第二十五章 初めてのマヨヒガ 6.マヨヒガとQOL(その1)
~Side 真凜~
「……家具っていうのはほとんどないのね」
「うん。なぜか収蔵品を置く台みたいなのはあるけど、それくらいだね」
優樹はしれっとしてるけど……いくら何でも殺風景過ぎでしょ。卓袱台どころか座布団も……うぅん、肝心の囲炉裏に鍋すらかかってないじゃないのよ。
……座布団が普及したのって、明治以降だったかしら? うぅん、だとしても、民家にあっておかしいものじゃないはずよね。囲炉裏の鍋は言わずもがな。
「でも真凜ちゃん、マヨヒガには何でも持ち込めるってわけじゃないよ? これ、前にも言ったと思うけど」
「おぼえてるわよ。プラスチックはダメだったのよね?」
「うん。まぁ、程度の問題みたいだけど」
……程度?
「どういう事よ?」
「あれ? 真凜ちゃんは気付かなかった? ぼくらの服に付いてるボタンって、プラスチックだよね? 着てる服だって化繊だし」
あ……
「そもそも、ここへ入った時に太陽の高さを測った分度器だって、プラスチック製だよね? 靴だってゴム底だし」
「……割とルーズなのかしら?」
「そこは融通が利くって言ってあげようよ」
……少しくらいならお目こぼししてもらえるみたいだけど、あからさまなプラスチック製品はダメって事なのかしら?
「ま、そんな感じみたいだよ」
う~ん……だとしても、
「やっぱり、机と座布団くらいは欲しいわよね」
「座布団は難しいんじゃないかな。あの中身ってスポンジとかウレタンだよね?」
「あ……そっか。……綿かなにかじゃないとダメかしらね、中身」
「今時そういうのがあるかどうか、判らないけどね」
……見つからなかったら、最悪手作りしかないかしら。そこまで難しくはないと思うけど……優樹の方が上手かったりしたら、それはそれでムカつくわね。
けど……そうすると家具だけじゃなくて、収蔵品を集めるのも難しくなるって事よね? マヨヒガの強化にもつながるって言ってたし、できるだけ集めておきたいところなんだけど。
「どっちかって言うと、収蔵品の方が楽じゃないかな。焼き物とか木製品とか、骨とう品っぽいのを探せばいいんだし。補修スキルが生えたから、壊れたのを拾って直す事もできると思うし、気長に探せばいいんじゃないかな」
優樹はノンビリ構えてるみたいだけど……それくらいの方が良いのかしら? ……けど、それはそれとして、
「いくつか気になる事があるのよね」
「気になる事?」
「えぇ。まず第一に……化石とかはどこにあるの? ワームの魔石とか歯とかもあったはずよね?」
収蔵品とも普通の素材とも違う、マヨヒガの強化アイテムみたいな扱いだって言ってたけど、一体どこにあるっていうのよ? 御札は逆柱……じゃなくて、元・逆柱に貼ってあったけど。
「あ、それ? こっちだよ」
そう言って優樹が案内したのは三畳の和室。何もないって思ってたんだけど……押入の戸を開けると、中に三方――三宝とも書くけど――が置いてあって、その上に化石や魔石なんかが載っていた。
……あぁ、そうか。「納戸神」ってやつね。この場合の「納戸」は寝室の事で、そこの押し入れに年神とか歳徳神を祀る事がある――って、何かで読んだっけ。
「……神様扱いって事なの?」
「じゃなくて、縁起物みたいな感じかな」
「あぁ、そういうポジションなんだ」
気になってた事の一つが片付いたわね。じゃあ、一番気になってる事を訊かせてもらうわよ。
「お風呂はどこにあるのよ?」




