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ぼくたちのマヨヒガ  作者: 唖鳴蝉
第三部 五年生 二学期
103/118

第二十六章 ぼくたちの報告会@マヨヒガ 1.会場の用意

お久しぶりのマヨヒガです。ようやくここまで辿(たど)り着きました。今回は7話構成となります。

 ~Side 優樹~


 金曜日、()(りん)が通っている道場の師範が知り合いの結婚式に出席するとかで、急に()(りん)の予定が空いた。ちょうど好いからマヨヒガ内で、調べた事を話し合おうという事になったんだけど……


「家具はともかく、ティーセットぐらいないと落ち着かないわよ」

「ティーセットって……」

「似合わないって言うんなら、お茶道具でもいいわ。(きゅう)()と湯飲み。それとテーブル……って言うか、(ちゃ)()(だい)も欲しいところだけど……」

「ものによっては持ち込めなくもないと思うけど……ぼくのプレハブにもテーブルはないよ? 勉強机だけ。()(りん)ちゃん()は?」

「ないわ……どっかで買うしかないのかしら」

「ぼくらに手が出る値段だとしても、どこにどうやって運ぶつもり?」

「それよねぇ……」


 どこかで拾えたらいいんだけど、難しいんじゃないかな? ……〝望み薄〟――って言うんだっけ、こういう時。


 とは言え、小さな折りたたみ式の(ちゃ)()(だい)くらいなら、ぼくらでも運べるんじゃないか――って話になって……



・・・・・・・・



「大丈夫かなぁ……誰かに見られたら面倒くさい気がするけど」

「学区外なんだから大丈夫でしょ。見られたらその時よ」


 ぼくと()(りん)は今、学区外のホームセンターに来てる。学区外っていうのはねらったわけじゃなくて、もよりのホームセンターがたまたまそうだったってだけなんだけどね。下校中に寄るって話もあったけど、ランドセルしょった小学生がホムセンにいたら人目を引くんじゃないかって話になって、一旦うちへ帰った後に落ち合う事にした。人目を引かないって言うんなら、甕辺(みかのべ)……蓑掛山(みのかけやま)へ行く途中にあるホームセンターもあるんだけど、あそこはさすがに遠いからね。

 何でホームセンターに――って言われそうだけど、家具とか食器とか必要なものが全部そろっていそうなのって、ホームセンターくらいじゃないかと思うんだよね。百均はプラ製品が多そうだし。

 まぁ、親には別の口実を言ってあるんだけど。


「ぼく、連休のリンゴ狩りの準備って言って出て来たんだけど、()(りん)ちゃんは?」

「あたしも同じよ。もっとも、明日は運動会だから遅くならないようにって言われたけど」

「あ、それ、ぼくも言われた」


 どういうわけか信用ないんだよね、ぼく。()(りん)もそうだとは思わなかったけど。


「……(ゆう)()?」

「ん~ん? 何でもないよ?」

「そう……?」


 そうそう。今はぼくを疑うよりも、必要なものを探さなくっちゃね。



 ********



 ~Side 真凛~


 (ゆう)()と二人で手頃なテーブル――折りたたみ式で持ち運びやすいの――を探したんだけど、ちょうど好いのは置いてなかった。まぁ、このホームセンターはそこまで大きくないしね。やっぱりあれね、もっと大きなホームセンターに、改めて行く必要があるわよね。甕辺(みかのべ)とか。

 ま、テーブルはなかったけど、水差しとコップは買う事にした。両方ともガラス製なんだけど、(ゆう)()の【鑑定】によればマヨヒガに持ち込めそうだったから。

 ……まぁ……コップは予想外の出費になったけど……


「だって()(りん)ちゃん、ぼくたち二人だけで飲むつもり? 案山子(かかし)さんだっているのに?」

「……案山子(かかし)さんって……お茶、飲めるの?」


 普通はそんな事、思い付かないわよね。けど、(ゆう)()ったら――


「わかんないけど、最初から仲間はずれは良くないって思うんだ。お地蔵様とかにだって、お供えするじゃない」

「それは……待って(ゆう)()。だったら、お地蔵様とかの分も――って事?」

「当たり前じゃない」


 結局、人(?)数分のコップと水差しをそろえたら、手持ちの資金がきびしくなって……(きゅう)()と湯飲みはこの次ね。それでも、水出し麦茶のティーバッグは買えたんだけど……


「やっぱり袋のままだとダメみたい。個包装はOKみたいだけど……」

「大丈夫。こういう事もあろうかと、家からクッキーの空き缶を持って来たから」

(「そのセリフ……言っちゃうんだ……」)

「何?」

「ううん、何でもないよ?」


 (ゆう)()ってば、時々おかしな反応をするのよね。まぁ、大抵はくだらない事考えてるんだろうけど。


「あ……乾燥剤はOKなのね?」

「うん。なぜか」


 まぁ、それはいいんだけど……


「いくら何でも、案山子(かかし)さんに洗い物とか水仕事とか、させるわけにはいかないわよね?」


 二人で代わりばんこするしかないかと思ってたんだけど、


「大丈夫! マヨヒガの掃除とかお供えとかは、ぼくがやるから!」


 珍しく(ゆう)()がシュショーな事を言い出したんだけど……怪しいわね。あたしの目を盗んで、ヘビとかカエルとか持ち込むつもりじゃないでしょうね?

 そう問いつめたら、(ゆう)()が目を泳がせた。……少しはマズいって自覚があるみたいね。


「い……いや……マヨヒガ(あそこ)って、今、何もないし……ペットとか、日々の生活のうるおいは必要だと思って……」

「ヘビやカエルのどこがうるおいなのよ!? 却下!」


 第一、生き物を持ち込めるかどうかもわかってないじゃないの!


「ぼくのマヨヒガ(わがや)なのに……」

「違うわ! あたしたち二人(・・・・・・・)マヨヒガ(ひみつきち)よ!」


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