第一章05 よくある試練とか言うやつ
ラグラスロ曰く、この世界で何をするにしろ、それを成し遂げるだけの力をまずは確かめないといけないらしい。
今までもグランを越える強さを誇る人がいたらしいが、その彼らですらこの世界から帰還することができなかったと、この事実が龍の言葉を強く説明付けていると言える。
故に、グラナードという男がどれだけやれるのかを試さねばならぬと。
グランの失踪の翌日、黒龍ラグラスロは言った。
「グラナード・スマクラフティー、汝に試練を課す」
「ああ、どんとこい!」
そういって出された試練内容は以下二項
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・ある特定の生物「ヘキサ・アナンタ」を弑する
・ある特定の生物「ヘキサ・アナンタ」を生け捕りにする
*ただし、対象の生物はこの世界に一匹しか存在できない
そしてここでの「存在」は「生きている」ことを意味する
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
_______待て待て待て待て
「どんとこい!」と言ったそばだが、絶句した。
二度三度と、己の聞き間違いがないことを確認するため何度も反芻して、ようやく思考を再開する。
(おいおい、この試練の内容、明らかにおかしい点があるんじゃないのか? この世界に一匹しかいない奴を殺して、且つ生け捕りにしてこいってことだろ……??)
「なあ、おい、これって本当に達成できるものなのかよ」
おそるおそる尋ねるグランにラグラスロは「何を言ってるんだ」というような雰囲気で (龍なので表情の変化はわからないが) 即答した。
「なに、達成できぬ試練に何の意味があろうか。試練とは、試す者の力を見るためにあるのだ。そして、どのような力が問われているのかを考えるのもまた力。そう、汝が問われているのは力だ」
普通に考えれば、これはクリア不可だ。
でも、ラグラスロはクリア可能だと言った。つまり一般的な思考では到底到達できない領域に、何かそれを解決する方法があると、そういうことに他ならない。
失踪事件と言い試練と言い、なんでも世界で起きることには理解を超えた不可思議な力が関わってくるきらいがある。
「つまり、あれだな? 俺の本当の試練はヘキサ・アナンタって奴を倒すことだが、その解決法を閃くこともまた試練の一部ってことだ」
「その通り」
それを聞きグランは「わかったよ」と中途半端にため息をつきながら返事をする。
「して、グラナード。一つ忠告しておくが、目的の生物は蛇だ。見れば一目でわかるだろうが、恐らくその蛇の所に行きつく前に幾度か他の生物が襲いかかってくるだろう。その時は、全て討伐してしまっていい。無駄な命は刈り取りたくないだとかそんなことは思わんでいい」
ぎょっとした。
命を刈り取ることを躊躇う必要がないという、無慈悲にも程があることを平然といってのける龍に。
いや、確かに躊躇う必要があるかと言われれば無いのだ。
この世界の生物は魔物、つまり無慈悲に襲いかかってくるのだから討伐することは悪いことではない。
というか、グランも普通に倒してしまうつもりでいた。
だからこそ、気になってしまう。
「な、何故わざわざそんなことを言及するんだよ。慈悲をかけようなんて元々思ってないぞ?」
「汝は、なぜこの世界の生物がすべて魔物、文字通りの『魔の物』という悪に堕したのかわかるか?」
全く予想もしなかった答えが返って来た。
「わ、わからん」
「この世界は元々、これほどに暗く醜い世界では無かった。しかしある日を境に、否、我々がこの世界に来てから、豊かな世界はこの様に一変したのだ」
