第三十章 ぼくらの繰越村再訪記 1.旧村跡地を探して
本当にお久しぶりのマヨヒガです。今回は七話構成となります。
~Side 優樹~
繰越峠の手前で状態異常になってたおじさんの人体実k……救護した翌日の日曜日、ぼくと真凜は改めて繰越の廃村に向かっていた。昨日のおじさん――甲斐さんだったっけ――には〝かなり遠い〟って言ったけど、ぼくと真凜のステータスなら走って行ける距離だしね。
昨日は予定外のトッパツジタイのせいで行けなかったけど、繰越の旧村落の位置を確認しておくのはケンアンジコウだったし……家族に出血熱を感染させるなんて事態を万が一にも避けるために、今日一日くらいは家族から離れておこう――って、真凜とも相談したしね。いい機会だから、繰越の村落跡地をタンサクしようって事になったんだ。
ただ、親には〝栗ひろい〟って言ってきたから、できたらクリの木も探しておきたいかな。昨日は見つからなかったし。
クヌギとかコナラのドングリは拾えたから、マヨヒガの近くに雑木林は作れるかもだけど……カブトとかクワガタだけじゃなくてスズメバチまでやって来る可能性もあるから、案山子さんとも相談した方が良いな。……真凜は反対しそうな気がするから、しばらくはないしょにしておかないと。キセイジジツを積み重ねた上でナシクズシに認めさせるのが、スマートな大人のやり方ってもんだよね、うん。
ま、それはともかくとして、当面の目的は旧村落だよね。真凜は古文書――「こもんじょ」って読むんだっけ――から大ざっぱな位置を推定してたけど……実際にわかるもんなのかなぁ。道を外れるとすっかり森になっちゃってるし。
「んー……位置としてはあの辺りだと思うんだけど……」
真凜が指さしてる辺りを見ると、小山の斜面が続いてるだけなんだけど……
「……真凜ちゃん、どこが被災の現場なのかわからない?」
「元の古文書には地図なんか付いてないのよ。文章中に簡単な位置の説明があるだけで。でも、土砂崩れで潰された村だっていうんなら、斜面の傍にあるはずだし……」
ぼくの【立地鑑定】でわかんないのか――って言われても……江戸時代以前の山崩れ跡地だなんて、さすがに識別できないよ。
「現場に行って、優樹の【鑑定】に頼るしかないのかしら……」
「それか、真凜ちゃんの探査魔法だよね」
前に〝地中の構造ならある程度わかる〟――って、言ってたよね?
だけど、それ以前に……
「けっこうな距離をやぶこぎしなくちゃダメみたいだよ?」
でなきゃ、完全に葉っぱが落ちた冬に行くかだけど……寒い中、こんなとこまでやって来るのは、あんまり気が進まないなぁ。
……LANDSATの画像か何かで調べられないかな? 土砂災害の危険度判定とか何かで、過去の災害跡地をピックアップしてるとか? 情報があるとすれば県の防災課かな? 棗さんに相談すれば、ひょっとしたら紹介してもらえるかもだけど……何をする気だって聞かれたらまずいかな。
……いや、前に地震による液状化と化砂坊主の話があったし、それから興味を持った――で押し通せるかな。けど、それで今後の活動が制限されても、変に興味を持たれてもめんどうだし……うん、もう少し考えた方が良いね。
とりあえず今日の下見はこれくらいにして、もう一つの目的地である廃村の方に行く事にしたんだけど……その途中で、
「……待って真凜ちゃん。これ、クリの木みたい」
「え? クリ?」
「うん。まだ小さくて実も着けてないけど……間違いないよ」
葉っぱの縁にあるトゲで区別できるんだよね。……「鋸歯」っていうんだっけ。
けど、この辺りにクリの苗木があるって事は、どこか近くに親木があるんだろうね。リスとかカケスが実を運ぶんだっけ?
うん……クリが生えてるから「クリこし」――だなんて、ほとんど当てずっぽうだったんだけど……案外当たってたのかもね。
「実は落ちてないの?」
真凜は、〝実の無いクリなんかクリじゃない〟って言いたそうだけど、
「まぁまぁ真凜ちゃん、今日は道具とか持って来てないし、これは掘るのが大変そうだけど、小さい実生苗とかがあったらマヨヒガに植えれば、割と早く育つかもしれないし」
「そうよね!」
うん。何だったら店で生のクリを買って来て、それを植えてみてもいいんだしね。
……あぁ、それだったら公園に植わってる木とか街路樹なんかにも、使えそうな木があるんじゃないかな。クワとかマテバシイとか、ねらい目だよね♪




