第一章閑話 ミステルーシャ・アプスの回想
みなさん、はじめまして。
私の名前はミステルーシャ・アプスです。
世界三大派閥が一つアプスの三女として生まれ、お姉さま達とは違い攻撃を得意とせず補助魔法を主に使います。その代わり周囲の状況をよく観察してサポートに徹底できるよう努めていますし、体力にも自信はあります。
私たちアプスの人間は世界から注目を浴びています。どうやら書物によると私たちの血筋が有名になったのは過去約5世紀前のことらしいのです。
ある日、私たちの祖先のお方がある魔法をお作りになった際、それに『ヤクト』と言う、対象の何かを武器として定義する? みたいな少し分かりにくい魔法を使用してみたらしいのですが、それに驚きの変化が起きたらしいんです。
それが大衆に認められ、子孫達も多くの功績を残していったことからいつしか世界三大派閥のひとつとさえ呼ばれるほど大きくなったんだとか。
だからアプスの家紋もその起源に準えたものになっているんですよ。
ああ、ちなみに世界三大派閥の中に属するアプス家ですが、残り2つはカタフ家とラミティ家です。
三家合わせてよく『ACR』などと表現されていたりするのをよく見ます。
それぞれ何が異なるのかと言うと、まず私たちは液体系魔法が主に強いと言われています。
液体系魔法って言うのは、その名の通りなのですが魔力が液体のような特徴を持っていて、主に攻撃魔法がその例ですね。
次にカタフ家は、武具を利用した魔法開発に長けているとか何とか。なんでも、カタフの方々の開発した武具の中には神器と揶揄される程のものもあるらしいです。
最後にラミティ家ですね。ここは何かに特化している、という訳ではなくオールマイティって感じでしょうか。おそらく一番日常生活に貢献しているのがラミティ家ですね。
争いや災いなどのほぼ無い世界ですが、街を離れればモンスターなどもいて、危険地域もあったりします。なので、日常にはあまり役立たなくても私たちの魔法の発展や研究などはとても有意義なものなのです。
………とまあ、家のお話ついてはここらで切り上げて、ここからはまた別の話をしましょうか。
私は今日特に家ですべきこともなかったので部屋でくつろいで過ごしていました。いつもならお出かけでもして気分転換しているんですが、たまには家で休むのもいいかなと思ったんです。
でも、
突然謎の闇が私を囲み始めて、声を出しても音が闇に遮られていたからか誰も私の助けに気づかないまま、気付いたらこの暗い世界にやってきました。
まず初め、ラグラスロさんに出会ってこの世界が何なのか、そして私が失踪事件に巻き込まれたことなどの情報を教えてくれました。
もちろん、そんなのいきなり言われても納得できません。
『俺はグラナード・スマクラフティーだ』
拠点に到着してその声を聞いたとき、心中を渦巻いていた心配事なんか全て吹き飛んで。ひとりだったらどうしようなんて考えていたのが馬鹿みたいに思えて。
でも!!!
あの人、出会って初っ端から私の……む、胸を鷲掴みにしてきたんです!
転びかけた私を支えようとして本当に偶然そうなってしまったのは分かります。でも、もたれかかる私を受け止めてから随分と長い間そのままで……
私が悪いのでこれ以上追求はできませんけども!
これがあったから、と言うのは少し癪なんですけど、気分もだんだん入れ替わってきて、すぐに自分の置かれた状況を受け入れることはできました。
あと、グランさんとも仲良くしたいな…….と。
いや!別に!そういう「気になる」とかでは無くって!
ただ、これから一緒に暮らす相手として交流は必要ですよね。……ん、一緒に暮らす?
んんんんんんんんんんんん?!?!?!
だ、大丈夫ですよね何も起こりませんよね私の貞操は守られますよね! うわわわわ、一旦意識したら急に焦りが。
やばい私突然キャラが豹変しちゃってる、、怖い。
やっぱり、私はまだ自分の置かれた状況を受け入れられないらしいです。
気を取り直して、、
その後、失踪当日からいきなり試練が始まりました。
その内容はこんな感じ、
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・ある特定の生物「ファヴァール」を弑する。
・ある特定の道具「奇鬼忌琴」を入手する。
*今回、特に注意事項は無い。
ただし、挑戦者が複数であることを有効に利用せよ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この試練を達成するため、私たちはグランさんとふたりで西北西にあるというエルカジャ遺跡にいくことになるのですが、、
グランさんには冗談ですよって言いましたけど、「カジャ」という単語は本当に古い言葉で『殲滅』『繁栄』の意味があるんですよね。あれ、そのどっちかだけだったかな。ちょっと自信はありませんが。
だからといってエルカジャ遺跡の名前にその『殲滅』『繁栄』が関係あるとは限りませんよ?
でも、遺跡の名前が千年も前に付けられたものなら可能性はあります。……なんで世界を跨いで言葉が共通なのかは分かりませんが。
とまあ、それは一旦置いといて。
私たちは道中、道を少し外れたところにある家跡で野宿することになりました。
その前にもいろんな話をしながら歩いてて楽しかったので、寝る前にもう少しお話でもしたいな〜なんて思ってたりして。いやだから、こんな出会ったばかりでそういう感情に結びつかないですよ?
私は料理に自信があったのでグランが取ってきたお肉をつかってハンバーグを作りました。翼は流石に料理に使い所がなかったのですが、なかなかに上質なお肉だったかと思います。
それより私がもっと驚いたのは、グランさんがお肉の扱いに長けていて、オシャレなことにお肉の燻製までさせてて!
なんだか私の料理の腕が普通みたいに感じてきちゃいましたよ!
でも、いつか元の世界に戻った時、こうやって美味しいものとか食べたいものを皆で作ってみたら楽しいのかも、とか考えてみたり。
あとは寝る前に少しお話でもしようかと、
なのに、
巨大な獣。黒くて剛腕で、見るもの全てを恐怖に引き込むような恐ろしい目。「化け物」と形容する以外に言い表せない巨獣が目の前に立ち塞がりました。
『ど、どうしますか?』
少し怯みながら私が尋ねると、
『とりあえず、撃退するぞ!』
グランさんはそう強く答えてくれました。
だから、その強さに引っ張られて私のやる気も湧き出てきて。怖い、絶対強い。けど、私は戦える!って。
私の楽しみを奪ったその恨み、叩き込んでやります!
……だから、別にグランさんと話したくて仕方ないとかそこまでじゃないですからね!思い込みやめてくださいね!
ちょっと今回は趣向を変えてみました。
地の文が登場人物の感情なことが無いので変な感じかもしれません。というか私が一番困ってますし、それ故に文字数もめっちゃ少ないですが。
次回からはまた元通りなので、よろしくです!