「それはつまり、失踪が起きてからのことだよな。となると、ここをこんなにも邪悪に染め上げた犯人と失踪事件の犯人は……」
「同じ、だろうな。そして、未だこの世界に連れ去られ人間がいるということは、世界に悪を埋め込んだ輩は今も生きているということに他ならん」
異世界などという、あるかも分からないも世界に干渉して人を連れ去るだけでなく、世界をも暗澹に包み込んでしまうその力量。
名も姿も分からないが、何もかもが圧倒的だ。
「いや、待てよ。その話と魔物を遠慮なく倒すこととの関連性が分からんぞ?」
唐突に話が変わったので忘れかけていたが、そう、もともとグランはラグラスロの「討伐命令」の意図を聞こうとしていたのだ。
なのに何故か「昔の世界」の話に移り変わっていた。
「今まで平穏に過ごして来た動物達が弱肉強食と食物網の世界で生き絶え、命を落とす。そこで、この世界の支配者となった存在はその空の魂に悪を埋め込んだ。ちょうど、世界にしてみせたのと同じ様にな」
「ということは、まさか、魔物って元々は普通の動物達だったってのか?!」
「いかにも。今では生命は意図的に創られるようになってしまった。全て、『悪』を孕んでな」
創る、などというのはそう簡単にできることじゃない。
それどころか、人工的に意図的に生命を創り出し、それを邪として世界を跋扈させるだなんてことは道理に反する。
「そうか……言わんとしていることは多分、わかった。既に魔物ですら人形のようなものに成り代わっていると。だから俺らはそいつらに優しさや憐れみを与える意味がないって、そう言うことだな?」
「うむ、それが分かれば何も訂正点は無い」
ラグラスロのその言葉を最後にひと通りの会話は終了となった。試練を課された今、これからやるべきは一つだ。
グランは今の話を内容をしっかりインプットし終えると、
「よしっ!んじゃあ、そろそろヘキサ・アナンタとかいう蛇のところに行くか!」
相変わらず無防備な布の服のまま、という訳にもいかず、流石のグランも拠点に置いてあった小手と胸当てだけ装着して出発するのであった。
とは言え、そんな装備ではあまり意味がないように感じる、などと野暮なことは言わないでおこう。
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『課題の対象は今は南の森にいるはずだ。彼奴は生息地を変えない為、ゆっくり準備していても問題はない』というラグラスロの言葉を受け、現在グランは森の中を歩いている。
もうずっと整備されていないからか、かつては整備された道だった跡があるのにもうボロボロになっている。
しかし一応道としての機能は残っているのでそこまで過酷ではなく一安心ではあるが、道の両側にはちょうどグランの身長くらいの高さの段差があるため上から襲われてもおかしくはない。
更に鬱蒼としげった森は、ただでさえ世界が暗いのに木々の影が何重にも重なってより暗くなっている。グランは炎属性の魔法も使えた為視界確保ができているが、だからこそ今までの失踪者はどうしていたのだろうかと不思議に思う。
(しかし、もう森に入って大分時間が経ったように思うんだが、敵に出くわさないな。敵が少ないのはそれで嬉しいが、全くいないってのは拍子抜けだよな……)
ただでさえ静かな森だ。
堂々と一人で歩いているのだから、その足音やらを目印に襲いかかってくるものだと予想していた。
パキッ!と。
足下に視線を送ると、一本の枝が折れていた。
枝を踏むことくらいよくあることだ。
しかし、今は違う。足音よりも大きな音、それが闇の中に溶け込むように響いた。
_______遂に、満を辞して時はやってきたのだ。
グランの背に、ほんの一瞬敵意が向けられた。
だがそこに、不可解な点が1つあった。
