第三十章 ぼくらの繰越村再訪記 6.廃村トレジャーハント~潰れた廃屋~(その2)
本作に登場する地名・人名・歴史・道徳・法律・価値観・慣習・伝承などは架空のものであり、現実のそれとは無関係である事を、予めお断りしておきます。現実で作中人物と同じような行動をとった場合、何らかの法規に抵触するかもしれませんのでご注意下さい。
~Side 優樹~
「真凛ちゃん、どう見ても棺桶らしくないんだけど? どっちかって言うとリンゴ箱に近いような……」
「そ、そうね……優樹の【鑑定】ではどうなってるの?」
「う~ん……ふたがしてあるせいか、はっきりしないけど……でも、素材か備品かが入ってるのは間違いないみたい。……死体なら素材にはならないよね?」
一瞬だけ「即身仏」っていう可能性が頭をかすめたけど、サイズ的に違うみたいだし……何より棺桶らしくないんだよね、これ。どう見てもリンゴ箱だよ。
……犬か猫の死体が入ってる――って可能性は、まだ消えてないけど……そもそも、死臭みたいな変な臭いはしないしなぁ。
「ちょ、ちょっと優樹……臭いをかぐのはやめなさいよ」
「え? でも真凛ちゃん、臭いだって重要な手がかりには違いないよ?」
「そ、それはそうかもしれないけど……」
いつもと違って引き気味の真凛に代わって、ぼくがふたを開けたんだけど、
「ど、どうなの優樹?」
「死体とかじゃなかったよ。でも――何だろこれ?」
朽ちかけた木箱の中にむぞうさに詰められていたのは、たくさんの急須……いや、土瓶かな? 他にも小さめの容器とか徳利とか……どこも割れたりしてない焼き物だった。
あまり高級そうな感じはしないから、不要品を埋めたのかもしれないけど……何だってこんなに土瓶ばっかり……?
「……思い出したわ。これって多分、『汽車土瓶』っていうやつよ」
「汽車土瓶?」
「そう。『汽車茶瓶』とも言うんだけど……要するに、駅弁といっしょに売られてたお茶の入れ物よ」
「…………あ~……そう言えば聞いた事があるよ。昔、ペットボトルや缶入りのお茶がなかったころは、ビニールの容器にお茶を入れて売ってたって。もっと前には陶器の入れ物に入れて売ってたとか、親戚の人に聞いた事がある」
「そう、それよ。きっと」
旅行の時の記念品かぁ。確かに、釜飯弁当のお釜とか、何となく捨てられなくって取ってるよね。うちにもいくつかあるはずだし。あ……鑑定結果が出た……
「どうなの? 優樹」
「真凛ちゃんの言うとおりだったよ。他にも……これとかはつくだ煮が入っていた容器みたい。こっちは地酒のビン……って言うか、徳利だね。ご当地名産品のなごりってやつみたい」
「記念品かぁ……」
多分だけど、持ってた人が死んじゃったりして残されたものを、処分に困って埋められたんじゃないかな。普段使いするようなものでもないし、わざわざ割って捨てるのも気が引けるし――って感じで。
「よかったじゃない真凛ちゃん、急須の代わりがより取り見取りだよ」
「う~ん……」
……急須と土瓶の違いって、何だっけ? 横向きの取っ手を持つか、上の弦を持つかかな? ひょっとしたらお茶の淹れ方にも違いがあるのかもしれないけど、ティーパックならどっちでもいけそうだし、実用上は問題ないよね?
他に埋まってるものはないみたいだし、おいとましようかと思ってた時に、今度はぼくの方に通知があった……「金霊」と【鑑定】から。
「……真凛ちゃん、そこに転がってる石だけど……」
「石? これ?」
「うん……その、真凛ちゃんが蹴飛ばした石、ヒスイの原石だって……」
「…………え? ヒスイ……って、あのヒスイ? 宝石の?」
「うん。鑑定ではそうなってる」
「え……? だってこれ、サッカーボールくらいあるわよ?」
うん……サッカーボール大の石を、平気で蹴飛ばした真凛も大概だけどね。それだけじゃなくて、ここらにある五~六個の石は、どれもこれもヒスイの原石みたいなんだよね。宝石としての品質まではわからないけど、
《対象物の品質は以下の通りです。
【翡翠の原石】 品質:中 貢献度:小
マヨヒガの収蔵品として取り込みますか? はい/いいえ》
……収蔵品としての品質は「中」になってるから、悪くない収穫だと思うんだよね。
「……え? ……ちょっと待って優樹。……ヒスイって、この辺りで採れるもんなの?」
「う~ん……専門外だけど、多分違うと思う」
「え? ……だったら何で、こんなところにあるのよ?」
「多分だけど、糸魚川産の原石じゃないかな。あれって確か、発見されたのが昭和の十年代で、なのに天然記念物指定が三十年頃にまで遅れたから、指定されるまでにかなりの原石が持ち去られたんだって」
けど、ヒスイって確か、大昔には石斧に使われてたくらい硬いんだよね。加工しようにも素人の手には負えなくて、うっちゃってあったんじゃないかな。
「で……あまり大っぴらに言えるようなものじゃないから黙ってて……」
「うん、そのまま忘れ去られた……ってオチなのかも」
「……で……取り込むつもりなのね……?」
法的には色々とグレーっぽいけど、空き家の外に放って置かれてる時点で無主物扱いだろうし、糸魚川産って証明も難しいだろうし……何より、取り込んでも誰にもわからないよね♪
真凛は白い目で見てるけど、収蔵品の充実とマヨヒガの強化は、ぼくらの至上命題だもんね♪
「やだなぁ真凛ちゃん、リサイクルだよリサイクル」
うん、エコは時代の趨勢なんだよ。




