第三十章 ぼくらの繰越村再訪記 7.クリ林とお堂
本作に登場する地名・人名・歴史・道徳・法律・価値観・慣習・伝承などは架空のものであり、現実のそれとは無関係である事を、予めお断りしておきます。現実で作中人物と同じような行動をとった場合、何らかの法規に抵触するかもしれませんのでご注意下さい。
~Side 優樹~
予想外の収穫を得た空き家……と言うかその残骸を後にして、ぼくらはクリ林の方に向かった。
クリを拾いたいというのはもちろんだけど、マヨヒガに植える分の実とか実生とかも確保したいし、村の近くにクリ林があるのかどうかを確かめておくのも大事だしね。何しろ、旧村跡地の位置を調べる手がかりになるかもしれないんだから。
そうしてしばらく歩いた先には――
「うわぁ……」
「優樹、これって全部クリの木なの?」
「そうみたいだよ。ほら、地面にもたくさん落ちてるし」
「本当ね……」
地面には、まだ新しそうな実から古くて朽ちかけたようなのまで、新旧さまざまなクリの実が落ちている。新しそうなのは片っぱしから拾って、持参のビニール袋に入れていく。ちゃんとクリ拾いしてきたって証拠が必要だしね。実生苗も使えそうなのは、できるだけマヨヒガに取り込んでいく。
……これでマヨヒガにクリとドングリの林ができたらいいんだけど……いや、虫採りだけなら来年の夏に、ここに来るっていう手もあるな……
あ……そうだ。
「真凛ちゃん、スズメバチとかがいるかもしれないから、できたらスキルで警戒しといて。こっちからうかつに攻撃すると、群れをなして襲って来るかもしれないから、注意してね」
一応警告しておくと、真凛はビクッと身を震わせた。……さすがの真凛もハチは苦手なのかな?
まぁ一応、殺虫剤とポイズンリムーバーは持って来てるけど、無用の危険は回避する方針をジュンシュすべきだよね。
それからは二人で、用心しぃしぃクリの実と、ついでに腐葉土なんかも適当に回収してたんだけど……
「優樹……あれ」
「うん……お堂みたいだね」
クリ林の少し先に、小さなお堂みたいなものを見つける事になった。
「山の神様でも祀ってあったのかしら?」
「そうかもね。中のご本尊様も、あったかもしれない額とかも運び出されて空っぽだけど」
小さなお堂だけど何となく、村の人たちに大事にされてきたような感じがする。
「……優樹、このお堂も取り込むつもり?」
「ううん、やめておくよ。このお堂は、ここにこのままあった方が良いような気がするし……もしもお堂が消えた事がバレたら、電柱以上の大騒ぎになりそうだしね」
「そうよね……」
「でも――これだけは持って行った方が良いような気がするんだ」
「え……?」
真凛は不思議そう……と言うか怪訝そうだったけど、ぼくは構わず床下にもぐって、二つほどの品物を回収してきた。真っ赤に錆びた鉈と、同じく真っ赤に錆びた……
「……鉄瓶?」
「うん。これならマヨヒガの囲炉裏で使えそうじゃない?」
教えてくれたのが「金霊」なのか、それとも――ここに御座しますどなたかなのかはわからないけど……何となく、〝持って行け〟って言われた気がしたんだよね。
・・・・・・・・
その後、真凛がこのお堂について調べてきてくれた。
それによると……かつての繰越の旧村が土砂崩れに被災した時、生き残った村人たちが避難したのが、ここにあった出作り小屋――山仕事の際に寝泊まりしていた仮小屋だったらしい。
その小屋を拠点として、周囲に少しずつ家を広げていったのが、今は廃村になった繰越の新村落の始まりだったらしく、最初の拠点とした山小屋は、廃村になるまでお堂として使われていたんだそうだ。
自分たちを救ってくれた、山小屋に対する感謝を忘れないように。
これにて今回の更新は終幕となります。