( なぜ、敵意がほんの刹那しか感じられないんだ? 敵意や殺意なんてのは普通、一度でも出したら中々止められない筈なんだが…… )
ゆっくり、注意深く振り返る。
するとそこにいたのは、一匹の豹のような獣。鋭い爪と牙を持ち、髭はとても長く、そして脚や背には強靭な筋肉がはっきりと具現している。
グルルルル……と喉から威嚇音を出し激しく睨みつける。なのに、威嚇しているにもかかわらず殺意は感じられず。
「まさかこいつ、自由に殺気を出し入れできるってのか!」
この世界の生物はこんなことまでできてしまうのか、などと感心する。
初めての相手ということもあり、魔獣の力量はまだ分からない。余裕をこいて足をすくわれたなんてことが無いよう注意を払う。
が、しかし。
「ぐぅっ……ぁ?」
背中に走る一線の痛み。鋭い何かで斬られたように、ドクドクと血が滲んでいく。
グランの後ろには、いや、彼の周囲はいつの間にか群れの獣が集合していた。全部で8匹、何重にも重なった威嚇音に反してやはり敵意の感情は感じられない。
「なるほど、な。集団戦法、つまり1人で歩いている俺は格好の餌か」
先手を喰らった割に、グランの顔には余裕が残っている。
「でも、囲まれることに関してはつい最近体験したばかりなんでね、その時と同じ容量でやりゃいいって訳よ!」
言いながら構えると、それを抵抗の意思と汲んだ魔獣達も爪を伸ばし毛を更に逆立て始める。
そして、魔獣の内の一匹が再びグランの死角から牙を剥き出しにして飛びかかったのを合図に、戦いは始まった。
ガァン!と死角から襲いかかる牙を間一髪、腕に装着した小手で防ぐと、次の攻撃がくるまでの数瞬の間に反撃の体制を整えて、
「かかって来い!『オリヘプタ』ッ!! 」
誦んずると、空中に突然、蒼い光の球体が7つ生成される。山賊との戦いでも使用された魔法だ。
その7つ球体はそれぞれ7匹の敵のもとで激しく炸裂し、暗黒に包まれた森を輝かせた。
「敵は8匹。ひとつ余りがいやがる筈だ……ぜ!」
土煙の中から突然飛び出してきた1匹を超人的な反応速度を利用し拳で叩き落とし、間髪空けずに腹部を思いっきり蹴り飛ばす。
しかし、魔獣が風を切るように飛んでいき視界が晴れると、そこには何の恐れも見せずにグランを覆い囲む敵の姿があった。
「チッ……流石にそう簡単にくたばりやしねぇってか!」
こうなることは予想の範囲内だ。
というより、先程グランが蹴り飛ばしたときに筋肉による獣の硬さと重さを身体で感じていたため、既に予想は確信に変わっていた。
だから敵がまだ元気に動いていることは驚きではない。
むしろ、敵の強靭な筋肉と洗練された群れの統率、そして獲物を必ず得るという確固たる意志に、
( いいぜいいぜ、面白ぇ! 戦い甲斐のある敵はほんっとうに久しぶりだ!)
「俺を獲れるものなら獲ってみろってんだ!」
肉体VS肉体のぶつかり合い。物理的な攻撃ではさほど意味がないことは明白だが、四方八方から襲いくる複数体を相手にしているとどうも魔法を放つ隙がない。
だから、出来るだけ遠くへ吹き飛ばして次の攻撃までの時間を稼がなければいけないのだ。
しかし、流石に8体を同時に相手するとなると魔法を放つタイミングはそうそうやってこない。なんとか胸当てや小手で獣の猛威を弾けているとはいえ、弾ききれずに少しずつ傷も増えている。
(なにか無いか、時間を稼ぐ方法がどこかに…… )
辺りを見回しながら己が現在置かれている状況を改めて振り返る。
グランは魔法を使って以降、常に周囲を囲まれた状態での攻防を続けているため、その位置からほとんど動いていない。
それだ。動かずに抵抗することしかできない獲物など格好の的。加えて、獲物が動かないということは、わざわざ追いかけ回す必要がないということ。
そして、ほんの短い間の熟考でグランが導いた結論は、
