プロローグ 始まりの願望
世界は一つなんかではなかった。
運命の悪戯とでも言い表すほかない偶然の惨事が発見に繋がり、しかも首謀者と被害者との間には与り知らぬ因果があった。たったひとつの、彼の先天的能力がために。
しかしそれでも足りやしない。
首謀者の語る謎めいた言葉の意味。異世界との関連性。なぜ、世界の侵略が「安寧」の為と宣ったのか。何も解ってなどいないのである。
ところで、世界にはあの法則があったはずだ。
幸と不幸のバランスは保たれる。
しからば、良いことの分だけ悪いことは降り注ぐ。
たった今もどこかの場所で、運命の悪戯に選別されてしまった囚われ人がいた。
彼女_____否、彼女たちは噛み合った歯車のように、ひとつの動きに呼応して巻き込まれた無垢な存在。どこに安息があって、何を為すべきなのかも隠匿された少女に過ぎない。
「彼らを、訪ねれば、私どもの存続に光明が差すのですね」
その是非は測りかねるが、過去からの経験則がこれを是とする。ただ出来るのは不甲斐なくも頼るのみで。
どうかテストで満点取れますようにと、或いは、どうか宝くじが当たりますようにと祈るように、彼女は縋った。
唯々諾々と生きるのは目的が無いからじゃない。
彼女たちは知っている。昨日を過ぎて、今日へ来た。
だから、明日の為に強くあらねばと。
__________明日を生きる、平和な今日を創りたい。
これは、そんな純粋な想いから始まった物語。度重なる波乱を抜け出した果てに残るのは、慚愧か充足か。
先天的な力を備えた彼もまた、未曾有の策略に巻き込まれるのであろうか。
兎にも角にも、言えることがあるとすれば、
世界は刺激を求め、今日も施策を巡らしている。
皆さまお疲れ様です、ようやく第二章です。
第一章こそ展開がやや早めでしたが、ここからはじっくりと進めていく所存でございますので、よろしくお願いします。




