第二十九章 甲斐禎吉を追え 4.結ばれた縁(えにし)
~Side 甲斐禎吉~
「じゃあ、おじさんはコットウ屋さんなんですか?」
「まぁ、骨董屋いうたらそうやけど、わしの本業は競取り師なんや。あっちゃこっちゃのフリマやなんかで掘り出し物を見つけて、それを店持ちの同業者に仲介するんが本業やな」
「あぁ……安く買い叩いてボロもうけするんだ……」
「アホか。そら、上手い事一山当てたらデカいけど、そないな美味い話はそう転がってへんわい。当ても無くあっちゃこっちゃ歩き廻って、顎足代だけで足が出るわい」
何や知らんが、ちっこい嬢ちゃんがお祈りしてくれたかと思うと、嘘みたいに気分が好ぅなった。何ぞ新興宗教の関係者か何かかと思うたんやが、
〝えぇと……知り合いの人がやってたのをまねてみただけで……〟
〝脱水症状か何かじゃないですか? スポーツドリンクを飲んだら好くなったみたいだし〟
……そら、スポドリ貰ぅて気分が好ぅなったのは事実やけどな、具合そのもんが好ぅなったのはスポドリ貰う前の事やし、気分が悪かったんは朝からや。脱水症状の出る幕は無いんとちゃうか?
……まぁ、子供らにも何ぞ事情があるみたいやし、命の恩人に対して無用な詮索するほど、この甲斐禎吉は腐ってへんわぃ。
まぁ、そこらは大人の対応いうやつでスルーして、こっちの事情を説明したんや。
「でな、この辺りに廃村があるて聞いて、足を伸ばしてみたんやけどな」
何やSNSとかでも評判になっとるようやし、めぼしい物は残ってへんやろけどな。そんでも何ぞ残り物があるかもしれん。そう思ってやって来たわけや。ほしたら魂消た事に、子供らはその場所を知っとる言い出した。
「知ってるって言っても、大ざっぱな位置だけですけど……この先にある繰越峠の近くみたいです」
「けど、ここからだと結構ありますから、病み上がりの体で歩くのは……ちょっとおすすめできないって言うか……」
「……レンタカー借りて来るべきやったか? けどなぁ……道があんま良ぅないって聞いとったしなぁ……」
「大抵はバイクとかで行くみたいですよ? あとは自転車」
「ママチャリじゃなくて、マウンテンバイクってやつみたいです」
「二輪かぁ……そこまで気が回らんかったわなぁ……」
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結局、この日は子供らの言う事聞いて、温和しゅう引き揚げたんやが……宿へ戻った途端に保健所やら検疫所やらの者にとっ捕まって、何や色々な検査を受ける羽目になったわ。
何でもわしが取引した古物商の親爺、案の定ヤバい疫病に罹っとったらしい。わしもその疫病を感染されとるんやないか思うて、あちゃこちゃ捜し廻っとったらしいわ。
まぁ結局、何の疫病にも罹っとらんいう事になって、ご一同胸を撫で下ろしてはったけどな。
……そやけど、わしには解っとる。
出血熱とかいう死病を感染されとったのを、あの子らがどうにかしてくれたんや。
命を助けてもろたいう事を、性根の底に刻み込んでおかんとな。
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~Side 真凛~
「……真凛ちゃん、よく考えてみたら、ぼくらが感染してるかどうかは、ステータス画面を見ればよかったんじゃないかな?」
優樹に言われて気が付いたけど……そうよ、ステータス画面に状態異常の表示が出てるかどうか、それを確かめれば一発だったじゃないのよ。
「まぁ、感染から発症までのどのタイミングで、ステータス画面が状態異常を認識するかどうかがわからなかったわけだし、鵜呑みにするのは危険かもしれないけどね」」
「そ、そうよね……」
「慣れてないと気付かない事って、あるもんだね」
これにて今回の更新は終幕です。