「だらぁッ! 囲まれてるのがいけないんだろ!? なら、真っ向勝負になっちまえば隙が生まれる!」
感覚を研ぎ澄まし、複雑に入り乱れる猛攻の中をくぐり抜ける。後は、そのまま一本道を全力で駆けるだけ。
しかし、それで問題点が解決されたことにはならない。
「うおおおおおぉ! やっぱ人間が獣に速さで勝てる訳ねぇよなぁ〜!」
身震いするほど恐ろしい形相でグランを追いかけ回してくる魔獣達。
「なら、これでどうだコルァ!」
走りながら手のひらを横に向ける。
それを見た8匹は目を鋭くしてその伸ばされた腕を凝視し、無防備に放り出された餌を引きちぎらんと狙いを定める。
「残念ながら、腕はやらねぇぞっと!『オリヘプタ』!」
手のひらから魔法を放つ。それは魔獣に向かってではなく、一本道を挟んでいる段差だ。
グランの身長程の高さがある段差に魔法が直撃すると、その衝撃で轟音を発しながら道に土片が発散する。
しかしそれで魔獣を食い止められるとはもともと思ってはいない。
「土煙で目眩しさえすればなんとか時間は稼げるだろ!」
そんな叫び声が不明瞭な視界の中で響くと、それを最後にグランの声、姿、そして足音さえも聞こえなくなる。
とは言っても、流石は統率のとれた魔物だ。
すぐに土煙の外へ脱出し円形の陣をとることで全方位からの攻撃に備えようとする。そして、その内の一匹が嘶いた。
目の前にあるのは段差だ。
そして、目的の獲物はその上に堂々と立っていた。彼は笑みを浮かべていたが、魔獣に "笑み" など分からない。すなわち、目の前のグランが意味することも。
「残念ながら、お前らはこれで負けだぜ」
言いながら、グランは腕を下に降ろして構えをとる。同時に、対峙する群れも即座に陣形を変えて今にも飛びかかりそうな雰囲気だ。
そして、
「喰らいやがれってんだ!『オリベルグ』!」
グランは飛びかかるでもなく、構えた腕を敵に向けるでもなく、一度下に向けた腕を上に挙げた。
ゴッ!と、激しい地震のような揺れが一回だけ訪れ、
ガッ!と、揺れに応えるように地面に巨大な罅が入る。そのまま亀裂は雷に打たれたかの如くやや複雑に広がり、その中に数匹、魔獣が落ちていくのが見えた。
「こんなんで終わりだとは思わないことだな?」
次第に落ちていった個体が身軽に飛び跳ねて地上まで復帰してくる。何事もなかったかのように復帰した彼らは「これの何が強いんだ」とでも言いたそうだが、実際、この地割れに大した殺傷能力などない。
「お前ら、この『オリベルグ』の力はここからだぜ」
言うと同時、その地割れの中から、大地が隆起するような形で無数の極太針が獣たちに突き刺さった。
それは紛うことなき殺意の槍。地面という無限に広がるフィールドからランダムに放出されるそれは、攻撃範囲などに限りがあると言えども強力だ。
どんなに統率がとれていても、どれだけ反応速度が速くとも、いつ・どこから隆起してくるのかわからない以上不可避となる。
獣たちの胴体を無慈悲に貫いた岩石を血が滴る。血肉独特の、鼻を突き刺す臭いが主張を増していく。結構グロい。
槍の猛威が止むと、運良く死を免れた1匹が息を切らしながらグランの前に躍り出る。まだ狩りを諦めていないと、そんな表情だ。
「お前やるじゃねぇか。だがすまない、俺は生きていくために倒さねばならねぇ」
『無駄な命は刈り取りたくないだとかそんなことは思わんでいい』というラグラスロの言葉を再び思い出し、残った個体を掃討せんと段差から降りる。
その行動を「殺害予告」と受け取ったか、名も知らぬ1匹の魔物は高らかに吠えその鋭爪をふりかざす。
「残念だが、もう俺の勝ちは決まってるぜ。なぜならお前はもう、群れじゃないからだ。群れでの行動に特化しすぎているが故に、独りでは何もできやしない」
