第二十六章 ぼくたちの報告会@マヨヒガ 2.検討会~野槌異聞~(その1)
繰り言になりますが、やっとここまで辿り着きました。本当に長かった……
~Side 優樹~
そんなこんなで「マヨヒガ」の中にコップとかを持ち込んで、案山子さんやお地蔵様その他のみんなにお供え……と言うか、おすそ分けした後で、今日の本題である「転移者とワーム」問題について検討する事にした。……案山子さんは恐縮してたけど、一応は家族みたいなもんだからね。
あ、結局テーブルは手に入らなかったから、そこは段ボールで間に合わせた。真凜は不本意そうな顔だったけど、今は無い物ねだりをするより大事な事があるわけだしね。
「わかってるわよ……それで優樹、ワームの事は何かわかったの?」
事前の打ち合わせで、ぼくがワーム関係の事を、真凜が繰越村関係の事を調べるように分担していたんだよね。これはぼくのスキルとかも考えた上での判断で――
「うん。まず最初に【素材鑑定】を使って、ワームの素材を分析してみたんだけどね」
「うんうん、それで?」
「魔石についてはよくわからなかった……って言うか、こっちの世界の知識とかけ離れ過ぎてて、較べようがなかったんだけど……その分ワームの歯については、少し面白い事がわかったよ」
ちょっと気を持たせるように言葉を切ったんだけど……真凜が焦れてきたみたいだから、そのまま話を続ける事にした。うん、【火炎弾】のイカク射撃とかされたら、シャレにならないしね。
「『マヨヒガ』の中でそんな事はしないわよ……それで、何がわかったのよ?」
……外だったら危なかったのかな……?
ま、それはそれとして――ワームの歯だけど……
「――『角質歯』?」
「うん。【素材鑑定】によると、〝成分的にヤツメウナギの角質歯に似ている〟――んだって」
「……ヤツメウナギ?」
「うん、ヤツメウナギ」
ちょっと意外だったよね。ワームっていうから、てっきりミミズとかムカデとか、そっち系の生き物だと思ってたし。
「えーと……つまり、ワームは水中のモンスター……って事でいいのかしら?」
「そうとは限らないよ? 歯の成分的にヤツメウナギに似てるってだけだし。水生だと決め付けない方が良いんじゃないかな」
「……だったら……何も判ってないって事じゃないのよ……」
「そうとは限らないよ? 問題なのはむしろ生活型……ライフスタイルじゃないかな?」
「ライフスタイル?」
「うん」
ヤツメウナギの角質歯って、ちょっと普通の歯とは違うんだよね。毛とか爪みたいに表皮が硬く角質化したもので、これで魚の身体に吸着して孔を開け、生き血を吸うんだよね。
「……つまり、ワームも……その……ヤツメウナギみたいに、生き血を吸うって事?」
「その可能性はあるんじゃないかって事。あと、もう一つあって」
「……もう一つ?」
やだなぁ真凜ってば、そんなに警戒しなくてもいいのにね。
「うん。仮にワームとヤツメウナギのプロポーションが似てるんなら、歯の大きさから全体の大きさを推定できるんじゃないかと思って」
「――わかったの!?」
おぉ……真凜ったら、一転して前のめりだね。
「インターネットの写真からの大ざっぱな推定だよ? 大体だけど、口の部分の直径が二十五センチから四十センチ弱、体長は七メートルから十メートル……それくらいはあるんじゃないかって計算になったけど」
「十メートル……」
うん。そんな怪物が現れたら、噂になっててもおかしくないよね?
「まぁ、これはあくまで、ヤツメウナギと似た体型って仮定した場合だけど。……実は、この仮定が正しいのかどうか、ちょっと問題もあるんだよね」
「問題?」
うん。ワームについて直接わかったのはそれくらいだけど……別のアプローチを試してみたら、ぼんやりと見えてきたものがあるんだよね。




