと風の影響も受けるみたいで、そこそこって感じかしら。連発はできるけど、その分だけ狙いが甘くなるわね」

「火魔法以外はこれから?」

「そうね。とは言っても、火魔法と木魔法以外は、ちょくちょく人目を避けて試してたんだけど」

「あ、そうなんだ」

「えぇ。風魔法は目に見えないし、土魔法の【飛礫(つぶて)】は石を投げてるようにしか見えないし。……水魔法は少し注意する必要があるけど、後に残るのは水だけだしね」

「ふーん。……それはいいとして、スキルの名前は日本語なんだ?」

「えぇ。……英語でファイアーボールとかウィンドカッターとかストーンバレットとか言っても、どういうわけか発動しないのよ」

「……そう言えば、ステータスも【閲覧】って言わなきゃダメだったっけ」


 マヨヒガって日本の怪異だし、そういう仕様なのかもしれないわね。



 ********



 ~Side 優樹~


 ()(りん)の試し撃ちがひととおり終わったところで、いくつかわかった事があった。


「やっぱり、威力と射程、速度はトレードオフの関係にあるみたいね。【火炎弾】の威力を上げると、遠くに飛ばなかったり、遅くなったりするみたい」

「石を投げるのと同じように考えたら、わかりやすいかもね。大きな石を投げようとしても、遠くには飛ばないし」

「あぁ……そう考えるとわかりやすいわね、確かに」


 そうすると……


「威力を上げる訓練は必要だとして……実戦ではどれを重視するかだよね。ケース・バイ・ケースだとは思うけど」

「まず射程、次に速さよね。あたしたちの安全を考えると」


 うん……〝戦闘は火力!〟なんて言い出さなくて安心したよ。


「……何か言った? (ゆう)()

「何も? ところで()(りん)ちゃん、ここでの試し撃ちって、訓練になりそうかな?」

「……何かごまかされたような気がするけど……訓練にはなりそうね。良い感じに負荷がかかってるみたいだし。それに何より、実際に狙い撃ちできるっていうのは大きいわ」

「ふ~ん……じゃあ、これからも時々ここで特訓する?」

「ぜひ!」


 ――というわけで、週末ごとにここへ来て射撃練習をする事になった。()(りん)のスキルアップは、ぼくらの安全確保のためにも重要だからね。


「そう言えば……(ゆう)()の方はどうなのよ?」

「ぼく?」

「マヨヒガの力で【鑑定】とか【取り込み】ができるんでしょう? やっぱり訓練とか、やってるの?」


 あぁ、そっちか。


「う~ん……見た感じ、貢献度が低い素材しかないみたいだから、実際の取り込みはやってない。【鑑定】の方は、くり返し使ってはいるんだけど、レベルアップする気配はしないんだよね。やっぱり独立したスキルじゃないみたい」

「そうなんだ……」

「ま、放っておくのも何だから、これからも【鑑定】は使ってみるつもりだけど」

「取り込みの方は? ここの石とか岩とか、取り込んだりしないの?」

「あ~……一応考えたんだけど……採石場って言うくらいだから、ここの石をとるのは問題かなって思って。泥棒になるかもしれないし」

「あ……犯罪になるのかぁ……」


 ハデにやって気付かれても面倒だしね。

 まぁ、来週はゴールデンウィークになるから、ぼくも真凛もここに来るのは無理っぽいけど。

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