言いながらグランは全ての攻撃を軽々と回避し、
「ここでひとつ、俺の技の練習に付き合ってくれよ。なんて言っても、一方的な実験でしかないけどな」
そして、「『オリヘプタ』」と誦んずる。
今までとは異なり、7つの光球はひとつのエネルギー体へと融合し、それは、青白く輝く破壊光線となり直線を描く。いわゆるレーザービームだ。
硬い筋肉の壁を軽々と貫通し、血と肉をぶちまけ、一瞬にして生命は肉塊へと変貌した。
「……なるほど、実験は成功。これが『オリヘプタ』の新たな使い道って感じか」
飛び散った肉片や大地に串刺しにされる獣たちの死骸をみると、一見無慈悲とも思える殺戮ぶりだが、それは違う。
正義だとか悪だとかそんなことは関係なく、ただ単に、グランは悪感情に支配されてしまった人形のような生命を救いたいからやっている。
「ありがとよ」
ふっ、とグランは微笑んで、
「お前らのおかげで、俺はまた一つ成長できた。俺の成長の為の糧としたことは、無駄にはしない」
感謝と共にグランは再び森の奥へと歩を進めた。
と、そんないい感じの雰囲気が流れていたかもしれないそんな時に、グランは思い出した。
「いでッ?! そ、そうだった……俺って今引っ掻かれまくって傷だらけなんだったわ」
戦いの最中は気にしていなかったが、冷静になってくると徐々に痛みが戻ってきた。
特に痛いのは最初に不意打ちを喰らったときの傷だ。随分と鋭い爪だったので意外と傷は深いらしく、未だ出血は続いていた。
「あっぶね〜、今気づいてたよかったぜ。『スラヴ』!」
グランは回復魔法を自身に使用する。
ただひとつ注意点を挙げるとすれば、『スラヴ』という魔法は自然治癒力をめちゃくちゃ高めるリジェネの類であり、よって傷がすぐに塞がる訳ではない。
「ちくしょう、こんな大変な目に遭うと分かってればもっと優秀な回復魔法でも覚えとくべきだったな。ま、目的の蛇さんに会うまでには傷も塞がってるだろ」
言うと、引っ掻き傷だらけとは思えないほど元気に歩き出す。
魔法を覚えるのも一苦労で、成長すると勝手に使えるようになることもあるが、基本的には誰かに教えてもらい、後は努力でなんとかするというのが主流だ。
だから、グランがより優れた回復魔法を覚えるのはまだまだ先のことになるだろう。
それからもグランは何匹か敵と遭遇した。
例えば猿型の魔物。キリキリ不快な音を出して、鋭利な爪と尾の刃で狩りをしていることろを目撃するも、一部始終を確認した限りアレは普通に危険すぎる。やむなしとバレないよう通り抜けた。
他にも翼の生えた小さな獣だったり、定番のスライム (ドロドロ) もいたりした。何匹か戦闘避けられず交戦したが難なく切り抜けられた。
と、そんなこんなでグランは順調に森の奥へと進み、
「ん、なんだか雰囲気が変わってきたか?」
真っ暗な森の中に、微小な淡い光が覗き込んでいることに気付いた。森の奥地から光は溢れている。
半ば早歩きでその光の差す方へ向かうと、雰囲気の正体が明らかになった。
「こんな暗黒の世界にも、こんな神秘的な場所が……」
目の前に広がるのは、広大な湖だった。
神聖さすら感じさせる透明なマリンブルーの光が水面に反射して目を奪われそうになってしまう。
湖の水自体が輝きをもっているのだ。どんなに世界を闇に堕としても、その水が元来より持つ光は消せなかった。
「だが、なんといっても捨てきれないのが、あれだよな」
そんな美しい秘境だが、その中に何とも無視のできない問題点が浮上している。
せっかく見つけた秘境の神秘性を損なうような、目の前の景色と対極に位置するようなそんな問題がそこにはあった。
湖の中心にて、六頭大蛇がとぐろを巻いてこちらを見ていた。蛇といえばそう、試練にあったヘキサ・アナンタだ。